変わりたくない、電波少女 47都道府県“ヒッチハイクの旅”始動
INTERVIEW

変わりたくない、電波少女 47都道府県“ヒッチハイクの旅”始動


記者:小池直也

撮影:サムネイル

掲載:16年11月18日

読了時間:約10分

「47都道府県ストリートライブツアー」出発前のインタビューで心境を語る電波少女

「47都道府県ストリートライブツアー」出発前のインタビューで心境を語る電波少女

 ヒップホップクルーの電波少女(でんぱがーる)が11月11日、北海道・札幌時計台から、日本列島をヒッチハイクで横断する『電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR』をスタートさせた。この企画は、彼らのメジャーデビューを懸けたもので、課せられたミッションは、<1>ヒッチハイクで移動し、47都道府県全てでストリートライブをせよ<2>11月11日・北海道札幌時計台を出発し、2017年1月31日までに宮崎県にゴールせよ<3>ストリートライブや車を乗せてくれた人とLINEで友達になり友達1000人を達成せよ<4>移動の模様やストリートライブをLINELIVEで生放送せよ――の4項目。所持金は2万円。個人SNSの禁止などのルールも設けられている。ゴール後の2017年2月4日には東京・渋谷WWWでワンマンライブが決まっている。これから待ち受ける経験は彼らの音楽人生のなかで大きな影響を与えることであろう。ゴール後の彼らはどう変わっているのか。まずは彼らに、スタート前の心境を聞いた。

行きたくないです(笑)

ハシシ

ハシシ

――率直に現在の心境はいかがですか。

ハシシ 「ネガティブな事を言うとあんまり印象が良くないし、応援してくれている人に失礼だよ」と親にも言われてますが、行きたくないです(笑)。あと、最近寝られないんですよ。寝ようと思っても、その事を考えると心臓がドキドキしてきて目が覚めます。

nicecream 僕は普通に「不安だな」という感じですね。何か、良い感じに「お客さんとかも観ていて面白い感じになればいいな」とは思うですけど。果たして、そういう旅になるのかなとか。

ハシシ 全部不安ですね。ヒッチハイクの企画自体も面白がってもらえるのかっていうところもあるし。達成できるのかというところもあるし、達成した後の事(渋谷WWWでのワンマンライブ)もあるし。

――今回の経緯を改めて教えて頂けますか。

ハシシ 本当はアルバム『パラノイア』をリリースするタイミングで、2月のワンマンライブがリリースパーティになる予定だったんです。でも自分の制作が凄く遅くて、リリースパーティが出来なくて、その後にリリースという形になったんです。元々の予定ではそこで「『メジャー盤を出す』って言えたらいいね」という話もあって。そのために前々から「当日は発表があります」みたいに匂わせていたのに、それも発表できなくなってしまって。

 だから、急きょ次のイベントに持ち越す様な流れを作ったんです。でも次のイベントでも結局、色々あって発表できず。そんな感じで「後日発表します」ということにしていたら、いつの間にかこういう企画になってました(笑)。2年前の企画会議で適当に名前と掛けて「ヒッチハイクとかどうですか?」と言ったことがあったんです。それがあって2年越しに軽く言われまして。だから、頭のどこかにありました。

 あと番組『電波少年』の土屋プロデューサーが前回やったリリースパーティのポスターをツイッターで挙げてくれたんです。その時に「ヒッチハイクしたいです」と返事したのもスタッフに見られていたみたいで(笑)。

――スタートまでの過ごし方は?

nicecream 僕は結構、ストリートライブをやらなくちゃいけないので、その練習が主です。

ハシシ 自分は旅に出たら出来なくなるので、楽曲の制作を進める予定でいます。スタートしてからも、ゴールするまでに2曲くらいできればいいなと思っていて。巡りながら色々書きたいなとも思いつつ、でも何かクサくなったら嫌だなと。なので、ちょっと捻くれた奴を書きたいですね。

 もしかした全然意図しない曲ができるかもしれないですよね。でも変わりたく無いなって思いもあります。角が取れてしまいたくないなと。逆にもっと尖る可能性もありますね。

nicecream 僕も変わりたくないですね。今自分は良いバランスなので。

――各県で1度はストリートライブをする、とのことですが路上演奏のご経験は?

2人 無いですね。

ハシシ 遊びでなら友達とやったことがありますけど、ラップを外でしたことがまず無いんですよ。今回はいつもの音源をかけながらやるつもりでいます。

nicecream 小さいアンプを持って行きます。これからスタジオで音出ししてみるところですが、僕としては今までにない新技みたいなものを用意しているので、それが秘策ですかね。

ハシシ 自分は既存の曲で昔のメンバーが居た時に歌っていたものを、ひとりバージョンにしたものがあるくらいです。だから、いつも通りでいきます。でも、僕らがいつもやっている音楽をストリートでやるということはめちゃくちゃ弱いと思うんです。足を止めるというのはnicecreamのダンスくらいしか物珍しさは無いかもしれない。

 凄いベースが上手かったりとか、ドラムが上手かったりという華やかさは無いですよね。今「ラップブーム」とか言われていますけど、自分はフリースタイルとかやらないし。かと言ってラップも、言葉が詰まりすぎててメッセージが伝わりづらいジャンルだと思うんです。だからそこはどうしようかなと考えています。なるべく人が少ない県はすぐ移動できるようにして、人が多いところで稼ごうかなと思っています(笑)。

 本当に「わからないことが、わからない状態」なのでやりながらですね。音を出すのはアンプひとつだけ。だからと言って、凄く良い環境で変わるのかな? というところもあるので。自分らのポテンシャル次第ですかね。ヒッチハイクという名目ですけど、路上ライブをやることに意味があるとも思ってます。ストリート全国ツアーみたいな(笑)。

四の五の言ってる場合でもない

nicecream

nicecream

――支給される2万円の使い道はどうしますか?

ハシシ 考えてないですけど、出来るだけ無駄遣いをしない様にするつもりではいます。みんなに「ふざけた使い方をしてほしい」とか「初日に使い切ってほしい」と言われるんですけど、命が懸かっているのでそういう使い方は怖いですね。全然面白いところを作る気はないです(笑)。もう成る様にしか成らないので、とにかく見てる人が飽きなければいいなと。

――ヒッチハイクの経験はあるんですか?

ハシシ 学生時代はお金が無くて、街の方に出るのに車で1時間かかるんです。電車で行くと1000円、だから往復2000円でもったい無い。その距離はヒッチハイクしてましたね。

nicecream 洋服を買いに行くのに高校生のお小遣いだと1万円くらい。その中の2000円を電車に使いたくないですよ。2つのグルーブに分かれてヒッチハイクして、競争したりしてました。

ハシシ もう10年前だし、不安ではあるんですけど。都会の方が難しいんだろうなと。田舎だとまだ馴染むじゃないですか。都会だとヒッチハイクしている人なんて見た事ないですから。

――着替えなどは。

nicecream あんまり荷物は多くないほうがいいので上に着るのは3着くらいですかね。あとパタゴニアのジャケット買っていきます。

ハシシ あとは雨がやだな。あと人に迷惑がかかるので、優先しても風呂には入りたいなと思います。あとは寝袋も持ってきます。

――「全国を回る」のと「メジャーデビュー」となかなか結びつかないんですけど、それについてはどう思われますか?

ハシシ ぶっちゃけ、意図はわかるんです。何かをやって「有名になれよ」と事だと思うんで。でも、見てる側は関係ないじゃないですか。そういう部分はただ単純に罰ゲーム的な感じで楽しめばいいんじゃないかなと。

――告知動画では、プロデューサーの方が「おまえらにはストーリーがない」と言っていましたが。

ハシシ いや、凄く濃いストーリーはあるんですけどね(笑)。でも嫌ですよ、それが電波少女のアイデンティティになっても。ヒッチハイクで変にバズって、ことあるごとに無茶をさせられるとかになるとしんどいなとも思います。でも四の五の言ってる場合でもないですから。

――現時点で2月の渋谷WWWのワンマンライブはどんなものになりそうですか?

ハシシ いや、もう何にも考えてませんね(笑)。来年2月ですけど、旅が終わってから休めるのかな…。

人間はどれだけ仲悪くなるのか

電波少女

電波少女

――こんなに長い時間2人で一緒にいることも無いですよね。

nicecream 高校時代は一緒のクラスで放課後とかも遊んで、そのまま泊まってというのはありました。でもこういう風に2人っきりで過ごすというのは無いです。ずっと一緒にいた時期もありましたけど、それは「いなければいけない」というわけでは無かったですし。

ハシシ 誰かと四六時中一緒にいるというのは、10代とかだったら多分平気なんでしょうけど、なかなか年齢的に…。あと、当時は本当に友達でしたから。もちろん今も友達なんですけど、仕事も一緒にやっていて、家族みたいになっているところもあるので、若干「気持ち悪いな」というのもお互いあると思います(笑)。

――地元の宮崎がゴールですがそれについてはどうですか?

ハシシ 別に地元に帰りたいということも無くて、とにかくゴールの宮崎を目指したいという感じです。楽しみな所も今の所は無くて。楽しむというのはある程度のお金があって行くと思うんですよ、地方とか。多分、時間もお金も無いので風景として見てしまうかも。

――お2人はネガティブとポジティブで正反対な感じで面白いですよね。

ハシシ そうですね。作った曲を全部通して一貫しているのも、歌詞とかネガティブ気味なところだと思います。メンタルが弱いので、マイナスに考えてある程度の予防線を張っておくという考え方をしています。

nicecream 僕はポジティブだと思います。

ハシシ 学生時代は結構「性格が似てるね」とよく言われたんです。それがネガティブなのかポジティブなのかはわかりませんけど。今でも話していて、感覚は近いとは思います。でも20代のある時から右と左にそれて行ったなという感じはありますね。

nicecream それは凄いわかる。

ハシシ 生活はあると思いますね。自分はインドアで、nicecreamはアウトドアで社交的というか。そういうのが影響しているのかな。あと、僕はインターネットに疲れすぎましたね。この旅は仲が悪くなる要素しか無いです。まず「試練」というだけでピリピリするじゃないですか。あとはずっと一緒にいるというのと、財布をひとつにしなければいけないというのが。どちらかというと、ゴールよりも「人間どれだけ仲悪くなるのか」という実験に近いくらい(笑)。そこは気を付けなきゃなと思っています。ある程度、干渉しすぎないというのも必要かもしれませんね。

――「友達を1000人作る」というミッションではnicecreamさんの出番ですね。

ハシシ nicecreamは社交性あるんですけど、人との距離の縮め方が間違ってるんです。僕は僕で寄り付かないから、両方駄目なんですけど。

nicecream 思い当たる節はあります(笑)。

――でも、ラッパーでこんな企画している人はいないんじゃないですか。

ハシシ ちょうど今1人で日本を縦断しているHangくんというラッパーがいるんですよ。現地のクラブに飛び込みでライブしながら旅をしています。今回の企画を告知したら彼から「九州辺りで一緒になれそうですね。遊び野宿やりましょう!」と連絡が来ました(笑)。やりたくねえ!(笑)。

nicecream まさか自分たちが同じ様な企画をやることになるとは思ってなかったです。

ハシシ 彼は北海道からスタートして今、四国八十八箇所巡りを終えたところらしいです(笑)。九州辺りで会えたらモチベーション上がるかもしれませんね。

――では最後に中間地点(関東)の自分たちへメッセージをお願いします。

ハシシ かなり近い未来なのにどうなってるかまったくわからない(笑)。普段だったら何も変わらないんですけどね。とりあえず、仲良くしてください。

nicecream 無事ゴール出来る様に頑張ってください(笑)。

(取材・小池直也)

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