Blu-ray盤

 「椎名林檎」名義では12年ぶりの開催となった全国ツアー『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015』。映像作品化を要望するファンの声に応え、5月31日にBlu-ray・DVDがリリースされる。このリリースに先駆け、本作を紐解くオフィシャル・ライナーノーツが19日に公開された。実演から約1年半の時を経て明かされる椎名林檎の企み、映像監督・ウスイヒロシ氏のコメントも織り込んだ、作品解説テキストだ。

 ツアーのタイトルにある“彼奴等”とは、玉田豊夢、鳥越啓介、ヒイズミマサユ機、浮雲、名越由貴夫、村田陽一、西村浩二、山本拓夫からなるバンド「MANGARAMA」を指している。彼らは、椎名本人曰く<目指す地点に最短の時間で辿り着ける、話が早い人しかいないバンド>だ。では、椎名をしてそれほどまで言わしめるバンドメンバーはどのような人物たちなのか。今回は彼らにスポットを当てたい。

 ライナーノーツでの登場順に紹介していく。まずは玉田豊夢、ドラマーである。1975年生まれの大分県出身。中村一義と『100s』というバンドを組んでいた他、柴咲コウ、フジファブリック、レキシなどのライブでもドラムを叩いている。レコーディング参加は宇多田ヒカル、SMAP、ポルノグラフィティなど。日本のポップスを支えるドラマーの1人とも言えるだろう。

 次に、ヒイズミマサユ機。またの名をH ZETT M。椎名が結成していたバンド・東京事変の初代キーボーディストでもある。1978年生まれの兵庫県出身。ジャズインストバンドのPE’Zのメンバーとして頭角を現し、現在はH ZETTRIOを主催して活動している。H ZETTRIOは音源がリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式で流れた事も記憶に新しい。

 ベーシストの鳥越啓介は、1975年生まれの岡山県出身。ウッドベースからエレキベースまでをこなす。活動の幅はジャズを中心としながらもポップス、タンゴ、ブラジル音楽に至るまでと幅広く、日々様々な現場でプレイしている。安藤裕子、土岐麻子、菊地成孔らとも共演。

 浮雲は第2期東京事変のギタリストでもある。本名は長岡亮介。1978年生まれの千葉県出身。カントリーやブルーグラス調の演奏を得意とし、最近では星野源の「恋」のミュージックビデオにも出演している。ギター以外にもコーラスやラップなど多彩な演奏を聴かせるのも特徴。自己のバンド、ペトロールズでの活動でも有名。

 名越由貴夫はギタリスト。1965年生まれの岡山県出身。ハードコアバンドのコーパス・グラインダーズのギタリストとして頭角を現し、UA、Superfly、長渕剛などのバックでも演奏している。ギタリストとしてだけではなく、作曲やアレンジなどプロデューサーとしても活動。Charaの「タイムマシーン」は彼の作曲である。

 トロンボーン奏者の村田陽一は、1963年生まれの静岡県出身。ジャズを中心にしながらも幅広いジャンルでプレイするミュージシャンである。アレンジャーとしても、SMAP、サザンオールスターズ、ピチカート・ファイヴなどの作品に参加している。椎名の楽曲のブラス(管楽器)アレンジの数多くも彼が手掛けているのも彼だ。

 西村浩二は1963年生まれ、青森県出身のトランぺッター。前述の村田が主宰する村田陽一ソリッド・ブラスなど、ジャズオーケストラでの活動を始め、スタジオミュージシャンとしても多くのアーティストと仕事をしている。サザンオールスターズ、SMAP、MISIA、KinKi Kidsなどとも共演。

 山本拓夫は、1961年生まれの東京都出身。サキソフォン・フルートプレイヤーである。彼も幅広いジャンルに対応できるミュージシャンで、例えばMr.Childrenの『シーソーゲーム』の間奏も彼のサックスによるもので、Jポップにおいて数多くの印象的なプレイを残している。

 以上がMANGARAMAのメンバーである。見ての通り、1978年生まれの椎名と同じ世代のアーティスト、そして1世代上の腕利きスタジオプレイヤーによって構成されている。<目指す地点に最短の時間で辿り着ける、話が早い人しかいない>というのは、「腕が立つ」というだけでなく「世代が同じ」という意味合いもあるのかもしれない。(文・小池直也)

▽ライナーノーツ
http://sp.universal-music.co.jp/ringo/live2015/notes.html

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