運命とは何か、LAMP IN TERREN「亜人」テーマ曲で出した答え
INTERVIEW

運命とは何か、LAMP IN TERREN「亜人」テーマ曲で出した答え


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年05月12日

読了時間:約18分

『亜人』を読んで“運命”という言葉が思い浮かんだ

――1stシングル「innocence/キャラバン」がリリースされますが、久しぶりに4人でレコーディングされてみてどうでしたか。

松本大 いつもとやることは変わらないんで、印象も普段と変わらなかったかな。

――レコーディングをしてみて感じたことはありましたか。

中原健仁 レコーディング自体はいつもの感じだったんですけど、今回収録されているどの曲も、感情を入れやすかったですね。憎しみや、前に進んでいく明るさとか、景色を思い浮かべながら弾くというところが、凄く出たんじゃないかな。そういう感情すらも落とし込めたというか。

――「innocence」は劇場アニメ3部作『亜人』の第2部『亜人 -衝突-』の主題歌ですが、原作を読まれてどこに比重を置いて制作されたのでしょうか。

松本大 作品はあまり読まない方がいいと思って、1回だけ読んだだけなんです。その時に“運命”という言葉がパッと浮かんできたんです。『亜人』というよりも“運命”の定義について、凄く考えていました。その言葉が存在している限りは勝ち目がないなと思ったんです。何を選んでも後付けで“運命”がやってくるというか。生まれた瞬間に終わりが来るという“運命”が用意されていて、すべてそのレールの上なのかもしれないとか、生と死など哲学的なことを考えて言葉になっていった感じなんです。

――今年の1月24日に歌詞が書けないという内容のブログを公開されてましたが、それは「innocence」のことですか。

松本大 そうです。これは去年の5月からずっと書けなかったんです。もう無限回廊の中にいましたね。

――無限回廊から脱出できたのはつい最近ということですか。

松本大 あのブログの直後に歌詞が完成しました。本当に直後。大変でしたね。もうあの経験はしたくないです(笑)

――でも、そこで敢えて原作を読み返さずに、テーマに実直に向き合ったのは凄いですね。普通は何度も読み返してしまいそうですが。

松本大 多分原作に寄せると、程度の低いものになるんじゃないかなと思ったんです。意識が音楽以外のところに向くのは、作り手としては良くないなと思ったんです。僕は今後、タイアップのお話を頂いても、こういう感じの作り方になると思うんです。だけど作品にリスペクトがなくて曲を作るということは絶対ないので、今回も作品の核からは外れてないと思うんですけど、作品に寄せようという考え方ではないんです。寄せないから共存出来るものが作れんじゃないかな。

――歌詞はメンバーの皆さんから意見をもらうこともあるんですか。

中原健仁 何も言えないですね。

一同 (笑)

中原健仁 どういう流れで書いているのか見せてはもらうんですけど、それに意見を言ったところで、それは僕の意見であって、(松本)大の言葉じゃないという時点で「意見を言うのもなあ」という感じなんです。一緒に共有して作っていくパターンの曲なら、意見を出す可能性もあるとは思うんですけど、この「innocence」に関しては「突き詰めて欲しいな」という気持ちの方が強かったですね。

松本大 ソングライティングをするということは自分の担当なんで、そこは全力で自分が向き合っていくべきだと思っています。

――サウンド面について伺いたいと思います。「innocence」はピアノが全面に押し出されている印象が強いのですが、LAMP IN TERRENでは珍しい気がしたのですが。

松本大 そうですね、あんまりやったことないですね。

――このピアノは松本さんが弾かれているのですか。

松本大 独学ですが僕が弾いてます。ピアノで曲を作ることがあってその延長線ですね。

――ピアノで作曲は頻繁にやるんですか。

松本大 ピアノで作った曲は、前のアルバムだと「王様のひとり芝居」があって、ピアノのフレーズからギターに置き換えて演奏したりとかはありましたね。

――「innocence」もピアノから作曲していった?

松本大 曲自体はギターの弾き語りで作ったんですけど、アレンジ作業でバンドの音を作っている時に、最初からピアノの音が鳴っていて「あっ! ピアノだ」と思って、そういう経緯でピアノが入りました。

――今回、サウンドの重心が下がったなと思ったのですが、何か手法を変えたのでしょうか。以前はドラムとベースが良い意味で分離していて、今回はドラムとベースが塊となっているイメージに感じたのですが。

中原健仁 レコーディングエンジニアさんとの話の中でも(ベースとドラム)をどちらを下の帯域に持ってくるか、「ベースを下にした方が気持ちいいよね」という話があって、曲調が自然とそうさせたんですよ。

松本大 マスタリングでも重心低めに作ってもらったというのもありますね。

――マスタリングは立ち合いはされたのですか。

松本大 今回は海外のトム・ヤングという方にお願いしたので、立ち合いはしてないですね。

――歌も前作と比べると洗練された感じが受け取れました。感情の叩きつけ方が変わったというか。

松本大 技術面は意識はしてないですけどね。おそらく(川口)大喜や(中原)健仁の込めてきたリズム隊の感情に押し出されるように歌を歌っていただけなんですよ。

――もしかしてボーカルはファーストテイクですか。

松本大 どうですかね。僕は歌録りに1時間掛からないんですよ。テイク4ぐらいまでしか録らないので。

――その中からベストテイクを選ぶということは、もしかしたらファーストテイクで構成されている可能性もありますね。ちなみにファーストテイクとか意識はしてるんですか。

松本大 意識は全然しないですね。鳴っているものに溶け込める、自然体で入れる歌をいつも歌っています。

――楽器のレコーディングはみなさん同時に録るんですか。

中原健仁 ガイド的なものは一緒に録るんですけど、本番のテイクはドラムとベースが一緒に録って、その後に今回はピアノを先に入れてからギター、最後に歌を重ねていきましたね。

――どの曲もその順番で入れていくのでしょうか。

中原健仁 「とある木洩れ陽より」はドラムとベースをバラバラに録っています。

松本大 基本的な流れはそんな感じですね。既に録ってあって、まだリリースされていない曲もあるんですけど、その曲はシンセサイザーありきで、そこにバンドが合わせていく手法をで録った特別な作品もありますね。

――「innocence」もシンセサイザーが入っていたり、サビの入り方のパターンが全部違っていて面白いですね。

松本大 その瞬間に合うものを選択していっただけなんですけどね。最後のサビ前のトレモロ的なフィルターの掛かったパートは頑として「俺はこれが絶対合うと思う」とギターを弾きながらエンジニアと相談して「これを揺らしまくって」みたいなやり取りをしてましたね。

――あれはシンセじゃなくてギターだったんですね。

松本大 ギターなんですよ。名前忘れちゃったんですけど定位を振るパンニングエフェクトがあって、すごい回転数で飛んでるみたいな感覚で「ほらやっぱりこれでしょ!」と(笑)

――これはライブでも生で再現出来るんですか。

松本大 試行錯誤中なんですけど、無理だったので今は同期で流れています。

――では4人になっても同期は使用しながらライブはおこなっていくんですね。ドラマーからの観点だと同期の使用はどうですか。

川口大喜 同期については(好みは)結構分かれますよね。僕は同期が大好きな人間なんで、アリなんですけど、緊張感は人一倍ありますよね。クリック(編注=メトロノームのガイド音)に合わせるのは好きじゃないけど、同期は好きです。効果音が入ることで映える曲もありますからね。

――そういえば以前、同期のライフラインとも言えるイヤモニ(編注=イヤーモニター)を忘れたとブログに書いてましたね。

川口大喜 忘れたことありましたね。その時はなんとかなったんですけど(笑)。本番前にステージについてドラムセットの前に座ったらイヤモニがないことに気づいて、急いで楽屋に戻って(笑)

――川口さんはライブ中、クリックを聞いているようには見えないですね。

川口大喜 最近変わったのはクリックを聞いているという感覚はあまりないですね。もちろん鳴ってはいるんですけど、体が慣れてくるとクリックに合わせて必死にやっているというよりは「融通の利かない奴がいる」みたいな感じですね。前と今では自分とクリックとの立場が逆になりましたね。

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