20分のプログレに、疾走するインスト

パーカッションも演奏

パーカッションも演奏

 30分のインターバルを挟んでの「ACT-2」は、“角松音楽”の深層部に傾倒した。白のスーツに青のシャツ、オレンジのネクタイで再登場した角松は、曲ごとにパート編成を変えた。まず最初に届けた「RAIN MAIN」はキーボード3人、パーカッション2人を迎えての特別バージョン。ここにコーラス6人が加わった。レンガ畳みの道を傘をさして優雅に歩く女性の情景が浮かぶ軽やかな曲は3つの異なるキーボードの音色、そしてその上下を並走するコーラスによってその物語をより鮮明に映し出した。

 その編成での「IZUMO」では、パーカッションが一段と強調され、リズミカル且つダイナミックに。それに合わせるようにソウルフルに歌い上げる角松。間奏では、キーボードに指揮を執って音を誘った。

 この章の3曲目に披露したのは「The Moment of 4.6 Billion Years」。「アルバム収録曲を飛ばして聴いてしまう時代に問題定義するように制作した」と前説を入れた同曲は演奏時間20分のプログレ。2面のスクリーンに川や森、都会の環境映像を流し、視覚と聴覚でその世界観を表現する。

 その世界観は、ジャケットを脱ぎ臨戦態勢の角松の背後から地を這うキーボードの低音から始まる。聖歌隊の合唱が加わり、やがてドラムが力強い音を轟かせる。そして、キーボード、ベース、サックス、ギターと旋律を放っていく。入れ替わる楽器隊の攻守。音色は時に単奏し、時に合奏、交差したかと思えばDNAの螺旋のように絡み合う。自由自在に飛び交う音像は海を颯爽と泳ぐイルカのようでもあった。

 6曲目のインスト楽曲「OSHI-TAO-SHITAI」はパート毎にバトルを展開。ドラム3台によるユニゾンから始まり、その合間を縫うように山内のベースが絡み、村上のソロドラムへと流れ、本田のサックスが重奏する。やがて、森のキーボードに引き継がれ、友成とのセッションを始める。それを角松がパーカッションで煽る。その後、角松はギターに持ち替え奏でると、そのギターサウンドを梶原、そして鈴木へと渡す。両極にある2人のサウンドは互いを行き来した後、ベースの山内が受け取り、グルーヴィーな低音へと変える。更に角松がパーカッションで参戦すると、今度は大儀見とのリズムセッション。激しいやり取りが続いたあと、ドラムの玉田と山本の打音が響き渡り、そのままドラム対決。最後は村上が静と動を巧みに使ったドラミングで空間を支配すると、意表を突くドラムカウントを始め、“通常路線”に帰した。この茶目っ気に角松も笑顔を見せた。F1のように凄腕ドライバーによるスリリングな“走り”に場内は大歓声に沸いた。

 その後は趣向を変えて、35年の中で角松がプロデュースした作品を女性コーラスとデュエットするという“和みコーナー”へ。特色ある女性歌手の美声によって色を変えるように角松も歌唱を使い分け、華を添えた。優雅なひと時を過ごした後、アルバム『THE MOMENT』のツアーで全国各地の公演で参加したChoirが総勢98人の大所帯で登場、「Get Back to the Love」を披露し、歌の素晴らしさを共有した。

 そして、80年代を代表する作品「After 5 Crash」「RUSH HOUR」「Tokyo Tower」「Girl in the Box」を歌唱し、「今夜はどうもありがとうございました!」と一言挨拶して「ハナノサクコロ」で本編は終了した。

アンコールも壮大

万感の表情を浮かべる角松

万感の表情を浮かべる角松

 オーディエンスからの大声援と拍手の嵐を受けてのアンコール。サマーチューンで人気の高い「浜辺の歌」、「ILLUMINANT」ではキティとダニエルが応援に駆け付けてダンスを披露、ライブの定番「Take You To The Sky High」は客席から無数の紙飛行機が飛ばされた。

 アンコールだけでも5曲が披露されたが、興奮冷めやらぬ会場からは再びのアンコール。ダブルアンコールに応えた角松は、最近感じる事を打ち明けてから「新しいものをしながらも、下の世代に残すこともしないといけないなと思う。前向きな曲を届けたい」と語って「Always Be With You」を披露。本田のフルートが渡り鳥のように音色を遠くに響かせると、角松はそれに乗って空を泳ぐように優雅で力強く歌う。ステージには大量のスモークがたかれ“天空の城”ならぬ“天空の要塞”に。そして、サックスが未来を暗示するような神秘性を持った音色を奏でた。

 そして、角松は感銘を受けたという、高倉健さんの言葉「拍手されるよりも、拍手をした方が豊かになる」を引き合いに、まず自身が会場に居る全ての者に拍手を送り、次にバンドメンバー、そしてファンそれぞれに促した。この拍手をもってメンバーが退場。角松一人、再度中央のリフトステージに移動する。

 アコギを構えると、ステージは高さ5メートルほどまで上昇し、リズミカルに弾き語る。最後は「NO END SUMMER」。ここまで6時間走ってきた。体力も限界に近づき満身創痍で弾き語っていると、突然、サウンドがダイナミックに。メインステージに目を向けると、戻ってきたバンドメンバーが奏でていた。終盤には、一切の音を消して観客と大合唱。最後まで壮大なスケールで届けられた。

 6時間半で40曲を届けた角松は多くのファン、多くのミュージシャンに囲まれていた。肩で息をしながらも達成感に満たされた表情の角松は何度も「ありがとう」の言葉を口にして、ラストは「逢えて良かった!」と声を張って周年公演を締めくくった。

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