原点は路上ライブ ダイスケ、人に寄り添う「君にかける魔法」
INTERVIEW

原点は路上ライブ ダイスケ、人に寄り添う「君にかける魔法」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年03月02日

読了時間:約22分

「音符の傘」に秘めたファンへの想い

――ファンを大事にするというのはストリートライブでの経験が大きい?

 大きいです! 音楽をやっている身分として、聴いてくれる人や、僕を理解してくれる人が居ないと成り立たないものなので、「僕を理解してもらうために、僕もみんなの事を理解しないといけない」という所は、ストリートの頃からずっと同じですね。“ファン”という言葉もあまり好きではないんですけど、本当に信頼しあっている友達、家族、パートナー、という感覚でやっていますね。

ダイスケ

ダイスケ

――今は「理解してもらうために」どのような事に取り組んでいますか。

 気持ちの上では、一方的に理解してもらおうなんて、おこがましい話だと思うので、「なるべく相手を理解する」と言うか。例えば、ファンのみんなが何を思っているのかTwitterなんかを覗いてみるとか、ファンと接する機会を増やすとか、そういう所ですかね。「俺はミュージシャンなんだから俺の歌を聴けよ」なんて思った事は1回もないですし。

――そういった考えは楽曲にも現れていますか?

 曲にも出ていると思いますね。例えば今回のアルバムの最後の曲「音符の傘」というのは、僕からみんなへのメッセージであって。ライブで会えるのは、ほんの数時間かもしれないですけど、音楽というものを通していつでも繋がっているし、僕はみんなの支えになりたいと思っているし。だから、僕の事も信じてもらいたいなという気持ちがまんま出ている曲だと思いますね。

――今回のアルバムの楽曲の多くは歌詞の文字数が多いのですが、「音符の傘」に関してはすごく短くまとめられています。それは、シンプルに自分の想いを伝えたかった?

 たぶんそうだと思いますね。文字数を重ねれば重ねるほど、「曲の責任感」というのは分散されてしまうと思うんです。だけど、本当に言いたい事って、そんなに言葉数は多くないと思うんです。ファンへの気持ちを歌う時は、カッコつけず、飾らず、ストレートにこれだけで良かったのかなと思いますね。

――豊洲PITでの5周年記念ライブ(ダイスケ、5周年記念ライブで歌唱ハプニング 急きょ生歌披露)では最後に、この楽曲をマイクも付けずにギターの弾き語りで歌っていました。これがまたとても良かった。

 有難いです!

熱演するダイスケ

豊洲PITで行われたライブの模様

――喉がつぶれるんじゃないか、と思うぐらい感情を込めて力強く歌っていましたが、喉は大丈夫でした?

 あの時は喉を潰してやろうと思いましたね。喉が張り裂けてもちゃんと伝えようと思って。特効(編注=ステージ特殊効果の演出)が予想外の事になった時も、「やっちまったな」的な空気ではなく、「あらあら、またダイスケくん、変わらないね」みたいな温かい空気だったんで、ファンに救われたんですよ。それでそのあと切り返せて。「これだけ僕の事を信じている人達がいるんだから、真っさらな気持ちでしっかりと歌わなきゃ駄目だな!」と思ってアツく歌ったところですね。

――歓声も一切なくファンはジッとダイスケさんだけを見つめて、シーンとした空間の中で響く歌とギターの音色が神秘的で。足で地面を鳴らすアプローチや、ギターのボディをパーカッシブに叩くさま。全てが楽器になってそれがシーンとした会場に響き渡るんです。そういったスタイルは昔から?

 そうですね、けっこう昔から。気持ちが入っちゃうと足が出るのは“クセ”ですね。

――それがまたイイですよね。

 ありがとうございます(笑)。20曲程PA通して歌った後の弾き語り、「この豊洲PITで届くのかな?」と、凄く不安でしたけどね。でもだんだん歌っていって、みんなを真ん中に寄せて表情がより鮮明に見えた時、「届いているな」と思って、僕もどんどんボルテージが上がって。最終的にはアツくなって“がなって”いましたね。

――あのあと振り返って「ストリートライブみたいだったな」と思ったり?

 それはありましたね! あの頃みたいに着飾らず、壁も無く、みたいな。自分がやっている事はあの頃から変わっていないなと思いましたね。

――改めてファンを大事にしようと思った瞬間だったんですね。

 はい。本当に。

色んな要素を散りばめたアルバム

――ダイスケさんの楽曲はけっこう音数が多く、様々な要素が散りばめられていると感じますが、そこには何か意図が?

 弾き語りだけでも全然良いんですけど、作品を作る時はどんどん色を重ねちゃうというか、着飾っちゃうんですよね。あとは、もともとの性格が慎重で恐がりな所があるので、「キラキラ見せたい」と言うか。“ポップスター”みたいなものへの憧れもあってそうしているのかもしれません。

――今回のアルバムは、曲のタイプが2曲ずつに分かれているなと感じました。最初の「HAPPY」と「コスモノート」はポップな感じで入っていって、3曲目の「GOKU」はまた面白いリードが入って。4曲目「せかいにひとつのフタリ」もそうなんですけど、バンジョーのような音色も入っていますよね?

 入っています。ギターバンジョーなのでハッタリなんですけど、ちょっと好きで。これも自分で弾いてるんですけど。「GOKU」はほとんど自分でアレンジも組み立てた曲で、遊び心が入ってるんです。

――ラップだったり、スラッピングだったり、ギター同士の掛け合いがあったり。

 「GOKU」では初めてしっかりしたギターソロをやったかもしれないですね。ライブでもサポートしてくれているギターのヒロとアレンジした曲なんですけど、気心が知れてるからギターの掛け合いも自然に行くと言うか。

ダイスケ「君にかける魔法」(通常盤)

ダイスケ「君にかける魔法」(通常盤)

――一方で6曲目「なんて」では電子レンジの音とか生活感あふれるサウンドが。

 SE(編注=ここでは効果音の意)を今回けっこう入れてますね。その世界に入りやすいようにだとか、単純に遊び心として入れてますね。

――2曲ずつという解釈は実際のところどうでしょうか。1曲目と2曲目、3曲目と4曲目、5曲目と6曲目といったように、1つのブロックになっていると感じましたが。

 それは考えていなかったですね。指摘を受けて逆に面白いと思いました。そう言われてみれば、それはあるかもしれないですね。自然とかもしれませんが、言われてみたらキレイに2曲ずつ分かれてますね。「東京ラヴァーズ」もSEという意味では遊んだ曲で、頭は東京の夜の雑踏を入れて、最後は朝方の雑踏を入れているんです。あと、女の子の声が入っているんですけど、これは当初は入れる予定ではなかったんです。

 というのも、「東京ラヴァーズ」はわりと“渋谷系”を意識して作ったというのがありまして。この曲を作っていた頃、ピチカートファイブとかフリッパーズギターとか、初期のCAPSULEなんかを聴いていて「イイな!」と思ってたんですよ。この時代に渋谷系みたいの作ったら面白いんじゃないかなと思って作った曲なんです。フラッシュアイディアで「曲の最後に女の子の声を入れたら…」というのがあって、「そんなのを恥ずかし気もなくやるのって渋谷系じゃない?」とか思ったんです。それでレコーディングスタジオの女性スタッフに無理矢理頼んで声を入れた、という遊び心が詰まっているんです。

――面白いですね。7曲目「愛は散って ライライラライラ」では極端に変わって、エレクトロサウンド満載の情熱的な感じですが。

 そうですね。「スパニッシュなフラメンコギターと打ち込みの融合」みたいなものを。メロディは昭和歌謡みたいなところにして、面白く出来た曲だなと思います。

――ダイスケさんの曲はいろんな顔があると思います。ギターを基軸として、先程のシティポップやエレクトロアプローチだったり、フルにアコースティックだったり、ロックだったりダンスミュージックだったり。特に影響を受けた音楽は?

 いろんなものに影響を受けていると思うんですけど、作っている時に聴いている音楽だったりとか。逆に、「ダイスケの音楽性は全体的にこういうものにしよう」というのはそんなに決めていなくて。まあ、シングルを作る時はポピュラリティを大事にするんですけど。例えば、「アイリッシュみたいな民族系やりたい!」となったら全然やりますし、ロックがやりたかったらロックを作るし、その都度楽しんでいろんな曲を作っているという所ですね。「ぼくにかける魔法」なんかは完全にアイリッシュをメインにして作ってますしね。

――曲作りに多彩な顔を見せるのもファンを大切に、ファンを意識した上で作っているのかとも思いました。それぞれのファンに届くように多彩に、と言いますか。

 ファンの人にもいろんな面を見せてあげたいと言いますか。楽しんでいる感じなんですかね。「こういうの聴いた事ある?」という感じで作ってみたりとか。例えば、渋谷系みたいな「東京ラヴァーズ」を作って、こうしてインタビューで「渋谷系が背景にある」という事をファンとも共有できて、みんなの音楽性が広がったりとか新たな発見ができたりしますので、僕も、皆にもいろんな音楽を知ってもらいたいですね。

――今後はもっともっと他の音楽を掛け合わせていく事も?

 あります。やってみたいですね。

――楽しいですね。

 アルバムを作るのは凄く楽しくて好きですね。

――「GOKU」のようにラップ調の曲も、過去の楽曲でここまで大胆に取り入れた事はなかったのでは?

 ラップは好きでして、だいたいアルバムに1曲は入れていくんですけど、今回ほどガッツリ「ザ・ラップ」という、ここまで濃いのは初めてかもしれないですね。

――こういった事を更に濃くしていくというのも?

 アリかもしれないですね。早口言葉みたいの好きなので。韻を踏んでいくのも楽しいですしね。

原点回帰できた豊洲PITライブ

――5周年を振り返っていかがでしょうか。

ダイスケ それこそ最初はこもってたんです。1人きりで。友達の事もあまり信用できないくらいに“内”に。この5年間は10年くらいに感じるほど長かったんですよ。その間で出会った人だったり、ライブやTVの経験だったり、みんなに自分を大きく育ててもらったような感じがあるんです。みんなと出会って、僕の事を知ってもらって、触れ合わせてもらったおかげで、ちょっと大人になれた部分はあるんじゃないかと思います。

ダイスケ

ダイスケ

――この1年はどういう1年にしていきたいですか?

 「成長を見せる1年」にしたいですね! 多分、ファンの方は自分のいろんな顔を知っていると思うんです。最初の頃の、本当に緊張しながらレポートしたりして震えていた事とか、喉も全然強くない未熟な歌とか、僕の駄目なところもいっぱい知っていて、それでもなお、付いてきてくれる方達だったりするので、そういう方達には成長した姿を見せたいです。まだ僕の事を知らない人には、みんなに育ててもらった自分を、自信をもって見せていきたいという気持ちがあります。

――実際にライブを見て感じたことはダイスケさんのギター演奏の上手さ。本当に上手くて。

 本当ですか? 嬉しいです! 僕からしたらもっともっとギターが上手くなりたいです。この前の豊洲PITで最後に弾き語りをやった時に、やっぱ弾き語りって凄く気持ち良くて。今一度、原点回帰できました。弾き語りの「間」とか「リズム」とか「情熱」だけでも聴かせられる様になりたいと今思ってるとこですね。

――その一方でクラシックギターや他の弦楽器なども?

 やっていきたいですね。バンジョーは特に。あとマンドリンとかいろんなもの手を出したいですね。

――世界を旅したりとか?

 経験はしてみたいですね! いろんな楽器を知りたいですし。そういえば3〜4年前、台湾にロケに言ったとき、現地の“死ぬほど当たる”という占い師に「あんたはずっと旅をしていなさい」と言われましたね。「旅をして経験を重ねる事があなたの成功のカギだ」と言ってましたね。結局、緊張しようが怖かろうが、いろんな事に飛び込んでいかないと僕は駄目なのかなと思いました。新しい事に挑戦するという事もそうですし…。じゃないとまた昔の自分に戻ってしまうので(笑)。常に前へ前へ進んでいかないと得るものはないのかなと。

――世界で弾く事も?

 面白そうですね! 英語…いや、英語できなくても音楽の力だけでみたいな。

――あるアーティストは、日本語でも世界で通じるはずだと思っているそうです。だからあえて向こうでも日本語で歌うという。

 それも凄いですね。それこそNYのストリートで立ち止ってくれたら。何かそこでまた繋がる気がしますね。日本語で伝わったら絶対面白いと思いますし。そのためにも、ギターも歌もパフォーマンスも、修行します!

(取材/撮影・木村陽仁)

 ◆ダイスケ 1988年3月4日生まれ。神奈川県湘南出身。2011年「ボク☆ロケット」でメジャーデビュー。日本テレビ系情報エンタテインメント番組「ZIP!」内コーナー「ZIP!スマイルキャラバン」レギュラー出演と同時にその名前とキャラクターを一気に全国に広げた。2016年3月2日に通算4枚目となるアルバム「君にかける魔法」をリリースする。

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