在日ファンク(撮影・高田梓)

在日ファンク(撮影・高田梓)

 浜野謙太率いる在日ファンクが今夏、東京・恵比寿LIQUIDROOMで『自主企画「ば」vol.2』を開催した。5月16日に大盛況をもって無事終了した『「ぜいたく」発売記念わからんツアー』。それから3カ月後に自主企画イベントとして再び同所のステージに立った。スペシャルゲストにはDJユニット「OL Killer」を招き、新時代ディープファンクバンドの有り様を見せた。ミュージックヴォイスでは、ファンク帝王「ジェイムズ・ブラウン」から流れを汲む日本屈指のファンク・グループ“在日ファンク”が炸裂させた8月26日のLIQUIDROOMでのライヴステージの模様を以下にレポートする。  【取材・平吉賢治】

振る舞い酒で在日ファンク企画イベントスタート

 会場前、ウェルカムドリンクを振る舞うメンバーを中心に、老若男女幅広い層のオーディエンスがフロントに集い、今回の企画イベントを祝して盛大に乾杯。開演前からすでにLIQUIDROOMの雰囲気は充分な熱気に溢れている。ステージでは早々にDJプレイを始めている「OL Killer」。スーツ姿のDJ WILDPARTY、ホワイトタイガーらは、ハウスを中心としたエレクトロビートを鳴らし、徐々にフロアを埋め尽くしてゆくオーディエンスを序盤から存分に踊らせる。抜群のPA環境、色とりどりのコントラスト照明、瞬くフラッシュと共にLIQUIDROOMの一体感をエレクトロサウンドと共に創り上げる。

 次第に強烈になっていくシンセサイザーサウンドとサブベースの重低音。サンプリングヴォイスと絶妙に絡み合うハウスビートは徐々にLIQUIDROOM内のボルテージを上げていく。そしてフロアはオーディエンスで縦横無尽に埋め尽くされ、キャパシティオーバー寸前の満員御礼状態。

ハウス、ディスコファンクで魅せるOL Killer

在日ファンク(撮影・高田梓)

在日ファンク(撮影・高田梓)

 近代的なハウスからふいに転換した太鼓出囃子のリズム。日本人なら誰もが馴染みのある“東京音頭”と絡み合うエレクトロビート、DJの鮮やかな手つきが映えるダブ・アプローチ。伝統のジャパニーズ・ビートからスラッピング・ベースループの展開に、明らかな熱気上昇を感じる。そこから間髪入れずにDJブースに乗り入れた「DJ トイプードル」がヴォーカルで煽り倒し、格段に盛り上がってくるフロアとのコール&レスポンス。手元でプレイしつつも鮮やか過ぎるダンスを魅せ、この時点で会場の熱気は相当なものだ。あまりにキレキレのダンスに四方から歓声が飛び交う。

 ギターカッティングのトラックやドライなピアノのループが刻まれ、ファンク色の濃いディスコファンク的な展開に、LIQUIDROOMフロア中央上部に象徴的に鎮座するミラーボールが華やかに乱反射する。うねる様な効果のサイドチェインコンプを強烈にかましたEDMサウンドがここからノンストップで鳴り響き、会場の音圧は右肩上がりに上昇。そしてDJプレイを終えたOL Killerの丁寧な挨拶に会場は温かい空気に。

在日ファンクのライヴスタート

 浜野謙太(Vo)のシャウト「We are 在日ファンク!!」でライブスタート。軽快なファンクビートに乗った ジェイムズ・ブラウンばりのダンスと金切り声のシャウト。SEから繋がる1曲目「きず」からほぼ全開のテンションにオーディエンスは両手拳を上げて応える。村上基(Tp)の突き刺す様なソロパートのピンスポットは神々しさすら感じるものがあった。そしてテレキャスターギターを奏でる仰木亮彦(Gt)のギターソロでは、導入部の見事な切り口で観客の心を掴み、フロアからは瞬時に大歓声が上がった。

 管楽器隊のレガートなプレイからしっとりとした16ビートで始まる次曲「パラシュート」。抜群の安定度を誇るギターガッティングが絶好のミドルテンポと同期し、ソウルフルなファンクグルーヴを醸した。ジェントル久保田(Tb)の語る様なリードパートは絶妙に楽曲に映え、被さる様に、引き継ぐ様に、ボーカルへとリードを渡した。

2曲の新曲を演奏

在日ファンク(撮影・高田梓)

在日ファンク(撮影・高田梓)

 「新曲やります」との契機で間髪入れずに入った在日ファンクの新曲。永田真毅(Dr)の鋭いハイハットのプレイが鋭角に刺さるビート。RAP調の歌とシンクロするハードなギターカッティングプレイが最高に気持ち良い。このあたりになって、これまで紳士的なステージングだった管楽器隊はリズミカルに身体を揺らし、ステージ上の華やかさに拍車をかける。そしてここまでリードプレイを見せなかった後関好宏(Sax)のソロがここで炸裂。「待ってました」とばかりの歓声。この仮タイトル新曲「ぽいぽい」で聴ける管楽器のハーモニーは適所でツボを押さえた秀逸なアンサンブルを魅せた。

 さらにレアタイトルが続く。ライブでやることは滅多にない「におい将軍」。これまでで最もスローなテンポの楽曲に、会場の照明はグリーンとブルーを基調に少々クールダウン。しっとりと聴かせるボーカルに寄り添う管楽器の和音、アンサンブルを牽引するギタープレイ。またしても後関好宏のサックスリードプレイが華をみせる。

 続いて「People Say」が始まり、ここでメンバー紹介。まずは「ジェントル久保田」の物販紹介コーナー。やけに熟れた物腰で次々と商品をプレゼンし観客の購買欲を煽る姿に、会場はファニーな空気に。途中から演説の様になるも会場は大喜びだ。ジェントル久保田は季節の話や、偉人の名言などを引用しつつ、物販のシャツや帽子の購買をじりじりと促していた。ここで次回開催の「在日ファンクアワー2015 in 北区」初のホール公演の告知も行った。

 急にカウベルを叩き始めた浜野謙太(Vo)。そこに絡む様にハードなカッティングプレイと共に始まった「むくみ」。ここまでで最もアップテンポの楽曲をグイグイと引っ張る村上啓太(Ba)のベースラインが最高にカッコ良いグルーヴを生み出した。

和田アキ子のカバーも披露

在日ファンク(撮影・高田梓)

在日ファンク(撮影・高田梓)

 そしてあの大御所のカバー。和田アキ子の「古い日記」が在日ファンクの演奏によりLIQUIDROOMを揺らす。原曲をさらにファンキーにした日本のR&Bの名曲カバーに歓声が湧く。ソウルフルなダンスと共に意気揚々とシャウトする浜野謙太(Vo)。「あっのっころはぁ!」の後は、当然の様に会場一致で「ハッ!」のレスポンスだ。

 在日ファンクの楽曲の中でも特にファンク色際立つ必殺チューン「根にもってます」。ここで魅せたマイクスタンドパフォーマンスに会場は大盛り上がり。そして村上基(Tp)のロング・リードパート。滑らかなトーンでソウルヴォーカルの様なメロディを奏でるプレイ。在日ファンクのライヴにおけるリードパートの魅せ方は、全くもって秀逸の一言だ。

 ライヴもいよいよ終盤、「こんな平日にありがとう!」という謝辞から始まった「場」では、コーラス部の歌とアクションがオーディエンスと見事にユニゾンした。ここでは村上啓太(Ba)のベースソロも聴かせてくれ、ファンクグルーヴを支える存在感を見せつけた。そこから被さるギター、主役の展開は後関好宏(Sax)のリードパートへと流れ、曲中にはメンバー全員紹介、再びテーマのビートに戻り、「ありがとう!」と丁寧な御礼で締めくくった。

 しかし、鳴り止まない拍手と歓声。序々にBPMを上げていく拍手に応えるかの様に「在日ファンク」再びステージ上に登場。「今日はどうもありがとう!」と言う浜野謙太(Vo)の爽やかな挨拶から間髪入れず、アンコール楽曲スタート。全パートスタッカートな「正にファンク!」といったノリの「爆弾こわい」そして「京都」と続きLIQUIDROOM内は最高潮に達する。サラウンドの大歓声の中『LIQUIDROOM 11th ANNIVERSARY 在日ファンク Presents 「ば」 Vo.l2』は幕を下ろした。

 会場を後にするオーディエンスの表情はほぼ100%の笑顔。「最高でしたねえ」「格好良いし面白い」と口々にする聴衆のそれらは、在日ファンクの音楽、ライヴの魅力を明確に物語っていた。

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