GReeeeNにとって音楽とは、歯科医師と並行して活動を続ける理由
GReeeeNの誕生
HIDE、navi(ナビ)、92(クニ)、SOH(ソウ)という4人が福島県の郡山で歯学部生として出会って、GReeeeNが結成されるに至るまでには軌跡がある。HIDEは幼少期から憧れた坂本龍馬の出身地である、高知の『坂本義塾』で多感な10代を過ごした。その地でバンドを組み、高校生で高知のライブハウスを満員にした伝説まで残している。
東京の予備校に行くことになったHIDEは音楽から、今度はファッションにのめり込み、一時はその道に進もうと決意する。しかし、父親の落胆ぶりを母親から電話でを告げられる。息子2人とも、自分がずっと誇ってきた医師への道を諦めたことで、普段は弱さなど微塵も見せない父親が、目に見えて気落ちしているその様子を思い浮かべたHIDEは、郡山の歯科大を受ける。そこにはnaviがいた。同じ郡山に移り住んで、同じクラスとなった彼らは互いの共通の趣味である音楽に再び夢中となる。
これからの未来
HIDEのように、メンバーそれぞれにもGReeeeN誕生までのエピソードがある。そして、naviも92もSOHも、HIDEに出会うまでは何となく生きていた。一生懸命に楽しんで生きているHIDEという存在は、とても眩しく見えていたに違いない。しかし、そんなHIDEの人生を輝かせたのはこのメンバーとの出会いであり、一緒に活動してきたGReeeeNという存在である。
現在は、メンバー全員が無事に歯科医師の国家試験に受かり、それぞれの地で歯科医師として従事している。そのなかでHIDEは東日本大震災を福島・郡山で被災した。未曽有の震災で一度は失いかけた音楽だが、HIDEはこの本のエピローグにこう綴っている。「今日もまた新しいメロディが唇からこぼれている。この曲を、GReeeeNの歌をたくさんの人に届けたい」。
冒頭に述べた、素性を隠してきたのか、なぜ歯科医師と並行して活動続けるのか――、この疑問は本文にも触れたように必然的なことであった。そして、彼らはその行為によって、ビジュアルではなく本来有する音楽の力を示し続けている。キャッチーでメロディアスでステキ……。その先にある音楽の核、更に言えばそれぞれの人生に向き合うことができる音楽の偉大さを伝えているのではなかろうか。
彼らもまたそれぞれの人生を歩んでいる。同書にはこれまでの歩みが詳細に描かれているが、彼らは現在進行形で今も目に見てきたもの、手に触れてきたもの、交わした言葉の数々などを音楽に刻み、そして発信し続けている。それは、人生の道しるべとなるソングラインとも言える。彼らの音楽は常に、ビジュアル云々を通り越してその心に触れているのである。(文・松尾模糊)
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