Do As Infinity。16周年記念ライブでみせた真価(撮影・田中聖太郎)

Do As Infinity。16周年記念ライブでみせた真価(撮影・田中聖太郎)

 【ライブレポート】音楽ユニットのDo As Infinityが10月12日に東京の日比谷野外大音楽堂で、彼らの16周年記念ライブ『Do As Infinity 16th Anniversary 〜October's Garden〜』を行った。この日は音楽プロデューサー、アレンジャーとして有名なベーシストの亀田誠治が彼らをサポート、記念すべきこの日をさらに盛り上げた。Do As Infinityはボーカリストの伴 都美子、ギタリストの大渡_亮によるユニット。1999年にデビューを果たし、2000年には当初オリジナルメンバーだったコンポーザー、ギタリストの長尾 大が脱退。以降二人で活動を続け、2005年には一時解散したものの2008年に復帰、全27枚のシングルと11枚のオリジナルアルバムをリリースし、今もなお精力的に活動を続けている。

伴 都美子(撮影・田中聖太郎)

伴 都美子(撮影・田中聖太郎)

 さまざまな音楽が氾濫し、なおかつ音楽を作り出す技術や情報網も発達し、以前と比較すれば驚くほど安価で短期間にハイクオリティな音を作り出すことが出来るようになった昨今、また音楽との関わり方も変化し、さまざまなスタイルでの音楽活動が出来るようになった現代では、逆にグループとしての活動を続けることは難しく、10年前後で活動休止、あるいは解散などその歩みを止めてしまう例も少なくない。Do As Infinityというグループが16年という長きに渡り多くの人を惹きつけてきた理由とは? 今回はこの日行われたライブのレポートより、その真意を探ってみた。

 また、彼らは現在、16週連続配信するプロジェクトを展開している。その第5弾で11月18日にリリースされた「Week! [2 of Us]」(参照記事・Do As Infinity、16周年公演ラスト曲「Week!」新アレンジ語る)は、同公演のラストナンバーとして披露されたものだ。オリジナルはTBS系テレビドラマ『嫁はミツボシ。』主題歌で、2001年5月30日にリリースされた9thシングル。ライブでのイメージを土台に置きつつ、大渡 亮(g)いわく「リゾート」なるアレンジを取り入れており、この曲が持つ明るい雰囲気をさらに強調している。伴 都美子(vo)は当時を「記憶がないぐらい一番忙しい時期に出した曲ですね」と振り返っている。長い歳月を経て特別な存在へと成長している同曲の移り変わりを16周年記念公演、そしてアレンジが加えられた配信曲で感じられるであろう。(取材・桂 伸也)

静かにステージに、リラックスした雰囲気

大渡 亮(撮影・田中聖太郎)

大渡 亮(撮影・田中聖太郎)

 秋も深まるこの時期の夕暮れ。少しく空気の冷たさも感じられ、もう日もすっかり落ちようとしていた時間に、会場に集まった人たち。年齢層はさまざまであるが、中には小さな子供の手を引く親子連れの姿も見られた。ステージには、シダの葉などをデコレートしたトロピカルな「ガーデン」が、Do As Infinityの面々が登場するのをじっと待っていた。ステージのスタート直前、大きな音でTHE BEATLESの「Octopus's Garden」が会場に鳴り響く。その後は静寂の中、鳥のさえずりをちりばめたSEへ。そしていよいよステージのスタート。会場の暗転とともに客席から大きな声援と拍手が沸き起こった。そして彼らは静かに、ステージに現れた。

 「どうぞゆっくり楽しんでください。最後までよろしくね!」と伴が最初の挨拶を告げた。横には大渡がいる。そして、ステージは幕を開けた。Do As Infinityの二人がステージに登場すると同時に、観衆は総立ちで彼らを迎えた。対して伴も大渡も、そして彼らを支えるミュージシャンたちも全て椅子に腰掛け、リラックスした雰囲気でプレーがスタート。アコースティックギターにアップライトベース、バイオリンにパーカッション、そしてピアノと、序盤はアコースティックセットによるゆったりとしたステージが披露された。

Do As Infinityという明確な存在

16周年記念ライブ(撮影・田中聖太郎)

16周年記念ライブ(撮影・田中聖太郎)

 オープニングナンバーは「aurora」。切ないメロディとハーモニー、その詞に込められた、複雑な気持ちの動き。観衆は手拍子を入れるわけでも、大きな歓声を上げるわけでもない、しかしステージの彼らの動きにじっと集中し、彼らの音に耳を傾けていた。このセットでプレーされたのは、彼らのデビュー曲「Tangerine Dream」を含め8曲。シンプルなアコースティックサウンドの中で、伴の紡ぐメロディはいつもサウンドの中心にあり、Do As Infinityというグループが何者であるかをしっかりと指し示していた。切ないメロディ、明るいハーモニー、そして速く、ゆったり。曲にはそれぞれさまざまなイメージがあったが、どの曲にもDo As Infinityの色彩感が垣間見られた。

 8曲をプレーし終えると、ステージは照明を落とされ一時転換の時間へ。そしてギターとベースはエレクトリックへ、パーカッションはドラムへと移り変わった。そしてファンキーなリズムの「Another」からロックな8ビートを打ち鳴らす「夢の終わりに」へと続く頃には、観衆も徐々にそのリズムに身をゆだねながら、体を温めていた。さらに彼らがかつて過去のツアーでのイメージより作ったという曲「ワンダフルライフ」、スウィンギーなグルーブ感たっぷりの「Holiday」と、気持ちがウキウキしてくるようなプレーが続くと、観衆の動きも歓声も、また一段と大きくなっていった。

この日の到来を歓迎した「Beautiful Sky」

 一時伴がステージを掃けると大渡が「皆さん、声出るじゃないですか!」と会場の雰囲気の程よい気持ちを確かめるように、観衆に語りかけた。そしてここでは一つのお楽しみの時間。大渡と亀田の趣向でTHE BEATLESの「Octopus's Garden」を披露。このライブのタイトルでもある「October's Garden」に引っ掛けた、心憎いまでの演出だ。この曲が少し熱を帯びた会場を少しクールダウンし、再びステージに戻った伴とともに「蒼生」へ。先程の元気なサウンドとは打って変わって、クールでシリアスな空気が再び会場をつつんだ。

 曲ごとにそんなさまざまなサウンドの変化を展開する中、秋晴れの空を眺めながら、伴は語った。「いつもは『Infinity Sky』って呼ばれているんだけど、雨が降るんだよね。でも今日は『Beautiful Sky』!」まるで彼らを歓迎するかのように、夜まで晴れ渡っていた空。そして彼らは、これからの決意を表すかのように、いよいよライブはクライマックスへ。ロックな16ビートを響かせる「Oasis」から、観衆はリズムに合わせてさらに激しく体を揺らす。「ありがとう、日比谷!」伴がそんな観衆に感謝の言葉を投げかけ、ラストの「本日ハ晴天ナリ」へ。彼らの、そして彼らのファンのこの日は、まさしくこの時のためにあった。そう思えるくらいに大きな波動が会場から沸き起こった。そしてエンディング。さらに盛大なアンコールに迎えられ、「冒険者たち」「Week!」を披露。「ありがとう!」その言葉を何度も繰り返す伴。そして「また会う日まで!元気でね!」という言葉とともに、彼らはステージを去った。

ワインのように熟成された結果

16周年記念ライブ(撮影・田中聖太郎)

16周年記念ライブ(撮影・田中聖太郎)

 ある時は腕を振り上げ、大きな歓声を上げてステージから発せられるリズムに身をゆだね、そしてまた別の時には静かに、しっかりとDo As Infinityのメロディとハーモニーに身をゆだねていた、この日会場を埋めた多くの観衆。その音の中心には、どこにも伴の歌い上げるメロディがしっかりとその存在感を示していた。それは、16年という長きに渡り彼らが歌い続けたことで、彼ら自身の歌や曲が、味わい深いワインのように熟成された結果ともいえる。彼ら自身に先天的な特質があったというより、その歩みによってこそ、彼らの旨味は出来上がってきた。

 伴は現在妊娠しており、今年末には出産を経験する予定だという。彼女の歌が、この日も時に多くの観衆を惹きつけ、じっくりと曲の雰囲気に浸らせたのは、長きに渡って歌い続けたことに加えて、そんな人生の経験で得たものが程よく影響したとも考えられる。この日、今後もその歩みを続けていくことを誓ったDo As Infinity。彼らの歌には長い間に渡って「聴いていたい」と思える魅力が詰まっている。それはこれまでの歌にあり、そしてきっとこれからも輩出し続ける歌にも同様にあり続けることだろう。未だその美味に触れたことのない人には、是非一度味わってみることをお勧めしたい。

セットリスト

01. aurora
02. Field of dreams
03. 真実の詩
04. Heart
05. Tangerine Dream
06. 陽のあたる坂道
07. For the future
08. under the sun
09. Another
10. 夢の終わりに
11. ワンダフルライフ
12. Holiday
13. Octopus's Garden
14. 蒼生
15. 生まれゆくものたちへ
16. 1/100
17. Oasis
18. 遠くまで
19. We are.
20. 本日ハ晴天ナリ
encore
21. 冒険者たち
22. Week!

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