シンガーソングライターのNakamuraEmiが3日、東京・Zepp Hanedaで全国ツアー『Momi Release Tour 2021』のツアーファイナル公演を行った。今年7月にリリースされたアルバム『Momi』を携えて9月24日の北海道PENNY LANE 24を皮切りにAcoustic Ver.、Band Ver.と趣を変え全国25カ所を回るというもの。ツアーファイナルは『Momi』収録曲を中心に「使命」や「YAMABIKO」、「相棒」などアンコール含め全16曲を届けた。ライブは音源を超えるパフォーマンスで、ファイナルに相応しいステージだった。このライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

想像はしていたけど、想像以上ですね

(撮影=古賀恒雄)

 開演時刻になり、サポートメンバーがステージに。演奏がスタートしNakamuraEmiが登場。定位置に着くと深くお辞儀をし、「BEST」でツアーファイナルの幕は開けた。凛とした歌声が会場に響きわたる。この声を聞いただけでベストコンディションでステージに臨んでいることがわかる。躍動感あふれる「大人の言うことを聞け」、リズミックに繰り広げられるフロウが心地よい「使命」と立て続けに届けた。バンドのエナジーとNakamuraEmiの快活な歌声に序盤から魅了される。

 ここまでの3曲と雰囲気が一転した楽曲「東京タワー」。サビでは赤い閃光が天井に向かって伸びる。東京タワーを想起させる演出だ。その中で葛藤を綴った歌詞を力強く歌い上げるNakamuraEmiの姿に観客の耳と目が集中する。

 この日はじめてのMC。挨拶をすると大きな長い拍手に迎えられた。「想像はしていたけど、想像以上ですね」と、観客と会えたことで感情が生まれていると話す。そして、メンバー紹介ではそれぞれの個性が伝わる丁寧な紹介。彼女のプロデューサーでギタリストのカワムラヒロシとのやりとりも、デビュー前からの絆を感じさせるものだった。

 ここで、「大事なメンバーを紹介します」とステージセンターに設置されている稲を紹介。アルバムタイトルの『Momi』にちなんで置かれたこの稲は実家で作られたものだそうで、今回のツアー全国25ヶ所を一緒に回ったという。NakamuraEmiはこの稲をNakamura稲と命名。

 東京公演のみのスペシャルゲストであるトランペッターの市原ひかりをステージに呼び込み、コロナ禍でコーヒーを作る自分と向き合う時間の中で生まれた「drop by drop」を披露。レイドバックしたリズムに乗って、情感たっぷりに歌うNakamuraEmi、そこに絡み合うようなトランペットの旋律が、極上の空間を作り上げた。

 「スケボーマン」はメジャーデビュー前から歌い続けていた曲。経験を経て曲が成長していく、彼女の経験が加味され深みが増している、そんなことを感じさせてくれたパフォーマンスだった。後半に向かうにつれ感情が高まっていくような感覚を味わわせてくれた。

 ニューアルバムから「1の次は」。彼女の感性が一際発揮されていた楽曲。1の次は2ではない、そんな人とは違う感覚は個性に繋がるポジティブな感情を歌詞に落とし込んだ、今の彼女ならではの楽曲だ。

 NakamuraEmiが、波の音を再現するオーシャンドラムを使用して安らぎの空間を作り上げた「ご飯はかために炊く」。チルアウトしたサウンドと歌声が会場を優しく包み込むようだった。続いて、カワムラのアコースティックギターをバックに「ホッとする時間がありますように」と願いを込めて届けられた「一服」。この曲はカワムラとMPC(サンプラー)奏者の熊井吾郎の3人で届けた。3人とは思えない深みのある楽曲展開、広がりを見せたアレンジで観客を楽曲の世界へと誘う。

ここからまた新しいことに挑戦

 再びフルバンド編成で届けたのは「私の仕事」。自分がここで歌えているのは多くの人たちのおかげ、そんな想いと多種多様な職業の人へのリスペクトを込め歌いあげた。後半の落ちサビは音源ではピアノが入っていたが、ライブではアカペラに。よりダイナミックでドラマチックな展開は圧巻だった。

 続いては「畑」を届けた。コロナ禍で家庭菜園を始めたというNakamuraEmi。なかなか上手く育たない野菜もあり、より農家の人をリスペクトしたことを語った。そして、コロナ禍でテレビで見たOfficial髭男dismのライブ活動に感化され、逆に自分は大丈夫なのかと不安もあったという。その不安な気持ちと自分が育てた野菜の姿が重なり、育てていくうちに自分の中で答えが出たときに生まれたとエピソードを話した。エプロンを身につけ、エネルギッシュな歌を披露。カワムラは歪んだエレキギターで彩り、ロックなサウンドが印象的だった。

 ライブもラストスパート。再び市原ひかりが参加。披露されたのは代表曲の「YAMABIKO」で会場のテンションは最高潮に。NakamuraEmiは稲を掲げ、力強く歌い上げるパフォーマンスに大きな拍手が送られた。

(撮影=古賀恒雄)

 「ここからまた新しいことに挑戦して、いろんなステージを見せられるように頑張りたい。元気に会える日を願って」と想いを告げ、本編ラストは「投げキッス」を歌唱。パンデミックという混沌とした世界の中で生まれた楽曲だ。未来への希望をメロディに乗せ、カワムラのサイケデリックなギターソロもインパクトがあった。観客もこの迫真の歌と演奏を浴びるように聴き入っていた。

 アンコールでは、アルバム『Momi』のCDとアナログ盤のみに収録されているシークレットトラック「ファンレター」を歌唱。この曲は音源でも生音で一発録りされたリアルな曲。このライブでも、マイクを通さずカワムラのアコースティックギターの伴奏をバックに生声で届けた。そして、ラストは「相棒」をフルバンドで演奏。この曲のアウトロで風に吹かれる稲穂のようにスマホのライトの光が客席で揺れるなか、大団円を迎えた。「来てくれた皆様ありがとうございました。また会いましょう」と、感謝を告げツアーの幕は閉じた。

(撮影=古賀恒雄)

 小媒体のインタビューで「自由に楽しく作れた」と、制作時の想いを語ってくれたが、ライブでもそれを強く感じさせてくれた。優しさと希望に溢れた一夜で、確実にアーティスト、シンガーとして次のフェーズに入ったと思わせてくれるNakamuraEmiの姿がここにあった。このツアーを経て、生まれるだろう新たな曲にも期待が高まった。

(撮影=古賀恒雄)

▽セットリスト

『Momi Release Tour 2021』@東京・Zepp Haneda

01.BEST
02.大人の言うことを聞け
03.使命
04.東京タワー
05.drop by drop
06.スケボーマン
07.1の次は
08.ご飯はかために炊く
09.一服
10.私の仕事
11.畑
12.いただきます
13.YAMABIKO
14.投げキッス

EN1.ファンレター
EN2.相棒

BAND MEMBER:

Vo,NakamuraEmi
Gt,カワムラヒロシ
Ba,片野吾朗
MPC,熊井吾郎
Pf,千葉岳洋
Per,大塚雄士
Tp,市原ひかり

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