八代亜紀が13日に、Blue Note TokyoでJAZZアルバム『夜のつづき』(10月11日発売)発売記念ライブ『An Evening with AKI YASHIRO』を開催した。『夜のつづき』は、2012年に八代がリリースした、小西康陽プロデュースによるアルバム『夜のアルバム』に続くJAZZアルバム第2弾。同作の収録曲を中心に「雨の慕情」や「舟唄」など八代の代表曲もジャズアレンジで披露。デビューから46年。12歳の頃に父から買ってもらったジャズレコードを機に「一流のクラブシンガーになろうと思いました」と語った、彼女の原点を垣間見られた貴重な公演となった。【取材=松尾模糊】

一流のクラブシンガー

八代亜紀

 会場が暗転し、青い照明がステージを照らす。ウッドベースとビブラフォン、ドラムス、ギターそしてサックスがステージ上で都会の夜にマッチするムーディーな演奏をおこなう中、スポットライトを浴びた八代が会場のテーブル席を抜けながら登場。拍手喝采が彼女を迎える中ステージに上がる。一礼をした後、普段の演歌で聴くあの声とは一味違ったハスキーな声で英詞の「ジャニー・ギター」を歌う。

 スパンコールの付いたグリーンのドレス姿の彼女は、煌びやかに会場の雰囲気を一変させた。ファンキーなベースラインで始まる「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」では「イエイ!」とノリノリな様子で、体を揺らしながら歌う姿が印象的だった。

 2曲を歌い終え、「5年前にJAZZでこの舞台に立たせて頂きまして。2年前にはBLUESでやりました。そして今回またJAZZでございます。とにかくジャンル関係なく、楽しみたいと思うのでどんどん亜紀ちゃんコールもよろしくお願いします!」と呼びかけ、会場からも「亜紀ちゃーん」という呼び声が飛び交った。

 小西康陽がプロデュースを務めた『夜のつづき』。同作に収録されている「赤と青のブルース」のレコーディングでは小西に「亜紀ちゃん、17歳で歌って!」と注文を受けたことを明かし、同曲を披露。これまでのハスキーボイスではなく、高めの幼さをも感じさせる歌声で歌い上げ、その歌声の幅広さを見せた。

 ステージ中盤では楽器隊がそれぞれソロ回しを見せるインスト曲を披露。その間に八代が青いドレスに着替えて再登場。八代の代表曲「雨の慕情」をジャズアレンジで届け、観客からも歓声が上がった。

今が一番幸せ

八代亜紀

 MCで八代は「私は12歳の頃に父がジャズのLP(レコード)を買って来てくれて。それからボサノヴァ、スウィング、ワルツといったリズムを格好良いなと思って、一流のクラブシンガーになろうと思いました」と歌手への道を志したきっかけを明かした。

 トランペットの哀愁漂う前奏から始まる「黒い花びら」では<もう恋なんかしたくない>と切ない想いを、心の中に絡みつくような味わい深い歌声で届けた。10月に米・ロサンゼルスで公演をおこなった八代。「やっと時差ボケが抜けてきたくらいで(笑)。この曲は初めてその公演でトライして。みなさんスタンディングオベーション、嬉しかったです」と大成功に終わったロサンゼルス公演を振り返った。

 陽気なリズムで会場のボルテージを上げた「カモナ・マイ・ハウス」と「帰ってくれたら嬉しいわ」を演奏し、本編を終えた。

 八代は「15歳の時に父に内緒でキャバレーで歌ったの。それがバレて勘当されました。父さんの会社を助けようと思って歌ったんです。でも、あの時、父が誤解せず許してくれたら、今の八代亜紀はありません。父は62歳で天国に行ったけど、誤解してくれてありがとうと毎日心の中で言っています。人生って不思議で間違いなんてないんです。色々あったけど、今が一番幸せです。また会おうね」と観客に呼びかけた。

 観客のアンコールに応えた八代は「舟唄」を披露。ウッドベースの演奏にエフェクターのかかったギターが乗り、<お酒はぬるめの 燗がいい>というおなじみのフレーズを歌い客席からも大きな歓声が上がった。最後は観客とハイタッチをしながらテーブル席を抜けて退場。46年という長い歌手生活を経ても、今なお進化を続ける彼女の底知れぬ才能と同時に、彼女の原点を垣間見られた貴重な公演となった。

セットリスト

01.ジャニー・ギター
02.フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
03.涙の太陽
04.赤と青のブルース
05.ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー
06.雨の慕情
07.黒い花びら
08.ワーク・ソング
09.カモナ・マイ・ハウス
10.帰ってくれたら嬉しいわ
Encore
11.舟唄

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