取材会で垣間見えた音楽的知性とアンテナ力

 【取材雑感】世界的人気を集めるピコ太郎が先日、12月7日発売のアルバム『PPAP』に関して、合同取材会を開いた。彼は沢山の報道陣を相手に約1時間弱、質疑に答えた。現在、世界中でムーブメントを起こし、時の人となっているピコ太郎だが、そのルックスや作風とは裏腹に音楽に対する知性や分析、戦略的な部分も垣間見せた。

 例えば、ところどころにさらっと登場する海外アーティストの名前である。チェインスモーカーズ、メジャー・レイザーを挙げた場面、さらに「DJスネークとジャスティン・ビーバーの曲が好き」とした場面などからは、彼が現行の海外音楽チャートをしっかり追っているという事が垣間見える。

 さらに驚いたのは、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムの発言を引用したシーンである。「今後、曲はよりシンプルに、より音階も無く、1分くらいになるんじゃないか」。真偽はともかくとして、自分の作風をシーンの流れにしっかり乗せて、裏付けられるセルフ解説能力を彼は持っている。

 そして、それは彼がテクノ音楽史をしっかりカバーしている事に拠るとわかったのが、「デジタルロックから、エレクトロニカ、エレクトロ、EDMというところのデジタルロックが好きみたいです」という発言だろう。これはピコ太郎のプロデューサー、古坂大魔王の発言を引用しての発言だが、あまりに流暢に話していたところを見るに、しっかり理解して話しているとしか思えなかった。

 また、これも審議はともかくとして、好きなファッション誌を『BOON』、『MEN'S NON-NO』などを挙げるあたりに90年代の香りを感じる。それもそのはず、古坂プロデューサーはテレビ番組『ボキャブラ天国』で名を挙げた芸人のひとり。その影響ではないだろうか。

 と、この様に挙げれば彼が明晰な人物であることは明白なのだが、その強い知性を9割増しくらいのジョークで塗りつぶしていくのだ。それによってスノッブな印象を付けることなく、日本のお茶の間に進出する事に成功したのではないだろうか。これが彼の発言にもあった「努力ではなく、近道を探すために必要な手段を選ぶ」ことのひとつなのだろう。

 しかし、対海外では、そんな小細工は「言語」というフィルタで一蹴される。そこでは面白いか否かが全てだ。そのテーブルで彼が成功した理由のなかでも、個人的に強い要因だと考えるのは「振りと言葉のシンプルさ」と「『Pen-Pinapple-Apple-pen』」という言葉のリズム的なフロウ」である。

 シンプルさによって世界中誰もがカバーしたくなる欲求を生み出したし、これがもし、「Pen-Apple-Pinapple-pen」や「Pinapple-Pen-Apple-Pen」ならこのジャパニーズドリームは無し得なかっただろう。(取材・小池直也)

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