恵比寿リキッドルームで全18曲を熱唱した綾野ましろ(撮影・高田真希子)

恵比寿リキッドルームで全18曲を熱唱した綾野ましろ(撮影・高田真希子)

 歌手の綾野ましろが11月3日、東京・恵比寿LIQUIDROOMでワンマンライブ『One man Live 2016 WHITE PLACE』をおこなった。メジャーデビューから約2年、10月に初のフルアルバム『WHITE PLACE』をリリース。今回のライブは、その発売を記念し、大阪から東京、そして、綾野の地元である北海道は札幌と3カ所を回るツアーの中間地点にあたる。綾野の名前「ましろ」の象徴ともいえる、白を基調としたスタイルと、観衆の持っていたサイリウムで白く染め上げられたフロアと、まさにタイトル通りの「WHITE PLACE」で、全18曲を熱唱した。

スタート前から会場は熱気満々、スタートとともに、会場は「白の場所」へ。

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

 定刻を少し過ぎたころ会場は暗転し、SEの「white arise」が流れ始め、バックバンドのメンバーが一人、また一人とステージに登場。その展開に観衆も興奮状態で、白いサイリウムを掲げ始めた。まさしくタイトル通り、「白の場所」が会場に少しずつ広がり始める。そして最後に綾野がステージに登場、観衆の呼び声に、綾野は笑顔と振り上げた右腕で答えた。

 黒のコスチュームで決めたバックバンドと、真っ白なドレスの綾野。さらに綾野に当てられたピンスポットにより、ステージ上の白一点のコントラストがより鮮明に映し出される。そして静かなピアノのイントロより、オープニングナンバーの「shinkiro」へ。スタンドマイクの前で、綾野は歌の世界観にしっかりと身を浸し、歌と全身で自身の思いを観衆に伝えていく。リズムに合わせて前後するサイリウム。その様は猛烈な吹雪に舞う雪のようでもあった。

 ビートを抑えた静かなAメロから、衝動をそのまま音に表したような激しいサビへ。動と静が交錯する曲が次々と続いていく。曲に現れるその展開は、綾野の瑞々しい歌のメロディに感情の動きを与え、物語を描いているようにも見える。その背景に彩られ、サビの一番響くメロディの中で、綾野は自身の真骨頂ともいえる伸びやかで力強い歌声を響かせる。少しずつ綾野のパフォーマンスも激しさを増し始め、ついには「tiny wings」より「行くぞ!」「恵比寿!盛り上がっていくよ!」「もっと!」と観衆をあおり始めた。スタートには緊張した集中した表情をのぞかせていたが、曲が進むにつれギターソロの合間には笑顔を見せ、徐々に観衆とのコール&レスポンスを見せる余裕も披露していた。

感覚的な意識に重きを置いた表現

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

 「改めましてこんばんは! 綾野ましろです! 皆さん、盛り上がってますか!?」と、4曲を歌い切り、ようやく一息をつく。彼女は今回、恵比寿LIQUIDROOMでのライブが2回目であることを明かしながら「実は1回目の様子は、緊張して全然覚えていないんです…」と振り返り、この2回目のライブはその飛躍の時として改めて会場の熱気を胸に刻むことを誓う。そして「misty way」「re:rain」と少しビート感を抑えたナンバーから、肩透かしを食らわせるようにパンキッシュな8ビートのタテノリナンバー「labradorite」、そしてTVアニメ『ガンスリンガー ストラトス』のOPテーマ「vanilla sky」へ。アニメ作品のファン、そして綾野のファンにとってはたまらないこのナンバーで、会場の熱気はさらに増していく。

 中盤を過ぎると、綾野は会場の雰囲気をしっかりとものにしていた。高く、迷いなく真っ直ぐに響く綾野の声は、切ない思いなどが描かれた曲によく似合う。それゆえ、歌う姿にも非常に緊張感が見られる時もある。が、この時の綾野の姿は歌を歌うのが楽しくて仕方ない、ステージに立つのが楽しくて仕方ないといった感じだった。さらに観衆とのコミュニケーションを密にすべく、お立ち台に立つ綾野。小柄な彼女であるが、お立ち台に立つとその凛とした姿は、実際の大きさよりずっと大きく見えるだけでなく、何か神々しさすら感じられる、カリスマ的な一面さえ見せていた。

 「Delusion」「憧憬」など1stアルバムの新録曲の間に、コンセプトアルバム『early days』の楽曲「RAY OF LIGHT」のような、自身の思い入れの強いものと明かす楽曲を織り交ぜて展開したこの日のステージ。先にプレーされた「vanilla sky」がOPテーマとなったアニメ『ガンスリンガーストラトス』や「Lotus Pain」が起用されたTVアニメ『D.Gray-man HALLOW』など、アニメ作品自体に思い入れがあることを明かしていた綾野だが、彼女の表現するものは、細かなニュアンス、テクニックよりも、もっと曲全体の情景をイメージするような感覚的な意識において、楽曲の表現をイメージしているかのようにも見える。

器用さよりも、自身の得意な部分で勝負!「この瞬間を大切にしたい」

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

綾野ましろ(撮影・高田真希子)

 ステージを左へ右へ、そして一番高いところへと動き回る綾野には、真に迫った気迫すら感じられた。そしてステージは、いよいよクライマックスに向かった。「スパイラルガーデン」「infinity beyond」と続き、ラストナンバーにはメジャーデビュー曲の「ideal white」。綾野はひと時も落とされることのないテンションの中で、全力疾走でステージを駆け抜け、「ideal white」の<白く 白く 真白な未来が たった 一つ 僕達の希望♪>や<白く 白く 降り積もる理想に 今日も 足跡 刻んでいくよ♪>というサビの詞に込めたメッセージで、熱く火照った会場に深い余韻を残した。

 さらになおも続くアンコールに応え、再びステージに現れた綾野は、玉置成実のカバー曲である「Believe」から「marionnette」、そしてバラードの「春想の街」まで3曲を観衆に歌い届け、この日を迎えたことに改めて感謝の言葉を継げながら「この瞬間は永遠ではない」「だからこそ、この瞬間を大切にしたい」と、改めてアーティスト、シンガーとしてのまい進を誓い、この日のステージを締めくくった。

 綾野は、どの曲も真っ直ぐな歌い方を見せる。下手な小細工などない、どちらかというと決して何でもできるという器用なタイプではないようにも感じられる。しかしだからこそ、いつも綾野の一番得意な、輝くように響き渡るシャープな歌声に全身全霊を込め、歌に向き合っている。歌から感じられる可能性は十分、今後その器(うつわ)をどのように広げ、自身の深い世界観を見せてくれるのだろうか? 今後がとても楽しみだ。この日のステージは、聴くものに十分そう思わせてくれるものだった。(取材・桂 伸也)

セットリスト

『綾野ましろ One-man Live 2016 WHITE PLACE』
11月3日恵比寿LIQUIDROOM

SE white arise
01. shinkiro
02. focus light
03. tiny wings
04. 刹那クロニクル
05. misty way
06. re:rain
07. labradorite
08. vanilla sky
09. Delusion
10. Lotus Pain
11. 憧憬
12. RAY OF LIGHT
13. スパイラルガーデン
14. infinity beyond
15. ideal white
encore
EN01. Believe
EN02. marionnette
EN03. 春想の街

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