FACTの軌跡、ツアーは最高のクライマックス【1】

最高潮のまま走り抜けたツアー、そしてライブ

 16年の活動を経て今年11月に解散したロックバンドのFACTが、ラストツアー『FACT “KTHEAT” JAPAN TOUR 2015』を9月から11月にかけて繰り広げた。9月2日の恵比寿LIQUIDROOMから始まり、11月10日の千葉K's Dreamでファイナルを迎えた。そして、ツアーを終えた翌日11月11日にはベストアルバム『best+ 2009-2015』をリリースした。

 2013年までは能面を被るなどして素顔を隠していた。その奇抜さと既成概念にとらわれない独特のビジュアルや楽曲構成は人々の意表を突き、更にはメンバー全員がボーカルを担当するなど、常に想像を超えた攻めの姿勢で新たな魅力を掲示し続けてきた。1999年の結成からハードコア、メタル、スクリーモなど様々なアプローチで音楽性を進化させ、国内海外共にロックファンから大きな支持を集めた。

 数々の作品と、圧倒的な熱量のライブパフォーマンスで国内外のラウドシーンを駆け抜けた。これまでのツアーは「世代や国境を超えて多くのバンドを知ってもらいたい」というメンバーの意向により対バン形式のみのものであった。ラストでは、バンドの歴史で最初で最後となるワンマンツアー。このうち、ツアー中盤となった10月10日、TOKYO DOME CITY HALLでの公演を以下にレポートする。(取材・平吉賢治)

最高のクライマックス

叫び歌うHiro

叫び歌うHiro

 FACTの16年間の活動に思いを馳せ、今か今かと開演を待つオーディエンスで埋め尽くされたフロア。解散を惜しむ思い、FACTの最後の姿を目に焼き付けようという思い、今後のFACTメンバーの活動に対する思い、様々な感情が入り交じった独特な空気。そんなオーディエンスの感情を一つにしたのは、開演のスタートの合図「16年間ありがとう」とスクリーンに映し出されたメッセージ。剥き出しの大歓声と共に、会場内はダークグリーンの光がゆっくりと広がり、FACTファイナルアクトがスタートした。

 霧に浮かび上がるFACTメンバーのシルエット。ラウドなトリプルギター・アンサンブルが会場を温める様に序章を奏でる。FACTを覆う霧を醸したステージカーテンが一気に上がり、シルエットからFACTメンバーの姿が明瞭に浮かび上がった瞬間、ドラムカウント+轟音と共に「worm」が鳴り響き、TOKYO DOME CITY HALLをFACTサウンドが縦横無尽に埋め尽くした。

 轟音の閃光を浴び、オーディエンスは前方へ吸い込まれた。全員一致で両手を突き上げ、楽曲の鼓動に合わせて一斉にモッシュ。曲間、Hiro(Vo)は「そんなモンじゃあねえだろ。東京!」と煽り、間髪入れずに楽曲を繋ぎ、ライブは唯一無二のFACTアンサンブルと共に流れて行く。

 東京ドーム直近のライブステージにちなんでか、「ここがおまえらのクライマックスシリーズ、最高のクライマックスを迎えようぜ!」と言うHiro(Vo)。会場内からは「解散表明が残念だ」という様な感情は1つも伝わってこない。会場にいる全員が、この瞬間を、ポジティブなパワーをもって楽しみ、最高のクライマックスを迎えようとしていた。

 オーディエンス頭上をクラウドサーフする人数は5人、6人と増え、FACTと共に16年分の感情を音と共に爆発させる。この後もフロアでは常に数人のオーディエンスがクラウドサーフを繰り返し、モッシュ&ダイブは続いた。その空間に居る全ての人間でFACTのライブが創られていった。

常にボールテージ最高潮

観衆と一体となって歌い届けるHiro

観衆と一体となって歌い届けるHiro

 Hiroはフロアへとなだれ込みマイクを客席に向け、オーディエンスが放つサウンド、ボーカルを集め、楽曲と同化させる。常に客を煽るFACTに応えるかの様に、満員のフロアを渦巻き上に走り回りモッシュするという圧巻のオーディエンス。「俺たち今日ここで絶対に後悔しないから、お前達、絶対に後悔するんじゃねえぞ!」というHiroのメッセージ、ロングトーンシャウト、ギターリフと共にステージ上で華麗なジャンプを繰り返すAdam(Gt)。常にボールテージ最高潮という表現以外見当たらない熱気のままFACTファイナルアクトは続いた。

 「最高の思いでが出来ています。それはお前らが居るからです。そんな訳で、全力で行こうか!」、ある種の絶対的な賦活作用すらあるHiroの煽り。ライブは中盤に差し掛かり、「drag」のイントロギターフレーズが怪しげなモジュレートエフェクトと共にリフレインされる。赤と銀のフラッシュに溶け込む金属音、シャウト。コーラス部で射すメタリックブルーライト。FACTの存在を象徴するかの様な圧巻のステージングが展開された。

 小振りな鼓を抱えたHiroがエスニックなビートを素手で刻む「ape」では、ステージに乱入した謎の覆面男がHiroとドッキング。少し笑みを浮かべたHiroは男にマイクを渡しパフォーマンスを促した。覆面男はここぞとばかりの会心のシャウト。素晴らしい仕事っぷりを魅せた男は、何事も無かった様に客席へとダイヴ。歓迎して受け止めるオーディエンス。ブレーキが存在しないFACTライブはヘビーなリフと高速BPMの楽曲に乗せモッシュ&ダイヴのピークを迎える。

必ず明日がくる

叫び歌うHiro

叫び歌うHiro

 意気揚々とステージに上がっては次々に客席へダイヴ。もちろん、咎める者もいなければ濁す空気も流れない。だが、Adam(Gt)が「ケガだけはするなよ!」と適度に促したり、「飛んでくる奴、もうちょっとやさしくしてな!」と、セキュリティとオーディエンスを気遣うという一幕も。

 「ちょっとしっとりミドルなテンポを」というMCから、呪文を唱える様なギターフレーズを奏でるTakahiro(Gt)の印象的なサウンドが展開され、モッシュやダイヴは「小休止」といった雰囲気だ。ハイ・ボルテージを保ちつつ、ヘビーなグルーヴに揺れるオーディエンス。絶好のミドルテンポのアプローチは次曲の導入まで続いた。ステージフロントでマイクを両手で掴み、祈る様な姿で歌うHiro。後半部のコーラスでは、FACTメンバー、会場総員での大合唱がフロアを包んだ。

 「解散が決まっても、結局変わらない日常が過ぎて行く。だからしっかり楽しんで帰って下さいよ」というEiji (Ds)の言葉に、会場から「いい事言った!」と、この上無いピースフルで温かい空気に包まれ、「拳を上げろ!」と叫ぶ合図から再びモッシュが展開される。上げた拳はFACTと共に狂熱のライブを更に膨張させた。

 ギターリフのピンスポット。ここで一本のギターサウンド以外の全てが止まる。音、オーディエンスの動き、その全てが停止し、会場はKazuki(Gt)のギターリフに集中した。そしてバンド全パートインした瞬間の爆音を契機に再起動。ここからがFACTライブの最高潮だった。本日イチのハイデジベルなシャウト。FACTの咆哮、音の洪水、オーディエンスの一体感がTOKYO DOME CITY HALLを物理的に揺らす。コーラス大合唱とヘビーなビートにシンクロするオーディエンス。客席に乗り出しオーディエンスに囲まれ、360°掴まれながらマイクを全方位に向けるHiroの周りは、くんずほぐれつモッシュ祭り。「そのまま行きますか!」のシャウトから、ツーバスの高速スラッシュビートと共に会場は狂喜乱舞した。

 そしてライブも後半、ここで16年分の謝辞を述べるHiroは声を震わせた。「バンドをやっていてマジで良かったです。本当にありがとう」「泣きたくねえんだけど、本当に16年ありがとうございました」「俺らメンバー6人、必ず明日がくるんで、ずっと応援しててください」。

 心の底からお礼を吐き出す様にHiroは言葉を重ねた。そして、楽曲「sunset」のビートをバックにFACTは「本当にありがとうございました」とオーディエンスに伝えた。楽曲のリズムに合わせ一斉に左右に揺れるオーディエンスの手がFACTに応え、その想い、16年分の言葉を全員で受け止めた。

 ラストの楽曲「a fact of life」。この「FACT "KTHEAT" JAPAN TOUR 2015」がFACTの集大成であるとしたら、本日のライブの集大成は「a fact of life」での盛り上がりだろう。曲中の「Thanks for the memory that doesn't fade in my heart(僕の心でいつまでも色褪せない思い出をありがとう)」の歌詞がFACTオーディエンスの胸に突き刺さる。

FACT最後のメッセージ

 ラストを締めくくりながらも当然の様に鳴り止まない拍手。FACTが去り、熱気を帯びたまま静けさに包まれたステージ。「あと30曲やって!」「もっかい最初からやって!」という無茶振りの絶叫がこだまする中、ステージは沈黙を続ける。

 そして暗転から光が射し、再びFACTは颯爽とステージに。アンコール曲「Pressure」「stretch my arms」を爆発させた後、「やっぱり、みんな一緒に歌ってくれたりするとヤベえな。今日は本当にありがとう」「ここにいる全員で声を下さい!全力でいきましょう!」続けざまに「purple eyes」を演奏、そしてFACT最後のメッセージ「泣いても笑っても次の曲で最後です! 今日は一日ありがとうございました!」という力強い声がフロアに響き、「rise」を演奏。曲中、終始金色に輝く光を背に演奏するFACTの姿。「最高のクライマックス」が会場内全ての人間の胸に焼き付いた。

 公演を終え、会場出口でFACTラストアクトの余韻に浸るオーディエンス。狂熱のライブに興奮冷めやらぬ者、清々しい表情と共に涙を流す者、ただその場に佇み動かない者。16年間、国内外のロックシーンを駆け抜けたFACTの音楽。約2時間のライブで様々な思いがFACTと共に胸に刻み込まれ「FACT “KTHEAT” JAPAN TOUR 2015」東京公演TOKYO DOME CITY HALLライブは幕を閉じた。

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