シェネル

 デビュー10周年を迎える歌手のシェネル(34)が先月28日、都内でおこなわれたライブイベントに出演した。現在放送中のTBS系ドラマ『リバース』主題歌「Destiny」を歌う彼女はこの場で、同曲を含む5曲を披露。間近で彼女の歌声を聴き、改めて感じたのはその歌唱力だ。“ラブソング・プリンセス”とも言われている彼女。たった5曲の披露だが、彼女の魅力が凝縮されていた。その魅力を支えるものとはなにか。

オリジナル曲を日本語で歌う

 現在先行配信中で5月10日にリリースする「Destiny」は、シェネルの新境地となる、スリリングなストリングスアレンジが光る、緊迫感溢れる楽曲だ。その「Destiny」を、先月28日に都内でおこなわれた『プレミアムフライデーライブ』(GYAO!主催))のラストで披露した。

 抜群の歌唱力で、楽曲の持つ世界観を表現、日本語の歌詞も見事な発音で耳にスッと入ってきた。オーストラリア出身で、現在はアメリカに活動拠点を置く彼女。欧米人でオリジナル曲を日本語で歌う歌手はそう多くはない。シェネルはそんな貴重な海外アーティストの一人ともいえる。

 このライブでは2015年にリリースした、シングル「Happiness」や、映画『BRAVE HEARTS 海猿』の主題歌である「Believe」のようなバラード、さらに制作中のアルバムから初披露した「Love You Like Me」のようなアッパーチューンまで、幅広い音楽性を短い時間のライブで歌い上げた。

 「Love You Like Me」は躍動感あふれるパーティーチューン。サウンド的には洋楽サウンドで英詞で届けた。まさに、邦楽と洋楽のハイブリットな魅力に溢れたライブであった。何より、歌うことを非常に楽しんでいる姿が魅力的であった。

低音の二面性

熱唱するシェネル

 このなかでとりわけ驚いたのが、ライブでの歌のクオリティーだ。ピッチはCD音源並の安定感を見せ、観衆がいるなかでの披露ということもあり、エモーショナルさは音源よりも深みを増していた。何より外国人アーティストならではの、声の低音がエネルギッシュで圧倒される。

 シェネルは美しい腹筋を維持するためにジムなどで、自身を“トレーニング中毒”と語るほど鍛え上げているという。もちろん食事にも気を使っている。そんなストイックさが歌声にも表れているような説得力だった。

 その声の低音も曲調によって大きく印象を変えていく。バラードナンバーでは、包み込むような低音で安心感を与え、アッパーでアグレッシブな楽曲ではラウドな存在感。楽曲によって聴くものの感情をコントロールするかのように、低音の特性を変化させているように感じた。

 もちろん、伸びやかな高音部分も素晴らしいが、中低域の存在感がシェネルの魅力を引き立てている。この低音の二面性は鍛え上げている腹筋によるものだと推測できる。

違和感のない日本語詞

 まだ、日本語を文法で喋ることは難しいと話したシェネルだが、歌で聴かせる日本語のイントネーションやアクセントにさほど違和感は感じない。

 どのように歌詞を覚えているかの質問に「自分でもわからないんです」と不思議と覚えられると話していたが、やはりそこは耳の良さがなせることだろう。海外の歌手が母国語以外を流暢に発音できるのは、耳が一般人よりも能力が高いからではないかと感じた。

 さらに曲調によって歌い方を変えているのかと思いきや、本人はそこまで意識していないという。楽曲を大きく捉え、そこに言葉と歌声を乗せるというナチュラルな感覚で歌い上げている。余計に意識をして歌うよりもリアリティは高まるといった例だ。

 「Destiny」のような楽曲は自身への挑戦でもあり、多くの人たちに届けることが楽しみだと語るシェネル。その純粋に歌を届けるという姿勢が、ラブソング・プリンセスと呼ばれ、海外アーティストだが多くの日本人にも愛される理由なのではないかと感じさせられたライブであった。

 番組収録後、観覧していたファンから揚せんべいをプレゼントされ、無邪気に喜ぶ姿も歌っている時とのギャップがあり、印象に残った。(文=村上順一)

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