会場にいた5万5千人の観客の心を一つになっていた

会場にいた5万5千人の観客の心を一つになっていた

見たこともない東京ドームの熱気

 開演10分前。いつもそうだが、どこからともなく拍手と歓声が上がる。その音を伝ってドーム全体に広がる。跳ね返る大きな歓声を受けて再び高揚する。ジェットコースターが頂点に達して一機に降下を始めようとするように観客の心はドキドキ感に溢れている。そんな時に明かりが落とされる。ステージ両脇にある解像度の高いスクリーンに映像が流れる。これまでのツアーを振り返る。

 フラッシュバックする映像。程なくイントロが鳴り響く。眩い程の光を背に浴びた氷室京介が「行くぜ!東京」と叫び歌う。「Dreamin'」。手や足の先までも鳥肌が立とうとするなかで大歓声をもって迎える観客。興奮に満ちていた。

 この日の本編セットリストは大阪公演にほぼ準じていた。「Dreamin'」から始まり、「BLUE VACATION」と続く。繊細なギターサウンドが誘い、彼の軌跡を辿るようにBOØWY時代の楽曲が立て続けに送られる。それに対する超満員5万5000人の歓声。あの光景は後にも先にもないだろうと思うほどの光景だった。

 それに対する氷室のソロ楽曲の迫力は凄まじいものがあった。2004年に東京ドームでおこなった『KYOSUKE HIMURO “21st Century Boowys VS HIMURO”』とは比べものにならないほどの盛り上がりだった。

無限の広がり

 壮大なストリングスがドームを包み込んだ「IF YOU WANT」、ライブ前におこなわれたリクエストで1位だった人気曲「LOVER’S DAY」。本ツアー要所で届けてきた楽曲たち。圧巻の世界観にそれまで騒いでいた観客は心を奪われたように聴き酔いしれた。力強い歌唱からのファルセット。魂を込め届けられる楽曲。時を重ねて深みを増していく2つのバラード曲はまさに圧巻だった。

 また、このツアーではパフォーマンスも優ることながら、ライティングの演出も幻想的だった。特に先の「LOVER’S DAY」では、ステージの支柱から天井までを無数の青い光が照し、イントロの音色と相まってディープブルーに染まる森の中の湖に浸るような感覚で、空間の無限の広がりをあじわった。

 一方、「PARACHUTE」からの「BANG THE BEAT」「WARRIORS」「NATIVE STRANGER」といったソロ楽曲は、言葉で表現できないほどのグルーヴに満ちていた。アップピッキングの跳ねたギター演奏に、Charlie Paxsonの胸を打つ迫力のドラム、西山の激しくも繊細なベース。加えて、ギターにユニゾンする大島の独特のキーボードサウンドは楽曲に華やかさと気品を持たせた。

 BOØWYの『LAST GIGS』でも印象的だった「PLASTIC BOMB」の盛り上がりは尋常ではなかった。曲を終えた後の達成感に浸るなかで迎える「WILD AT NIGHT」や「WILD ROMANCE」は超絶だった。ステージ正面から上がる炎も盛り上げに一役を買った。最高潮のボルテージのなかで最後は幾度となくライブで披露されてきたであろう、「25年間歩み続けてきた」というソロデビューシングルの「ANGEL」で本編の幕を閉じた。

まさかのダブルアンコール

 当然、アンコールは鳴りやまない。大歓声のなかで再登場した氷室は「毎回毎回違うコンディションの俺を支えてくれるメンバーを紹介します」と言って、バンドメンバーをエピソードを交えて紹介していく。福岡公演の際には、氷室とYTのユニット、GOSPELS OF JUDASにTesseyが参加することも紹介。「応援を宜しく」と兄貴肌をみせた。そして、全公演で歌い捧げた、作家・森雪之丞と作った「The Sun Also Rises」を披露した。

 それに続くのは、福岡公演で初披露する予定だったであろう「魂を抱いてくれ」。この楽曲は東京公演から披露している。DAITAのエンディングでのロングギターソロ。ギターが泣き叫ぶような感情を叩きつけたフレーズは聴くものを魅了した。その流れを受けて「IN THE NUDE~Even not in the mood」からの「JELOUSYを眠らせて」。青春が蘇る。アンコールは最初から最後まで、曲が終わるごとに「終わらないでくれ」と念が強くなる。アンコール最後は「NO.NEW YORK」。BOØWY時代の『LAST GIGS』に時を重ねて声を張った。

 マイクを置いた瞬間に「もう終わり」だと思った――。ダブルアンコールに応えての「VIRGIN BEAT」と「KISS ME」、「ROXY」。そして「SUMMER GAME」。考える余裕すら与えずに、あっという間に時が過ぎていく。美しいシンセサイザーのイントロで始まる「VIRGIN BEAT」、ソリッドなYTのギターカッティングが印象的に響く「KISS ME」、ギターのピックスクラッチが高揚感を高めた「SUMMER GAME」。いずれもヒット曲で相反するイントロだが、緩やかな曲線を描くドームに轟いた。

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