ある意味凱旋ともいえるライブとなった赤坂BLITZでワンマンステージ『きみのヒロイン』(撮影・西原史顕)

 シンガーソングライターで声優のタカオユキとイラストレーターのちゃもーいからなる、目と耳から刺激する新世代視聴覚ユニットのみみめめMIMIが12月3日に、東京・赤坂BLITZでワンマンステージ『きみのヒロイン』をおこなった。2014年6月、ユキはみみめめMIMIのメンバーとして、この地で初めて観衆の前に素顔を見せステージをおこなった。あれから約2年が過ぎ、この11月に、自身2枚目となる待望の最新アルバム『きみのヒロインになりたい』をリリース。それに伴いおこなったこの日のステージは、アンコールを含め全18曲を想いを込めて歌唱。ある意味凱旋ともいえるライブとなった。

「きみのヒロイン」になりたくて――思いを込めて歌うユキ

タカオユキ(撮影・西原史顕)

 開始のアナウンスが流れてしばらくすると、会場は暗転し歓声に満たされた。そしてステージの背景にある白い建物を模したオブジェに光が当てられ、やがてプロジェクションマッピングで生き生きとした真っ青な空のイラストが映し出される。やがて背面に設置されたスクリーンにはステージタイトル「きみのヒロイン」の文字が映し出され、バックバンドのメンバーが一人、また一人とステージに現れる。この時BGMとして流れていたのは、アルバム『きみのヒロインになりたくて』のオープニングテーマ「白い鳥」。明るい太陽のもと広がる大海原、そこに漂うように飛ぶ白い鳥。そんなイメージがステージに現れる。

 そうした空間に観衆が見とれていると、ふいに白のオブジェが中心から境に左右に分かれ、中からバックライトが当てられたユキが現れる。その瞬間、またも大きな歓声がステージに向かって投げかけられた。そして「晴レ晴レファンファーレ」のイントロへ突入、ブレイクとともにユキが叫ぶ。「楽しんでいきましょう!」。その言葉で、この日座席制となっていた一階席の観衆は、迷わず総立ちとなり、一気に興奮状態へ入った。

 白が基調の、ゆったりしたワンピース姿のユキ。出だしから観衆に向けて思いを吐き出すかのように体を激しく揺らし、思いを込めるように歌う。「『きみのヒロイン』へようこそ!今日はみんなのヒロインになれるよう、お届けしていきたいと思います!」。ユキの思いは強くなるばかり。ファンへの思いをさらに熱くするように「CANDY MAGIC」、「センチメンタルラブ」と、彼女の内なる思いを表した詞が、さらに熱い感情を乗せて観衆のもとへ届けられ、会場の熱気を濃くする。そこには、真に「きみのヒロイン」となろうと様々な思いを巡らせるユキの思いが見てとれた。

本当に飛んで行ってしまいそうな、観衆との間に生じた大きなエネルギー

ライブのもよう(撮影・西原史顕)

 この日はバックのサポートとしてギター、ベース、ドラムをそろえた、初のバンドスタイルでステージは進められた。これまでのドラム、DJのみのサポートよりもさらに音が前に出る格好となり、観衆の気持ちをグイグイとステージに引き寄せていく。その力強い後押しもあってか、ユキは伸び伸びとパフォーマンスを楽しんでいるようだった。

 曲は「兎ナミダ」から「1メートル」「たからもの」と、何か内に秘めた切ない気持ちを歌い上げるバラードが続く。さらに続いた曲「蝶~Butterfly~」が終わると、ふいにドラムのみがリズミカルなビートを刻み始め、ユキが語り掛ける。「蝶が飛んで行ったところで、今度は皆さんと飛んで行きたいと思いま~す!」。そしてステージの展開を盛り上げるべくユキは観衆とのコール&レスポンスを楽しむ。

 「瞬間リアリティ」からは「皆さん楽しんでますか!?」「まだまだ終わらせたくないですよね!?」と疾走するような8ビート、16ビートが高らかに鳴り響く。さらに途中「O.B.E.N.T.O」でプレーヤーのソロ回しから、最後はユキのワイルドなスキャットまで大きな見せ場を作ると、会場はもう手が付けられないほどの盛り上がりを見せた。

 そしてタオルを振り乱してそのノリを楽しむ「天手古舞」で一気に駆け抜ける。まさしくタカオユキ、そしてみみめめMIMIというヒロインとともに、本当にどこかに飛んで行ってしまいそうなほどのエネルギーが飛び交う。一足早いがとばかりに「チョコレート革命」に続いて観衆、そしてファンとの親密な関係を描いたかのような「1/2ぶんこ」を披露、ユキはステージを降りた。

「みみめめMIMIを見つけてくれてありがとう」自身を支えてくれた感謝を胸に

タカオユキ(撮影・西原史顕)

 なおも続くアンコールに応え登場、改めてこの日の礼を告げた。この日のステージ「きみのヒロイン」に込めた思い。「日々過ごしていて、自分を変えられるのは、自分自身だとすごく思うことがあるけど“誰かのヒロインになりたい”と思う気持ちは、こんなにも私を強くしてもらえるものなんだなって、みんなに教えてもらいました」。自身の気持ちをみんなと共有したい、それが自分を支えてくれたから。そんな思いを胸に、ユキは礼を告げた。「みみめめMIMIを見つけてくれてありがとう」。

 ラストナンバーは「青い鳥」。青い鳥を形どった紙が、天から何枚も降りてくる。ライブが終わり、BGMに再び「白い鳥」が流れる中、改めてユキはこれまでの道のりを振り返った。

 この日を迎えるまでは、ユキが常にステージやメディアで見せていたあふれんばかりの笑顔とは対照的に、様々な苦労、苦難があったこと。その重圧に「自分はこの世界に向いていないんじゃないか」と悩んでいたこと。その試練を思いながら「それでも何度も強くなれたのは、応援してくれる皆さんがいてくれたおかげです。今日は改めて感謝を伝えさせてください」。

 思いをあふれさせ、時々、言葉を詰まらせながらも、相棒のちゃもーい、スタッフ、家族、友人、そして会場に訪れた観衆を含め、深い一礼とともにすべてのファンに感謝の思いを告げる。

 最後の挨拶の直前、一つの小さな奇跡が現れた。最後の曲で飛び回った羽根の一枚が、ユキの頭に。驚きながらもユキは、嬉しそうに叫んだ。「皆さんのおかげで、羽根が生えました!」。その一言に観衆は笑いながらも、彼女らに惜しみなく送る拍手の手を止めようとはしなかった。

一段と大きくなったみみめめMIMIの世界観

記念撮影(撮影・西原史顕)

 この日のユキは、MCではほとんど話さず、懸命にパフォーマンスと歌で自分の思いを伝えようとしていた。みみめめMIMIのビジュアルは、あくまでちゃもーいの描くイラストで表現、そしてユキは自身の歌を響かせることに集中する、何か原点回帰ともとれる、そんな意思の表れだったのではないだろうか。

 新たなアルバムは、1stアルバムから見せていたみみめめMIMIのセンス、そしてもう一つ、これまでの経験で彼女らが得てきた新たなセンス、その2つの要素がバランスよく溶け合い、みみめめMIMIの世界観を広く切り開いた。

 その様子は、2ndアルバムの曲を主体に、1stの曲も織り交ぜておこなわれたこの日のライブが、観衆の気持ちをずっととらえ続けていたことからもよくわかる。自身の描く世界をさらに広げつつあるみみめめMIMI。果たして来年はどんな「ヒロイン」となって、皆のもとへやってくるだろう。また期待したいところでもある。(取材・桂伸也)

セットリスト

みみめめMIMIワンマンライブ『きみのヒロイン』
12月3日 東京・赤坂BLITZ

01. 白い鳥
02. 晴レ晴レファンファーレ
03. CANDY MAGIC
04. センチメンタルラブ
05. 兎ナミダ
06. 1メートル
07. たからもの
08. 蝶~Butterfly~
09. 瞬間リアリティ
10. O.B.E.N.T.O
11. 相対性レプリカ
12. サヨナラ嘘ツキ
13. 1,2,少女
14. 天手古舞
15. チョコレート革命
16. 1/2ぶんこ

ENCORE

EN01. チャチャチャ
EN02. 青い鳥~白い鳥

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