あっという間のデビュー半年、NakamuraEmi 自信を支える仲間の絆
INTERVIEW

あっという間のデビュー半年、NakamuraEmi 自信を支える仲間の絆


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年07月13日

読了時間:約20分

圧巻の歌唱力と歌の説得力で観客を魅了したNakamuraEmi(撮影・Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER))

圧巻の歌唱力と歌の説得力で観客を魅了したNakamuraEmi(撮影・Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER))

 シンガーソングライターのNakamuraEmiが7日に、昨年メジャーデビューを発表した思い出の地、神奈川・Motion Blue Yokohamaで『七夕はここで。~2016~』をおこなった。それに伴い、5月におこなわれた代官山UNITでの東名阪ツアー『“NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST”~Release Tour 2016~』ファイナルのライブ音源を、7inchアナログでライブ会場限定販売。更には、アナログ盤に収録されている4曲に3曲を加えた7曲を配信限定でリリースした。“オーガスタ期待の新星”としてメジャーデビューしてから約半年。テレビやラジオなどで大きな注目を集めるなど怒涛の時間を過ごした。この間、どのような変化があったのか。そして、前記のツアーや今回配信された楽曲への想いなど話を聞いた。

ラジオの力は凄かったですね

――メジャーデビューをして半年が経ちましたが環境や心境の変化はありますか。

 小学校や中学校の入学式からの半年と同じ感じです。ドキドキしながら入って、どんなところか分からなくてやってきた感じです。環境の変化は…、時間が経つのがものすごく早かったし、まずはこの環境についていく事に必死でした。本当にあっという間でしたね。

――メジャーになると、今までインディーズでやってきた頃よりも聴いてくれる人達が多くなると思うんです。この半年、反響もすごかったんじゃないですか。

 もう全然違いました。ラジオの力は凄かったですね。Twitterのフォロワーが一気に増えたり。あと、今までは、必死に告知をしてもやっとライブに20~30人集まってくれていたのが、自分がそんなに告知しなくても「ラジオを聞いて初めて来ました!」とかそういう人がすごく増えました。ラジオやTVのメディアの力は本当に凄いなと思いました。

――この半年は怒濤の如く波にもまれるような感じで、時間が過ぎてきたような心境ではないかと思うのですがどうでしょうか。

 そうですね。傷だらけ、とかそういう事では全然ないんですけど、とにかく新入社員みたいな感じでドキドキする事ばかりだし、慣れない事ばかりだし、喋る事が苦手だから曲を書いているようなものなのに、喋る事が大事な現場もいっぱいあるし。「ああ駄目だった…」とか「人がいっぱいいてドキドキする!」とかそういう子供みたいにドキドキすることがいっぱいあった半年でしたね。

――そういった中で生まれた曲もありますか。

 あります。今書いている中にもそういうものはありますし。大人になってこういう初体験の事をさせてもらえるという事はなかなかない事なので、一つひとつ今はまだドキドキしながらやっています。

――アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』を1月にリリースして、印象に残った出来事はありますか。

 私のCDを買ってくださって、子供達に聴かせてくれているという人が多いみたいなんです。受験生で、落ち込んでいた女子高生が「あなたの曲を聴いて元気になりました」とか、ちょっと若い世代の方が反応してくれたのが印象的でしたね。

――以前のインタビューで、ファンの方の言葉や曲を聴いてくれた方の言葉が自分の書く詞に影響を与えると仰ってましたね。今回のこのような反応も次の作品に影響が出てきますか。

 そうですね。たぶんそのまま影響されて出てきますね。

――大阪と名古屋をツアーで回って、東京と違うなと思った点はありましたか。

 大阪と名古屋は、いままで応援して下さった方もかなりの人数が来ていてくれて、その方々が仲間を呼んで来てくれてというのが多かったです。不思議だったのは、意外と大阪と名古屋の方々のほうが「ウワーっ」て素直に声を出してくれた感じがありましたね。古くからのお客さんも多かったというのもあるんですけど。東京の方は、初めて来てくれた人が多かったと感じましたね。

――そういう感じはやはり分かるものなんですね。

 はい。何となく感じましたね。あと代官山UNITはやっぱり広くて特殊な会場だったので、自分もワンマンだったけど誰が来ているか分からない状況というのがありましたね。いつものワンマンなら、見渡せば誰が来ているかは見える状況だったけど、誰がいるのか分からないというのはいつもとは心境が違いました。

――今回ツアーでは未発表曲をやられていましたが、いつ頃に作られた曲なんですか。

 「Rebirth」は4~5年前から歌っていて、ライブではよくやったりしているんです。「めしあがれ」は去年の冬あたりでしたかね…、その頃に書いて歌ったりしてました。「大人の言うことを聞け」は今年に入ってからですね。一番新しいです。

―「大人の言うことを聞け」はタイトルが命令形でとてもダイレクトですね。これはどういった思いで作られた曲ですか。

 子供の目線で私を見たら34~35歳なので大人だけど、私からしたら60~70歳が大人なんですよね。私はまだ「中途半端な子供」だと思っていて、その中途半端な年齢の中で感じた事を書いたんです。子供の頃はよく大人にああだこうだと言われたりして「うるさいうるさい!」と思っていたけれど、大人が言う言葉にはいろんな“ヒント”があって、それは良い言葉で「こんなカッコいい人になりたい」というのもあれば「何でそんな事ばかり言うんだろう?」というのもあったり、そういう風に感じることが子供の時は多かったんです。

 だからそれをどこかで反面教師として残しておいて、「あんな大人にならなければいいんだ」とか「ああいう風にならないように言うにはどうやっていくか」とか、子供は子供なりに大人の言う通りにするんじゃなくて、喋っている事をそのまま聞いてそのまま自分達の糧にして進んでいけば面白いなと思いまして。私は私で一人の大人になってきた訳だから、今度は大人には言ってもらえなくなってくる立場なんですよね。きっとみんなも言いにくいだろうし。言われにくくなってくる年齢なんですよね。そうすると自分の良い所と悪い所が分からなくなってくるんです。だから子供の時ってもっと純粋に良い所も悪い所も言われるから、それを大事に“使って”もらえたらいいなと思って、そういう意味で中途半端な自分から言える事を書いた曲です。

――大人と一口に言っても幅広いですが、モデルにした人はいるのでしょうか。

 自分の学校の先生とか親とかですね。昔いろんな事を言われた時は響かなかったし「何言ってんだろ?」と思っていたけど、今になると何でそれを言っていたのかがよく分かるんです。だから学校の先生に言われた事とかではよくありますね。

――ちなみに新曲のタイトルなどは先に考えるのですか。

 先につける時もあるんですけど、基本は後で歌詞を見直して考えたりします。けっこう半々だったりしますね。最初に「コレだな」という題名ができたりというのもありますけど。

――最後の方までタイトルを決めかねるという事もありますか。

 「スケボーマン」は最初、仮タイトルだったんですよ。やっていくうちに「じゃあコレ『スケボーマン』で!」って(笑)。そういう感じの流れで決めちゃう事もありますし。最初にタイトルをつけて「何か違う?」となると絶対に変えますね。

――「Rebirth」は自身の成長過程を歌っていると思うんです。この曲を作ろうと思ったきっかけは。

 その曲はもともと私がHIPHOPの曲を聴いて「この曲大好き!」と思った事があったんです。それはThe Pharcyde(ザ ファーサイド)の「Runnin’」という曲なんですけど、これは「逃げられないぞ」という意味の曲なんです。その曲自体が大好きでずっと聴いていたんですね。それで「こういう曲で歌ってみたい」という事で、初めてラップっぽいものをつけたのが「Rebirth」なんです。そこから私の音楽生活が変わっていったというのもあって、すごく大事な曲なんです。

 小さい頃は“超自己中”でして(笑)。今はいろんな人に出会ったり、HIPHOPに出会ったりして自分をどんどん変えたいと思っているんです。でもなかなか人間って自分の事を変えられないんですよね。でも、そのまま逃げていると結局同じ様な嫌な出来事があって、もし自分に「なりたい自分」というのがいたらそこから逃げられないんだなって思って、The Pharcydeの「Runnin’=逃げられないぞ」という大好きな曲と自分の考えた事がリンクして、「逃げられないぞ、逃げられないぞ」という歌詞をいれつつ、みんなも「自分のなりたい自分」があるんだったらなろうよという曲ですね。

――理想を作ってそこに向かっていく曲なんですね。ライブでまだ音源化されてない未発表曲を演奏する時、お客さんの反応が気になったりしますか。

 私はライブをして曲を構築していくタイプなので、未発表曲を音源にして「どうぞ」ってお客さんに聴いてもらうよりかは、いつもライブでさんざんやって聴いてもらって、いろんな人の意見を聴いて曲が変わっていって初めてレコーディングするタイプなんですよ。だから新曲はみんながどう反応するのかすごく気になります。5月のワンマンライブの時は直接みんなとお話ができなかったので、お手紙を書いてくださったりメールを下さったりして、いろいろと反応が聞けるんです。「みんなが涙していた!」とか、みんなのレポートで「ああ、そうなんだなあ」とか感じますね。

――そこはインディーズの頃からのスタイルというか、曲をライブで披露してからレコーディングというやり方が自然ですか。

 はい。何が正解かは分からないですけど、やっぱりお客さんの前で歌っていて「この言葉が引っかかったな」とか「嘘くさかったな」とか、なるべくそういうのはナシにしてライブには臨んでいるんですけど、どんどん人前でライブをやると、やっぱり自分達がスタジオで作っていただけの時とは全然違う景色が見えるんです。それを構築して音源として完成したものをみなさんに渡せたらいいなと思っているんです。

――そうすると完成まで試行錯誤があると思うのですが、元よりも形が変わってしまった曲などもありますよね。

 けっこうありますね。「Rebirth」も最初にやっていたものとは違います。ライブでは必ず録音をしているんですけど、後からプロデューサーのカワムラヒロシさんと一緒に聴いて「ここは歌詞が聴きづらいね」とか「これだと歌詞を逆に受け取られちゃうね」とか、客観的に聴くんです。その後またリハーサルで曲をアレンジし直したりしていますね。

――「Rebirth」の「これをクリアしないと次に行けない」と受け取られるところは、人生において重要な事でもあり、そこに気付くのはなかなか大変だと思います。ファンの方が聴いてこれに共感を得た方もすごいですよね。

 けっこう古くからのお客さんの中にはすごくこの曲が好きで、「泣いてしまいました」という人も多いですね。それは歌詞が響いた人だと思うんですけど、歌う前の曲の説明でも「私の小さい頃から今までを歌っています」としか言っていないんです。その中で「逃げられないぞ」という言葉とか「自分はこれじゃ駄目なんだ」とかが伝わればきっと自分でも「そうか」と思ってもらえるのかもしれないんですけど、もしかしたらMCで「一つの問題を置きっぱなしにするとどこかで必ず返ってくる、逃げられないぞ」というのを言ったら、この曲の入り方も全然違うのかなって、私もライブの音源聴いて思っていたところですね。

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