イトヲカシツアーファイナルに集った観客

イトヲカシツアーファイナルに集った観客

メジャーデビューすることを発表

 曲が終わると、フロアから大きな拍手が鳴り響いた。拍手が次第にフェードアウトしていくと、暫しの静寂が訪れ、そこから、幻想的なエレクトリック・ピアノの温かい音色が会場を包み込む。伊東の体の奥底から溢れだす声と言葉の持つ力に、ステージから一瞬たりとも目を反らすことができない、それほど惹きつけられた時間だった。

「Share, We are」のイントロが流れる中、その瞬間は訪れた。楽曲が一旦ブレイクし宮田より「イトヲカシ、メジャーデビューが決まりました!」と突然の発表。その瞬間、会場は大歓声に包まれた。衝撃的な発表に涙を流すファンたち。その光景に伊東は「こんなに喜んでくれるとは思わなかったよ」と驚きを隠せずにいた。この発表によって会場はえも言われぬ一体感が生まれ、ラストの“ラララ”のシンガロング(Sing Along)も、盛大に響き渡っていた。

 宮田が「でもメジャーデビューなんてどうでもいいんだよ」と叫んで始めたのは「Never say Never」。伊東もギターを抱えてバンドサウンドに更に厚みを加えていく。MCでも語った「一生懸命頑張って音楽をやっていきたい」という言葉を具現化していくように、その姿勢がステージから放たれ、オーディエンスの心を更に一つにしていく。

 後半戦は、「ブルースプリングティーン」、「ホシアイ」とアッパーチューンを立て続けに披露していく。伊東が「歌って!!」と投げかけるとフロアから今日一番の大きなシンガロングが会場を包み込んでいった。本編ラストは「Thank you so much!!」。サビではフロアで揺れる650人分のペンライトが鮮やかに光放った。まさに絶景と言える一体感あふれる空間を作り出し、本編を終了した。

メジャーデビューはゴールじゃない

 アンコールを求める手拍子とコールが鳴り響く。再びステージに戻ってきた2人は、メンバー紹介を兼ね、サポートメンバーを一人ずつステージに呼び込む。「俺たちは本編で命を燃やし尽くすことにしてるんだけど、アンコールをもらうと生き返っちゃうんだよね。まだまだいけるか〜!?」と元気いっぱいにオーディエンスを煽っていく。

 アンコール1曲目は「START」。今、ライブが始まったかのような勢いと盛り上がりを観せた。ここで、今回のツアーの地方公演で、参加してくれたバンドメンバーを招き入れ、夏フェスに向けて作ったという新曲「Summer Lover」を披露。ベイ・シティ・ローラーズを彷彿とさせる、アルファベットのコーラスが印象的に響くキャッチーなナンバーで、新曲とは思えないほど、オーディエンスもタオルを回しノリノリ。曲が終わると、バンドメンバーがステージを去り、イトヲカシの2人きりに。ここで、8月から路上ツアーをおこなうことを発表し、「メジャーに行くからって、俺たちは何も変わらないからな!」とファンに向かって叫んだ。

 宮田がキーボードの前に座り、ピアノの音色でフレーズを奏でる。始まったのは感謝の気持ち込めて作ったという「You」。バラードナンバーを丁寧に、全身全霊で歌い上げていく。儚くも情熱的な歌声に会場は酔いしれた。会場からはその感謝の気持ちに共鳴したかのように、すすり泣く音が響き渡っていた。

 「メジャーデビューはゴールじゃない。多くのアーティストが目指す高い山みたいなものだと思う。俺たちはまだ登り始めたばかり、どのステージも変わらない。みんなが楽しんでくれたなら、それが幸せな時間。幸せな時間を貰ったなら感謝をしなければいけないし、自然と感情に出てしまう」と声をからしながら「You」を歌う前に伊東が話した。

 まさに、その感情がすべての曲にあふれ出た、記憶に残るライブであった。小細工なしの己をさらけ出したステージは、観たものすべての心に突き刺さる。思考を使わなくても、シンプルに“感じる”ことが出来た。この先「変わらないという進化」をモットーに、さらに成長していくであろう彼らが、どのような音楽を奏でていくのか、期待感が高まらざるを得ないライブであった。(取材・村上順一)

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