在日ファンク、ひな祭りに新曲披露 一足早い“ファンクの春”

ステージに座り込むハマケン(撮影・高田梓)
【ライブレポート】7人組ファンクバンドの在日ファンクが3日、東京・渋谷TSUTAYA O-EASTで全国ツアー『メジャー2ndアルバム中間完成報告確認ツアー』の初日公演を行った。在日ファンクは“ハマケン”こと、浜野謙太を中心に2007年に結成。2014年に『笑うな』でメジャーデビュー。今回のツアー名からも伺えるように新曲を含む全16曲を披露。平日の夜にも関わらず、詰めかけた多くの観客は、ファンキーな夜に酔いしれた。
舞台は村上啓太(ba)のベースソロからスタート。順に仰木亮彦(gt)のギター、永田真毅(dr)のドラム、ジェントル久保田(tb)、村上基(tp)、後関好宏(sa)の管楽器が加わり、最後にハマケンがリーゼントに黒いジャケット、白いシャツに赤いネクタイ、赤いパンツという出で立ちで登場。観客は拍手と歓声で出迎えた。
一曲目を終え、「断固すいません」を演奏。ハマケンが「断固すいませーん」と拳を上げ、コール。観客も拳を振り上げレスポンスを返す。
「サンキュー、ウィーアー、在日ファンク」というハマケンの一言から舞台はMCへ。
「長い名前のライブですいません、最近はでも、色々ありますよね、長い名前の。」と長すぎるツアー名を謝罪。アーカイブでの楽曲配信を揶揄しながらも、「過去の曲を聴いて、七人全員がやりたいと思った曲があります」と話すと「ホームシック」を演奏。仰木のギターソロからテンポアップすると、ハマケンが「手拍子下さい!」と観客を煽る。それに満員の観客が応え、会場は手拍子に包まれた。
バンドは畳み掛けるように、仰木のギターカッティングからはじまる「京都」を演奏。この日はひな祭り、仰木が「灯りをつけましょ」とコール、ハマケンと観客が「ぼんぼりに」と返す。ライブは前半から一体感が高まる。
「ひな祭りって、性別関係ないらしいよ。女の子の祭典じゃなくって、男の子も祝っていいんだって。ラジオで言ってた」。先ほどの“ひな祭りコール”に関連して、ハマケンがラジオで得た豆知識をMCで披露。ここで舞台が暗転、両際にあるスクリーンに突如映像が流れ始める。
そして、2ndメジャーアルバムのタイトルが『レインボー』に決定したことがアナウンスされると、ハマケンが「ポップ全開の曲を作りました」とコメントする模様が流され、観客は歓声に沸く。
そして、バンドは早速新曲を披露。「ぽいぽい」は「明日できる、やればできる、きっとできるさ 」というポジティブな歌詞をアップテンポのサウンドに乗せた、在日ファンクらしからぬアッパーソング。後関によるステージを闊歩しながらのサックスソロに、ハマケンがスタンドマイクを向けて付いて回り、演奏を盛り上げる。続けざまに「ぬるま湯ファンク」。一転、こちらはミドルテンポのシックなサウンドに東洋風のメロディを乗せた、聴かせる一曲。
再び暗転した舞台に青い照明が怪しく光り、リバーブのかかったギターの音とゆったりとしたリズムが刻まれ、バンドは「嘘」を演奏。ジャジーなサウンドに、ハマケンが切ない歌詞を叙情的に歌い上げる。
いよいよライブも終盤に差し掛かるが、『笑うな』からのリード楽曲、「根にもってます」の演奏が始まると、観客のボルテージは最高潮に。ハマケンの「強く」というパートで観客は拳をあげる。ハマケンはスタンドマイクを持ちながらステージを駆け回る。
ここでハマケンの革靴の靴底が剥がれるハプニング。客席からは何故か「かわいい~」という黄色い声。ハマケンも笑いながら「しゃべりそうだよね」と応え、剥がれた靴底をひらひらさせながら「ハガレチャッタヨー」と腹話術をして戯ける。
「アルバムのタイトルは、グランドキャニオンかレインボーの二つが最終案だったんだよね。“レインボー”って言ったら、みんな爆笑したんで、レインボーにしました。明るい言葉はいいね、みんなの顔がぱあってなる」とハマケンがニューアルバムのタイトルについて秘話を述べたところで、いよいよ最後の曲、新曲の「それぞれのうた」を演奏。曲名通り、最後にそれぞれのソロを披露しながらメンバー紹介 。「今日はありがとう。在日ファンクでした」とハマケンが締めて大喝采のなかメンバーはステージを去った。

後関にマイクを向けるハマケン(撮影・高田梓)
暗転した会場だが、客席から鳴り止まない拍手はやがて手拍子となり、貪欲に在日ファンクの音をまだまだ求める。そして、ハマケンを除くメンバーが再び登場。ジェントルが、公式ページで虫喰いになって明かされていなかったアルバムタイトルを「ずっと、“ボインマン”だと思っていた」と明かし、会場は笑いに包まれた。
遅れて、テープで剥がれた靴底をとめていた、ハマケンが登場。「1stアルバムの一曲目やります! 一曲目はイントロだけど(笑)次の曲!」と叫び、在日ファンクの『ZAINICHI FUNK』から「最北端」を演奏。ハマケンが歌う「なーなななーなー」のメロディに観客は手扇子で一体となる。途中、ジェントルのトロンボーンソロが光り、ハマケンも“ハマケンダンス”で応酬。「じゃあみんな歌おう!」とハマケンが誘い、会場中が「なーなななーなー」の大合唱に。最後の最後まで熱気に覆われたままこの日の公演を終えた。
新作の完成度は高く、ハマケンの語るように“ポップ”ながら、身体が自然に揺れる在日ファンク特有のグルーヴを保った、聴かせるポジティブ全開な曲ばかり。これから始まるツアーでも、全国を在日ファンクのグルーヴで満たし、一足早い“ファンクの春”前線をもたらしてくれるだろう。(取材・松尾模糊)
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