育ちはサザン、憧れは木村カエラ トミタ栞の魅力に迫る
INTERVIEW

育ちはサザン、憧れは木村カエラ トミタ栞の魅力に迫る


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年02月02日

読了時間:約20分

低音の魅力を見出した大塚愛

憧れの大塚愛プロデュース作品を振り返る

憧れの大塚愛プロデュース作品を振り返る

――ところで、昨年2月にリリースしたファーストアルバム『もしもワールド』では、大塚愛さんがプロデュースされていました。大塚さんのファンでもある?

 そうです! 私はそれまでずっとサザンを聴いていて、中学に上がるまでは、日本のアーティストはサザンしかいないと思っていたくらいなんですけど(笑)。それで中学に行って、みんなでカラオケに行く文化が生まれて、「サザンを歌う女子なんて見たことなかった!」なんて言われて。周りの女の子はみんな、倖田來未さんとか、いきものがかりさんとか、女性シンガーを歌うことが多くて。私はそこで女性シンガーで歌える曲がなかったんですよ。でも、唯一歌えそうだったのがその頃に聴き始めた大塚愛さんの「さくらんぼ」だったんです。それが初めてカラオケで歌った曲なんですよね。でも、マイクを持っていざ友達の前で歌ったら、音程が全然合わなくて歌えなかったんです。すっごいダサい感じになって、恥ずかしくなって悔しくて。それから、大塚愛さんの曲をいっぱい聴いて覚えて、カラオケで歌うようになったりして、「歌」に対する気持ちが変わりましたね。

――カラオケでサザンの曲も歌われた?

 いや(笑)当時はその勇気はなくて!

――家では桑田さんのように?

 口ずさみます。いやいや普通に!

――トミタさんの歌声は比較的高めのキーですが、地声はやや低い気もします。それは何か意識して?

 癖づけました! 実は、学生の頃はこう見えてキャピキャピしていたんですよ。だから声が超ハイトーンで。友達に「キンキンするわ!」とずっと言われていたんですよ。それが凄く嫌で。その後、高校卒業してから社会に出るようになって、「自分も疲れるし、もうヤメよう」と直すようにしました。

――それは「saku saku」でMCされていたとき?

 「saku saku」ではないですね。取材で受け答えしているときかもしれないですね。デビューして取材を受けるようになって、こういうインタビューは1時間くらい喋るじゃないですか、そうすると自分の声に自分が疲れるんですよね。だから「あ、そうじゃなくていいんだ」と思って、無駄な体力を使うのをやめました(笑)

――トミタさんの地声はとても力強くて良いと思いますよ

 ありがとうございます。実はもう一つ、もっと大きなきっかけがありまして。先ほどの作品で、プロデュースして下さった大塚愛さんと2人きりで打ち合わせする機会があって、そこで愛さんが「しおりんの低音が凄く好きなんだよね。ローの音が凄く綺麗だよ」と、まだ歌う前の会話でそれを言って下さって。それが嬉しくて、愛さんが好きになってくれるから私も好きになって、初めて自分の低音というものに耳を向けるようになったんです。

――それ以来、曲に関してもローの部分を意識するように?

 意識するようになりました! 低い音を増やしたとかではなくて、凄く高いキーでなければ、下と上をちゃんとカバーして歌おうとか、今まで上の方に重点を置いていたものを、下でもしっかり支えてあげようとか。そういう意識が生まれたのは愛さんのプロデュースがかなり大きいです。

ロック色を引き出したビアちゃん

笑顔が印象的

笑顔が印象的

――今回の曲「バレンタイン・キッス」はロックに仕上がっていて、凄くトミタさんの歌声にマッチしているなと思いました。ご自身ではいかがでしょうか

 私的には、「バレンタイン」とか「キス」というワードが似合わない女子だと勝手に思っていて、ちょっと照れくさいなって思ってしまうくらいなんです。ただ今回、ビアちゃん(編注=フィーチャリングで参加したLadybeardの愛称)と一緒にやるということで、自分もメチャクチャ楽しいけど、原曲をカラオケでそのまま歌おうと思ったら、自分自身恥ずかしいって思うかもしれない部分もあって。

――原曲よりもキーを下げて歌おうとした?

 キー自体は変わっていないんじゃないですかね? ただ、アレンジは今回だいぶ変えたので雰囲気は相当違うかと。

――そのアレンジが大好きでして

 ビアちゃんのデス・ボイスがヤバいですよね。「そこに入ってくるんだ」みたいな。

――トミタさんがビアさんに引き出された部分もあるのではないかと思うのですが

 もちろん。私は今まで1人でずっと喋っていたんですけど、歌も1人だったし。でも今回、ビアちゃんと一緒に2人でやる事になって、プロモーションも一緒にやって、取材をしていくなかで、ビアちゃんの話を聞いたり、自分の話を聞いてもらったり、そういう関係性、時間が初めて生まれたんですね。私が全部喋らずに、ビアちゃんも話してくれる。むしろそっちの方が今回の曲の魅力が伝わるなということに気づいて。私が変に説明するよりも、ビアちゃんが喋ってくれる方が私は凄く好きだし、楽しいです。そういう状況が今回初めてなので、変に分からない言葉を使って無理に説明しようということがなくなりました。頑張りすぎず、適度にと言うか。

――今回の曲を機によりロック色を強めていくのかな、という印象もありますが

 「ポップロック」というジャンルを極めていきたいなと凄く思っています。今は、ポップが強い感じだと思っていて、ビアちゃんとの今回の楽曲を機に、ロック要素をどんどん入れて「ポップロック」というジャンルをトミタ栞に繋げていきたいと思っています。

――カップリング収録の「ホワイトデイ」を書かれたいきさつは?

 「書きたい」ということは凄い主張しました! 自分らしさも「バレンタイン・キッス」で出ているけど、初めてこれで私のことを知ってくれる方もたくさんいるだろうなと思ったんです。カップリングで。アーティスト・トミタ栞をさらに見てもらいたいなと思っていて「作詞作曲をやりたいです」と凄く主張しました。

――アレンジは自分のイメージに近かった?

 思ったよりポップになって返ってきてびっくりしました。前回の「もしもワールド」という曲でも作詞作曲をやったんですけど、その曲ができた時の感覚とちょっと似ていて、これも鼻歌で作った曲で、すごくポップになって返ってきて。けっこう落ちているような曲になるのを想像していたんですけど、凄く明るい曲に。一気に大好きになったんです。「ホワイトデイ」も同じような現象で、ただリズムだけとってアカペラでケータイに録音したものをボイスメモとして送って、それに、仮アレンジを加えて返してもらうんです。今回もそのやり方だったのに、凄く明るい感じで返ってきて、ピアノから始まるというのを想像していなかったので。「音が付くだけでこんなに変わるんだ」というシンデレラみたいな感じです。

――曲のもとは寂しい感じだった?

 はい。

――自分の気持ちが少し落ちている時に曲が生まれてくることが多い?

 という訳でもないんですけどね…。むしろ落ち込んでいる時は作らなくなっちゃう(笑)

――落ち着いているときに?

 そうですね。

――この曲は家で考えたのでしょうか

 家で考えました。

――家での姿はどんな感じですか

 家では恐竜のパジャマを着ています。そこじゃないか(笑)今回の曲はウクレレを持って作りました。最近、ウクレレを弾くようになって。自分がやっているラジオでウクレレを習ったんです。そのタイミングでマイ・ウクレレを買って、嬉しくって触っていたんですけど。コードがギターよりちょっと弾きやすいので、簡単なコードを並べていくなかで、今回の曲をもし作れるならチャレンジしてみようと思いました。ウクレレで。

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