The Covers’Fes.公開収録、斉藤由貴は運命を決めた「卒業」披露

　NHK・BSプレミアム音楽番組『The Covers』の公開収録「The Covers'Fes. 2016」が19日、東京・NHKホールで開催された。横山剣（クレイジーケンバンド）、エレファントカシマシ、秦基博、ORIGINAL LOVE、JUJU、BRAHMAN（ブラフマン）が出演、この日抽選で選ばれた3000人の観客の前でそれぞれ思い入れのあるカバーソングを披露した。さらに同公演には、スペシャルゲストとして斉藤由貴が出演。1985年のデビュー曲「卒業」と「AXIA～かなしいことり～」を歌った。

　『The Covers』は、2014年３月にスタートした音楽番組で、ジャンルや世代を超えたアーティストが、自身の思い入れのある名曲をアレンジした上でカバーするとともに、音楽や時代をテーマにトークを繰り広げるというもの。2014年11月には、東京キネマ倶楽部で番組初の公開収録『The Covers’Fes』を開催。今回は３度目で初のNHKホールでの公開収録となった。

　約500～700人収容の東京キネマ倶楽部で収録された、過去２回の『The Covers’Fes』にMCとして出演していたリリー・フランキーは「ちょっと、いきなり規模が大きくなりすぎじゃないですか？」と戸惑い気味の様子を見せ、過去に『NHK紅白歌合戦』で審査員を務めて以来、およそ10年ぶりのNHKホールのステージであることを明かした。同じくMCを務める仲里依紗は、2010年にNHK音楽番組『POP JAM』で映画『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』で自身が演じた、ゼブラクイーン名義で歌唱したことを振り返った。

　この日、トップバッターを務めたのは、北島三郎の「まつり」をカバーした横山剣。横山は「やっぱりNHKホールというと、『まつり』かなと思って」と、過去最多となる５回も紅白歌合戦でトリを飾った楽曲についてコメント。

　続いて、出演したJUJUは中森明菜の「DESIRE -情熱-」をカバー。シンガーソングライター秦基博は「スタンダードのど真ん中やろうかな」と、今年７月に亡くなった永六輔さん作詞の楽曲、1963年の坂本九さん「見上げてごらん夜の星を」を披露した。

　ORIGINAL LOVEと横山のスペシャルコラボでは、1993年のORIGINAL LOVE「接吻」を２人で歌い上げた。リリーはこの様子を「これは田島くん１人で歌っても相当濃いですけど、そこに剣さんが入りますからね。マヨネーズにケチャップ入れるオーロラソース状態」と例えた。

　さらに、田島が「自分のキャラに合ってないものをやろうと思って」と1998年の宇多田ヒカルのデビュー曲「Automatic」を、大人の魅力溢れる違った趣きで披露した。リリーは「あの曲は10代の女の子の曲なんだけど、田島くんが歌ったら、大人の恋愛の曲に聴こえました」と感動した様子を見せた。

　ここでスペシャルゲストとして斉藤由貴が登場し、自身のデビュー曲「卒業」を歌った。この日は、同曲を作詞した作詞家・松本隆が客席で観覧していた。マイクを向けられた松本はレコーディング時は何も言わなかったといい、「その当時は凄く忙しいときで、疲れてたんです。ソファで寝てたら、私の顔を覗き込んで『寝てるんですか？』と尋ねられたことを覚えています」とレコーディング時のエピソードを語った。

　改めて「卒業」を聴いた松本は「うん、もう少し練習したほうがいいかな（笑）」と厳しい意見を述べた。斉藤は「本当に…誰が呼んだんだろう（笑）来ると知ってたら、もう少し上手に歌えた」と苦笑いで返した。松本は「この曲を聴くと、誰もが自分の思い出の教室に戻れる」と同曲について語り、斉藤も「私はこの曲でデビューしてなかったら、全然違う人生を歩んでいたと思う」と同曲が、かけがえのないものであることを明かした。

　４人組ロックバンドのBRAHMANは1995年の阪神・淡路大震災の惨状の中で、中川敬（ソウル・フラワー・ユニオン）と山口洋（HEATWAVE)の共作した楽曲である「満月の夕」を２人とともに演奏。もともと親交のあった中川と山口だったが、この曲の製作過程で仲違いするかたちとなっていた。どちらの「満月の夕」も好きだったと語るTOSHI-LOW（Vo）は、２人を昨年８月に放送された『The Covers』で共演させ、仲直りさせていた。

　エレファントカシマシは、宮本浩次（Vo、Gt）のヒーローだったという、沢田研二の1978年のシングル「サムライ」をカバー。曲のクライマックスにはステージに赤い羽根が舞う演出で観客を魅了した。

　最後はTOSHI-LOWが「カバーを歌うということは、自分たちで完結する話じゃないと思っているんです。受け継いだものを先にどう繋げていくかという話で、今自分がこの曲を歌いたいと思うのは、何か感じるものがあると思うんです。それを感じて、また誰かが歌ってくれるなら僕は喜んでそれを迎えたいです」とカバーの意義について語り、BRAHMANと宮本浩次で、1988年RCサクセション「明日なき世界」を演奏。熱いステージで最後を飾った。

　なお、この収録の模様は10月30日午後11時から、NHK・BSプレミアムで放送される予定。（取材・松尾模糊）

番組情報

「The Covers'Fes. 2016」
NHK・BSプレミアム
30日　23時～24時29分