みみめめMIMI「Bon Voyage!」感謝の気持ち詰め込んだ解散ライブ
(撮影=西原史顕)
シンガーソングライターで声優のタカオユキとイラストレーターのちゃもーいによる、新世代視聴覚ユニットのみみめめMIMIが、9日に東京・代官山UNITでラストライブ『みみめめMIMI Final Live 2017 Bon! Voyage!』をおこなった。ユキは「Bon Voyage! みみめめMIMIに出会ってくれてありがとう!」とファンに感謝の気持ちを伝え、みみめめMIMIとして最後のステージを去った。
みみめめMIMIとして彼女たちがデビューしたのが約4年前。そして今年7月18日に、自身の公式サイトで突然の解散宣言。ファンの間ではその意味について様々な憶測が飛び交う中、皆に共通していたのはやはりその終焉を深く惜しむ気持ちだったことだろう。4年という短い月日で彼女たちが成してきたものは、それだけ人々の心に深く刻まれている。その事実を示すかのように、この日おこなわれたラストライブは、当日を遥か前にしてソールドアウト。多くのファンがその最後の姿を目に焼き付けようと、会場を訪れた。
「思いの丈を乗せたい」最後のライブ
開場から程なく人でいっぱいになったフロア。会場には米歌手のシンディ・ローパーの数々のヒット曲が流れる。「Time After Time」「She Bop」「All Through The Night」…。思えば、タカオユキの声はシンディの声質、歌い方などとは全く違うものの、独自の個性があること、そしてメロディに情感が見えてくる雰囲気には、何か共通点が見えてくることを、改めて思わせる。
そして、定刻を5分ほど過ぎたころ、終焉の物語はいよいよ幕を開けた。会場には、みみめめMIMIのデビュー曲「センチメンタルラブ」や、その他の曲の一節をリミックスしたサウンドがSEとして流れる。やがてステージ背面には、この日のツアータイトルが映し出され、いよいよサポートメンバーとともにタカオユキは、観客からの歓迎に迎えられステージに現れた。「みみめめMIMIです! 今日はみんな、会いに来てくれてありがとう!」と叫び、ステージは「Mr.Darling」をオープニングナンバーにスタートした。
アクティブな雰囲気を感じさせるビートに、会場は最初から大きな盛り上がりを見せた。しかし、そんな観客を見つめるタカオユキの表情は、笑顔ながら強い感情を表しているようには見えなかった。緊張している様でもない、何か様々な思いを胸の内で交差させているようでもあった。
その表情はステージ背面に投影された、ちゃもーいの描くキャラクター・MIMIの表情とシンクロしているようでもある。映像のそれぞれに描かれるミミのイメージは、その色彩感もあって非常にポップに見えるが、反面いつもその表情に、はっきりそうとわかるほどの溢れる笑顔が表されたことはない。それこそは、みみめめMIMIのこれまで描いてきた世界観の一つの側面でもある。まさに、その時見せたタカオユキの表情は、何かそんな一つのイメージをしっかりと表しているようにも見えた。
「まず一言、言わせて下さい。今日はみんな、会いに来てくれてありがとう!」満員の会場を目前に深くお辞儀し、礼を告げる。少し気持ちがほぐれたのか、表情は明るさを帯び、「Bon Voyage」という言葉でボケる掛け合いで、一時和やかな雰囲気を吹き込む。
そして「みんなに最後まで笑顔になってもらえるように頑張るので、みなさんもみみめめMIMIを受け取ってもらえると嬉しいです」と語り、一瞬息をのむように口をつぐむ。その時の表情には何かの覚悟を決めたような思いが感じられた。
しかし、そんな様子を一蹴とばかりに「CANDY MAGIC」から再び大きな盛り上がりを見せる観客。「みんな! 楽しんでいくよ!」タカオユキの声に、さらに大きく反応する。それでも煽り続けるタカオユキだが、続いたバラードの「SAY-YOU」では、言葉の一つひとつを大事に歌う様子も感じられた。
「思いの丈を全部乗せたい」と告げたこの日のライブへの思いを、そのまま表したようなその歌に、先ほどまで暴れるように楽しんでいた観客は、その時は黙って彼女の歌に耳を傾けていた。
■温かい思い出、そして思い残すことなく
中盤には「Am I Ready?」から「たからもの」へと続くこの日の為のメドレーが披露された。その演奏がおこなわれる前に、先日の解散宣言への詫びを告げた。「みんな驚かせてしまって本当にごめんなさい。みんなびっくりしたよね? 私もこんな大きな決断をしたことに、自分でびっくりしたくらい」。その一方で、寄せられた励ましのコメントに励まされたこと、そして新たな道への決断を固めた報告とともに、感謝の気持ちを告げ「みんなにはたくさん笑顔になって帰ってもらいたい。だから今日私は、泣きません!」と宣言、観客から暖かい拍手を受けた。
一方でこれまでの活動の思い出も振り返り、Twitterなどでも話題となったキャラ弁づくりや、初めて皆の前に姿を現した、東京・赤坂BLITZでのライブの前に、「ハンバーグ」という名前で秘密の練習ライブをおこなったエピソードなどで、和やかな空気を満たしていきながら、再びライブでは、思い残すことのないように、そう言わんばかりにメドレーから再び大きな盛り上がりの波を起こす。
メドレーの「チャチャチャ」では、彼女らのライブですっかりおなじみになった観客との掛け合い、「天手古舞」では、サビのブレイク後の一言「君のせいだよ!」という言葉を、観客がみみめめMIMIに向けて投げかける。そして「サヨナラ嘘ツキ」から、記念すべきデビュー曲「センチメンタルラブ」でステージのエンドを迎える。鳴りやまない歓声の中、演奏を終えステージを離れようとしたタカオユキの表情は、少し寂しげでもある反面、安堵したようにも見えた。
さらに続くアンコールに応え、3曲を披露。映画『咲-Saki-』のためにタカオユキが書き下ろした楽曲「きみにワルツ」を初披露。この曲がタカオユキ自身の歌で、ライブで披露されるのは、これが最初で最後となった。そして、この日会場に駆け付けた観客、さらに、これまでみみめめMIMIを支えたファンへの、明日からの道に向けたエールともいえる「晴レ晴レファンファーレ」、ラストにはそんなファンとみみめめMIMIとの関係を描いたような「青い鳥」。歌には芯の強さを感じさせる一方で、何かあふれ出す思いのようなものまで、音の中に溶け込んで聴こえてきた。この曲が終わったら、文字通りみみめめMIMIは終わってしまう…そんな寂しさも拭い切れなかったに違いない。
「Bon Voyage」が示すもの
そして、迎えたエンディング。タカオユキはみみめめMIMIとしての活動で芽生えた想い、人々との出会いを一つずつ振り返る。かつては自分のために書いていた曲が、みみめめMIMIとして多くのファンを得たことで、自身が大きな成長を成し遂げたこと。デビューしてからのこの4年間が、自身にとって何にも代えられない宝物だということ。「これからも一番の味方だ」と断言する相棒・ちゃもーいのこと。時に厳しく叱りながらも、辛抱強くみみめめMIMIを見守り続けたスタッフ一同、そして暖かく支えてくれた父、母のこと。最後に、この日何度も告げた、ファンへの感謝。少し震えるような声で途中言葉を詰まらせながら、それでも泣くまいと一つひとつの言葉を声にしていく。
「本当にこれまでたくさん、ありがとうございました。どうか忘れないでね。みなさん、Bon Voyage! みみめめMIMIに出会ってくれてありがとう!」その言葉を最後に、自身も新たな旅立ちへの宣言をして、ステージを締め括った。「忘れないよ!」タカオユキの言葉に、多くの観客が大声で応えた。異常なまでに盛り上がったステージだったが、切なげな表情で、特にタオルで目や口元を押さえる観客も見られた。サポートでプレーしていたメンバーにすら、その思いが伝搬したのだろう。すっかり目を赤く腫らしていたのが印象的だった。
「Bon Voyage」とはフランス語で「良き旅を」と訳される。「Au Revoir」(さようなら)という言葉と並んでよく使われる別れの挨拶であるという。しかし単に「さようなら」と告げる後者と比べれば、前者はなんとなく前向きで優しい、相手への思いやりを感じられる言葉ではないだろうか。別れの瞬間は寂しいものであり、この日のラストはその思いも正直、拭い切れないものではあった。
しかし、この瞬間はあくまで、みみめめMIMIにとっても、そしてファンにも、ぞれぞれに大きくも小さくもあるかもしれないが、間違いなく一つの転機であり、新たな明日を迎える一歩を踏みしめる旅立ちを示すものだ。みみめめMIMIが残した歌の数々は、これからも皆の心に残っていく。その事実自体が、まさに「Bon Voyage」という言葉を投げ掛けた意を示してくれることだろう。
【取材=桂 伸也】
セットリスト
01. Mr.Darling 02. 瞬間リアリティ 03. 1,2,少女 04. CANDY MAGIC 05. 1/2ぶんこ 06. 相対性レプリカ 07. SAY-YOU 08. 〜Bon! Voyage! メドレー〜 (Am I Ready?〜兎ナミダ〜お絵描き〜チョコレート革命〜チャチャチャ〜たからもの) 09. リライミライ 10. 天手古舞 11. サヨナラ嘘ツキ 12. センチメンタルラブ encore EN01. きみにワルツ |