4人組ロックバンドのLAMP IN TERRENが13日、東京・日本青年館で15th Anniversary ONE-MAN LIVE『Branch』を行った。結成15周年を記念したバンド初のホールワンマンライブで、新曲の「ニューワールド・ガイダンス」や「innocence」など、アンコール含め全20曲をパフォーマンス。9月に川口大喜(Dr)が年内でバンドを脱退することを発表しているため、4人での貴重なホールワンマンとなった。音だけではなくショーとしての完成度も高かったこのライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

新曲「ニューワールド・ガイダンス」でスタート

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 LAMP IN TERREN初のホールワンマンで、川口大喜の脱退まで数少ない貴重なライブだ。ステージは真っ白な世界、階段状のセットが背後に組まれている。BGMにはラヴェルの「ボレロ」。彼らは近年、クラシックを開演前に流すことが恒例となっている。「ボレロ」の勇ましいサウンドかライブへの高揚感を高めてくれる。開演時間が迫るなかダイナミックに音がクレシェンドしていき、会場は暗転。盛大な拍手が送られる中、メンバーがステージに登場した。

松本大(撮影=浜野カズシ)

 スポットライトがステージのセンターを照らすなか、最後に松本大(Vo.Gt.Key)がゆっくりとスタンバイ。大屋真太郎(Gt)の切ないギターアルペジオが印象的な新曲「ニューワールド・ガイダンス」で幕は開けた。白い空間で音を奏でる4人。松本はハンドマイクでステージを自由に動きながら熱い歌声を響かせる。一曲目からクライマックスのような雰囲気もある瞬間だった。

 MCに続いて届けられた「innocence」は、LAMP IN TERRENの曲の中でもアップチューンで、ライブでも盛り上がる代表曲の一つ。彼らの激しい曲は単純に身体を揺らすだけではなく、心の芯に響いてくるものがある。赤く染まるステージが視覚的にもインパクトは絶大。そして、「heartbeat」へと紡がれていく。緩急をつけたセットリストで感情を揺さぶりかける。

大屋真太郎(撮影=浜野カズシ)

 サウンドトラブルもあったが、松本は「(会場が)大きくなるとこういうこともあるんだな」とぽつり。そんなホールの洗礼を受けながらも届けられた「緑閃光」は、トラブルをも好転させるバンドのスキルを感じさせるパフォーマンスだった。生のライブには何が起きるかわからない、キャリアがものいう部分もある。多くのライブを経験してきたことが、こういったところにも滲み出ていた。

 「Water Lily」、「心身二元論」、「花と詩人」を歌唱。このセクションはLAMP IN TERRENのコアな一面を覗かせる。哲学的な要素やメッセージ性の強さ、松本のソングライティングの本質が詰め込まれている楽曲たち。「花と詩人」では、階段状のセットに設置されたキーボードまで松本が移動し、立体的な空間で届けていたのも印象的。今のLAMP IN TERRENの世界観、オリジナリティを感じさせてくれたセクションだった。

「俺がここにいる証」

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 後半戦に行く前のMCでは、初のホールワンマンが開催できたことの喜びが溢れていた。そして、演奏している時とは違ったメンバーのお茶目な一面もあり、ギャップを楽しませてくれる。そんなMCに続いて届けられた「BABY STEP」は劇的なイントロからの熱の入った歌でオーディエンスを魅了。気持ちの入った川口の迫真のドラミングも会場の隅々まで響き渡っていた。途中で松本がオフマイクでアカペラで歌唱するシーンは、ゾクっとさせるものがあり、会場が大きくなればなるほど、進化していく楽曲だと感じた。

川口大喜(撮影=浜野カズシ)

 「月のこどもたち」では階段状のセットの上で寝そべり、空を見上げるように寝そべって歌唱する松本。自分たちは太陽ではなく、照らされ光る月。自分たちとファン、お互いがいてこその自分たちだというメッセージを切に歌い上げる。「Fragile」に続いて披露された「New Clothes」では4人のグルーヴを叩きつける。ハードなだけではない、身体と脳に4人の紡ぎ出す音が染み込んでいくような瞬間の連続だった。

 そして、開放感を感じさせた「涙星群の夜」、ライブで更なる真価を発揮する「地球儀」と、アップチューンを間髪いれずに披露。クラップも自然発生し、身体を弾ませ楽しむオーディエンスの姿。松本は「今日は15年やってきたご褒美」と、楽しそうにステージを駆け巡る。中原健仁(Ba)のメロディアスなベースラインも聴きどころの「multiverse」で、ライブならではの一体感を作り上げ、ホールではあるがライブハウスのようにも感じさせてくれた。

中原健仁(撮影=浜野カズシ)

 松本はこの15年を振り返り、自分がやってきたことの正当性を問う。生きていることの証、正しかったかどうかは誰もわからない、それを決めるのは自分で、だから死に物狂いで今日も歌っている、と想いを語った。「俺がここにいる証」だと投げかけ、本編最後は「EYE」を届けた。全身全霊のパフォーマンスは、ここで燃え尽きてしまうのでは無いかと感じさせるほどのパフォーマンス。ロックバンドをやる意義、歌う意味をぶつけているようだった。

 アンコールでは、この曲を歌おうと思っていたという「メイ」を披露。自分を証明してくれるのは、ここにいる人たちがいるから、そんなメッセージが楽曲を通して伝わってくる。それは、本編のMCで松本が話した内容にも繋がっていた。約6年前にリリースされた曲だが、真理というものは何年経っても変わらないんだ、と痛感させられた瞬間でもあった。

 松本は「温かい気持ちになって帰って欲しい」と伝え、優しさが詰まった新曲「カームダウン」を披露。声を張らなくても歌えるメロディを考えたと話していたように、レイドバックしたメロディが心地よいナンバーで、ワンマンライブ『Branch』を締めくくった。

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 12月28日にLIQUIDROOM Ebisuで、川口ラストライブとなる『A Dream Of Dreams』を開催。8日にワンマンと同タイトルの『A Dream Of Dreams』EPを配信リリースすることも決定している。この4人でのステージも残りわずか、4人での証を残すためにどんな姿を見せてくれるのか、期待と寂しさが入り混じるという不思議な気持ちだ。

セットリスト

15th Anniversary ONE-MAN LIVE『Branch』

11月13日@日本青年館

01.ニューワールド・ガイダンス
02.Enchante(eはアキュート・アクセント付)
03.ランデヴー
04.innocence
05.heartbeat
06.緑閃光
07.Water Lily
08.心身二元論
09.花と詩人
10.BABY STEP
11.風と船
12.月のこどもたち
13.Fragile
14.New Clothes
15.涙星群の夜
16.地球儀
17.multiverse
18.EYE

ENCORE

EN1.メイ
EN2.カームダウン

<作品概要>

タイトル:「A Dream Of Dreams」
配信日:2021年12月8日(水)0:00〜
収録曲:
M1 カームダウン ※11月22日(月)21:00全国ラジオ局にて一斉解禁
M2 心身二元論
M3 ニューワールド・ガイダンス

<公演概要>

LAMP IN TERREN One-Man Live 2021
「A Dream Of Dreams」

12月28日(火) 東京LIQUIDROOM ebisu
OPEN:18:00 / START:19:00
※開催時間は全て予定。新型コロナウイルス感染拡大状況によって変更となる可能性があります。

TICKET:前売4,500円(税込/別途要1ドリンク代)/当日券未定

<ARTIST INFO.>

2006年、長崎県で結成。
ラテン語の「terra(星、大地)」を捩った造語であるこのバンド名には、「この世の微かな光」という意味が込められている。
2013年12月、オーディションプロジェクトMASH A&Rの「MASH FIGHT Vol.2」とRO69が主催するコンテスト「RO69JACK」で共にグランプリを獲得。
2015年1月A-Sketchよりメジャーデビュー。
2018年1月より、毎月26日に渋谷Star loungeにて200名限定の定期公演ワンマンライブ『SEARCH』をスタート。LAMP IN TERRENの"実験室"と位置づけられた定期公演では毎月メンバーのチャレンジが繰り広げている。
最新作はコロナ禍において制作された2020年10月リリースのアルバム「FRAGILE」。それを提げて2020年秋には全国20公演のワンマンツアーを感染予防対策を行なった上で回るなど、時世に合わせて積極的に音楽活動を行なっている。
松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。LAMP IN TERRENは聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団です。
最新曲は9月1日にデジタルリリースとなった「ニューワールドガイダンス」

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