“5人”での最後の「Trigger」

KOKI

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 本編終了後間もなくしてINKTコールが鳴り響いた。それに押されて再び登場した。4月から自身主宰初のツーマンツアーを開催することを発表した。まずは第1弾アーティストとして、4月2日は東京・渋谷CHELSEA HOTELでGacharic Spinと、9日は 埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3でBentham、そして、4月17日は愛知・名古屋Electric Lady Landで神聖かまってちゃんと行うことを報告。フロアから大歓声が上がった。

 一通り報告を終えたところで、KOKIが「今日は新曲を作ってきました。さっきと違うやつね。人によって解釈が違うかも。田舎に残した女性や、離れ離れになった友など。ぜひ聞いてください」。エレクトロニックサウンドから入った新曲はゆったりと流れる。これまでとは異なるバラード曲。Keiはアコギに持ち替えている。KOKIの歌声が力強く、そして伸びやかに響く。SASSYとmACKAz、kissy、Keiが目をつむって奏でる。

 「まだまだ遊んで帰りたいよな。遊んで帰れるか。体力残さず帰えられるか、汗だくになって帰られるか」と笑顔のKOKI。雰囲気を変えて届けたのは「Nobody Knows」。ステージ前に出るKeiとmACKAz。疾走感がある。そして、KOKIが言葉で思いをの丈を伝えた。

 「今日は本当にどうも有難うございました。皆さんのお蔭でツアーファイナルまで駆け抜けることができました。大事な日に暴れる、歌える、踊れる、演奏ができる、生活できる場を与えてくれてありがとうございます。最高のライブを作ってくれた皆、ありがとう。楽しかったな。俺らも最高に楽しかったです。INKTが出来て2年。あっという間に1年が過ぎて。この1年も順風満帆かと言えばそうではない。障害や壁を乗り越えてきたつもり。俺なんかさあ嫌われて。会ったこともない人に人格を否定されて、ライブにも来てくれない人に音楽を否定されて。でもこんなに集まってくれてすごく嬉しい。俺なんかのために人が集まってくれること自体が凄い嬉しいし、恵まれている。バンドは1から組み立てていくもの。恵まれていることに、最初から皆がいて、自由に音楽をつくって。俺らのライブを見てくれれば何かしら受け止めていくれると思う。これが本当のライブ。これからが第2章だよ。皆のために何ができるか、後ろ指さされても馬鹿にされても前に走り続けるのみ。考える頭がない俺だから。1人残らず着いてきてくれよ」

KOKI

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 一呼吸してまた続ける。「2016年、INKTの第2章。俺らの旅はまだ始まったばかりだ!」との思いを「wanderlust」にぶつけた。凄まじいサウンドとKOKIの魂が込められた迫力。それを中和するkissyのキーボード。あちらこちらで雷鳴が轟き、地響きが鳴るが如く、荒れ狂うサウンド。自身がタイフーンであるかのように激しく鳴らすmACKAz、叩き潰すようなSASSYのドラム。怒涛のサウンドを奏でるKei。そして切り裂くようなKOKIの歌声。嵐が去ったかのようにエンディングは明るいライトが辺りを照らした。

 5人が中央に集まる。KOKIがおもむろに口を開く。「kissyからお伝えしたいことがあるようです」。マイクを受け取ったkissyはためらいをみせたあと「お知らせがある。辛い報告なります。1月4日ファイナルをもって僕は脱退することになりました」と語った。場内からは悲鳴にも似た声が響き、そしてすすり泣く声であふれる。kissyは更に続けた。

 「本当に急なタイミングで、急なお知らせになっていまって。本当に申し訳ありません。もっと早くお知らせしたかった。いろいろあって。大きな理由は…、僕の勝手な個人的な理由。INKTの外で音楽活動を広げていきたいという思いが日に日に強くなって…、僕の想いを無理やり聞いてもらって。本当に今まで有難うございました」

 kissyはメンバー最年少。そのkissyを“兄貴”らしくフォローするようにKOKIが続けた。

 「バンドにはいろいろあることだし、末っ子だから。音楽を辞めるわけではないし、5人のライブをするわけではなくなったけど、音楽をやるし、プラス思考。4人でスタートさせる。ピンチはチャンスだと思う。フェスや対バンで会えたら最高に楽しい。音楽も続けていくから応援してあげてよ。大事な仲間だし、この5人で走り出したことだから、4人でもkissyがいたことはなくならないし、5人でINKTだから。こういう形で見れるのは今日は最後。俺らは俺ら、kissyはkissyはだから。kissyは5人目のメンバーだと思うから。1人になっても応援してください。本当にこいつは我がままだから、末っ子だから」

 Keiがマイクを取る。「結果は変わらないけど、泣いて終わるのも嫌だから、最後に5人で。kissy、『Trigger』でいい?」。kissyが涙を抑えうなずく。

 KOKIが叫ぶ。「これが5人での最後のTrigger。皆は、俺らは5人だった、という証人だから。泣いてじゃなくて、笑って終わろうよ。それがINKTのライブだろ、笑って送り出してやろうぜ! これがINKTだぞ」

 いつも以上に激しく「Trigger」をパフォーマンスした。kissyも同じだった。KOKI、Kei、mACKAzがkissyに歩み寄って奏で、歌い、目を合わせ笑う。そして、mACKAzはキーボードの裏に回り込んでkissyの後ろでベースを奏でた。両手を広げるkissyに、KOKIが手を合わせる。高鳴るサウンド。「これからも、皆も、俺らもどこにいても俺らはINKTだぞ」というKOKIの声に合わせて、メンバーがこれまでにない大きな音を鳴らし楽曲を〆た。

 ステージに端に寄るkissyを中央に誘うKOKI。5人が手をつなぎ、挨拶する。1人ずつステージを去っていく。最後にkissyが笑顔でファンに無言のメッセージを送り、後にした。ツアー、そしてINKTとしての第1章は終わったのである。

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