大人にはなっていない、電波少女ハシシ 30歳で見えた新たな心境
INTERVIEW

大人にはなっていない、電波少女ハシシ 30歳で見えた新たな心境


記者:小池直也

撮影:

掲載:17年06月16日

読了時間:約11分

30歳を迎え考え方に変化が生まれてきているという電波少女のハシシ。彼の今の心境は(撮影・冨田味我)

 ヒップホップユニットの電波少女が6月12日に、デジタルシングル「ME」を配信限定でリリース。3カ月連続シングルリリースの第1弾。今年1月に『日本縦断ヒッチハイクの旅』を無事に成功させ、メジャーデビューを勝ち取った。ユニットの中心人物であるハシシは今年30歳を迎え、少しずつ考え方に変化が生まれてきているという。今までにはなかった「感謝」や「愛」をテーマに新曲を制作するなど、ハシシの今の心境とは。「ME」の制作背景やフリースタイルラップなどについて話を聞いた。

音楽以外から刺激を得ることが多い

電波少女・ハシシ

電波少女・ハシシ

——今回配信リリースとなる「ME」を作曲された経緯を教えて頂けますか。

 インディーズ2ndアルバム『WHO』に「MO feat. NIHA-C」と、E.Pの『パラノイア』に「RY feat.Jinmenusagi」があるんです。それの続編というか、3曲で1つのストーリーになる様に考えていました。タイトルも3つ合わせると『MEMORY』になる様に「ME」という曲を作りました。後付けではあるんですけどね。

 「MO feat. NIHA-C」の時点では考えていなかったのですが、「RY feat.Jinmenusagi」を作った時に「こういうシリーズにしよう」と。繋がりがあるのは歌詞です。「MO」が別れた後で、「RY」は別れてからさらに時間が経ってからの気持ちだったので、付き合っている時期の気持ちを書いてみようと思いました。

 曲はビートメイカーの方にお願いして、歌詞とメロディは自分が作っています。今回の場合で言うと、ピアノパターンを最初に送ってもらって、そのテンポを自分の歌いやすい様に早めたり、キーを上げたりします。それを戻して「ベースはこう動いてほしい」、「Bメロはこうしたい」とか口で音程を言いながらSkypeでやりとりします。自分のイメージしたメロディと違っていたりしたら、コードを代えてもらったりもします。

 この曲は割とすんなり出来ました。大枠はヒッチハイク行く前に2番くらいまでは出来ていて。3カ月連続リリースなので、新しいので勝負したいというのがありました。

——「ME」もひねくれた歌詞が特徴だなと感じましたが、実際その様な恋愛を?

 はい(笑)。でも基本的に出来事は歌ってないです。気持ちを歌っているので。だからフィクションな部分はないです。フィクションで書く事もありますけど、その場合は割と内面的な事が多いです。自分も音楽を聴く時、小説の様にストーリーを楽しめる物よりも「わかるわ!」と思いたいタイプなので。そういう書き方が多いです。

 この「ME」の内容は、18歳の時の恋愛を基にしています。ずっとなんですけど、ラブソングを書くとなると無意識にその時の事を書きます。それぐらい大きな恋愛だったので、それを様々な視点で書いていきました。

 最近、割と言いたい事を言い尽くした感があって。自分の中に元々そんなにないんですけど、ある程度の事は言ったなと思っています。誰が歌っても面白そうなトピック、恋愛とか向上心、何かと戦っているリリックはやりつくしたなと。これからは新しい部分を見つけていかなきゃいけません。思っているけど、まとまってないところとかも。先ほどもストーリーとしての書き方はしないと言いましたけど、そういうのもしたいなと思っています。

——現在どのような構想を持っていますか。

 いきなりファンタジーという訳でもなく、ありそうな架空の話と言うか。映画を撮る様な感じでどこまで文字で表現できるんだろう、という事を考えています。自分が良いなと思ったメロディやリズムをキープすることは前提です。あまりポエトリーリーディング(朗読)的なやり方が好きではないので。

 他のアーティストがやっているのでは好きなものもあるんですけど。自分がやるというのでは違うと思います。奥は深いんですけど、リズムとか無視して言いたい事が言えてしまう。それを音楽の目線を保ったまま、どれだけ出来るんだろうというところでは、前作に入っている「Mis(ter)understand」は実体験を基にしながらストーリーを作るというやり方ができました。

 それがピタッとはまった時に「面白いな」と思ったんです。そういうのも出来て行くと幅が広がるのかなと。実体験だけでやると本当に枯渇して、いつか限界が来てしまうのではと思っています。

——インスピレーションを得るのはどういうところからでしょうか?

 自分は漫画です。僕は古谷実さんがとても好きで。ギャグマンガの『行け!稲中卓球部』でも有名なのですが、最近はシリアス路線で書かれています。最近ドラマ化されるのが決まった『わにとかげぎす』も書いています。彼の世界観が凄い好きで、中学校の時は一番影響を受けていました。今でもチェックしています。

 基本的に悲観的で、北野武さんの映画にも似ている部分があります。絶望の方向に向かっていき、“どよーん”としている。着眼点も凄く好きです。たぶん電波少女のお客さんが読むと「こいつ相当影響を受けてるな」と感じると思います。

 音楽も聴くんですけど、勉強として聴く事が増えてしまったので、音楽以外から刺激を得ることが多いです。映画とかドラマも見ないし、小説はちょっと文字のみで難しい。マンガの良い所は自分のペースで読めるところかなと思います。

この記事の写真
電波少女・ハシシ
電波少女・ハシシ
電波少女・ハシシ

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事