INTERVIEW

佐々木蔵之介×中川大志

「正解のない迷路だった」完全オリジナル脚本にかけた覚悟:「ALIUS -特定事象捜査ファイル-」


記者:編集部

写真:村上順一

掲載:26年07月25日

読了時間:約7分

 佐々木蔵之介と中川大志が、連続ドラマW-30「ALIUS -特定事象捜査ファイル-」(WOWOW7月19日午後10時〜)に出演する。警視庁捜査一課の佐野省吾を演じる佐々木は、2002年の『TOYD』以来24年ぶりにWOWOWオリジナルドラマへ帰還し、初主演を飾る。中川は科警研から出向中の研究員・神崎透流を演じる。本作は完全オリジナル脚本で描く新作であり、「ALIUS」と呼ばれる謎の存在をめぐり、科学では説明不能な連続殺人に挑むクライムサスペンスだ。インタビューでは、完全オリジナル脚本に臨む姿勢から、「冷凍庫のようだった」と語る極寒の中での撮影、役者としてのお互いの印象について聞いた。(取材・撮影=村上順一)

どれほどのリアリティを持ってこの世界に立てばいいのか

佐々木蔵之介×中川大志

――本作『ALIUS -特定事象捜査ファイル-』は、完全オリジナルのクライムサスペンスでありながら、SF要素も含んだ非常に野心的な作品です。最初に脚本を読まれた際、どのような「覚悟」を決められたのでしょうか?

 佐々木蔵之介 正直なところ、設定を聞いた瞬間に「WOWOWさんは、オリジナル作品でなんて壮大なことをやろうとしているんだ」と圧倒されました。どれほどのリアリティを持ってこの世界に立てばいいのか、自分はどう立ち回ればいいのか。これまで多くの現場を経験してきましたが、これほど「チャレンジングだ」と感じた提案は珍しい。まあ、結局のところ、その面白さに抗えずに受けてしまったんですけどね。

 中川大志  僕はその「説明のつかなさ」にワクワクしました。単なる刑事ドラマに収まらない“もう一つの要素”――これこそが作品の核であり、ここをお客さんにどうリアリティを持って観てもらえるかが僕たち俳優の最大の課題でした。WOWOWらしい重厚なクオリティの中で、今までにないサスペンスができるという確信が、最初からありました。

 佐々木蔵之介  山本監督とは以前もご一緒していますが、監督はどれほど現場が過酷でも決してテンパらず、常に優しく、かつ論理的に進めてくれる。そんな監督への信頼があったからこそ、この「正解のない迷路」に一歩踏み込むことができました。撮影中も、自分が演じる佐野という役に戸惑いながら、「これはあり得るかもしれない」というリアリティの境界線を、一進一退しながら探っていくような日々でした。

――お二人の役どころのコントラストが絶妙です。佐々木さん演じるベテラン刑事・佐野と、中川さん演じる科警研(警察庁科学警察研究所)からの出向組・神崎。この「水と油」のような二人が、どのように通じ合っていくのかが見どころの一つですね。

 佐々木蔵之介  佐野は、自分の足と目と耳で稼いだ情報しか信じない、いわば「昭和の現場主義」を地で行く男です。一方で中川くん演じる神崎は、全く異なる出自を持つデジタル世代のエリート。僕自身、佐野というキャラクターをどう成立させるか悩みましたが、現場で中川くんから投げかけられるセリフや熱量、繊細な機微に触れることで、ようやく佐野の輪郭が形作られていったと感じています。

 中川大志  神崎は警察組織の一員ではありますが、刑事たちとは全く毛色が違います。現場の規制線の内側に入ること自体、彼にとってはどこか新鮮で。だからこそ、現場でパシャパシャと写真を撮りまくって、佐野さんをイラつかせたりもする(笑)。実はこの「写真を撮る」という動作は、衣装合わせの時に僕から提案させていただいたアイデアなんです。

 佐々木蔵之介  神崎の「社会科見学」みたいな振る舞い、絶妙に鼻につくんですよ(笑)。でも、それがいい。

 中川大志  他にも美術さんと相談して神崎のバッグの中身をかなり作り込みました。研究員ならではのガジェットが詰まっているんですが、実は彼は仕事中によく「ラムネ」を食べているんです。パソコンに向かい続けている研究員特有の癖というか。カバンから何が出てくるのか、注目してもらえたら面白いかもしれません。

「VFXに頼らない」という狂気的なまでの執念

佐々木蔵之介×中川大志

――本作の特筆すべき点は、特殊な能力や現象を描くにあたって、安易にVFX(CG)に頼っていないことだと伺いました。

 佐々木蔵之介  そうなんです。何かしらエフェクトを後から乗せるのは簡単です。でも監督はそれを拒否した。目に見えない「何か」が起きているという恐怖を、現場の空気感、光の当たり方、そして僕たちの芝居だけで表現しようとしたんです。

 中川大志 それは演じる側にとっては、とてつもないプレッシャーでもありました。後から足される映像に助けてもらうのではなく、その場で起きていることとして成立させなければならない。

 佐々木蔵之介 第1話に登場する「喉に刺さったナイフ」の死体一つとっても、監督とスタッフのこだわりは凄まじかった。死体に刺さった4本のナイフが、CGではなく物理的に、かつ完璧に「ピンと立っている」ように、現場でミリ単位の調整をして丁寧に作られていたんです。その刺さり方の「異様な美しさ」を見たとき、この作品が目指しているリアリティの高さに身が引き締まる思いがしました。ナイフの本数や角度にまで注目して見てもらえると、スタッフの執念が伝わるはずです。

 

極寒の地下、血のりにまみれた1ヶ月が育んだ「同志感」

連続ドラマW-30「ALIUS(アリウス) -特定事象捜査ファイル-」©WOWOW

 ――2月の撮影は相当に過酷だったようですね。

 佐々木蔵之介  ロケ地となったのは、普段使われていないビルの地下。スタッフの間で「あそこは冷凍庫だ」という噂が広まっていて、実際に行ってみたら本当にその通りでした(笑)。

 中川大志 蔵之介さんがいらっしゃった日は、心なしか寒さが和らいだ気がしましたが、それでもやっぱり過酷でした(笑)。

 佐々木蔵之介 現場には常に血のりがあって、朗らかなシーンなんて片手で数えるほどしかない。精神的にも肉体的にも、ずっと「すさんだ状態」でしたね。唯一の「癒やし」は、佐野の元妻との回想シーンくらいでした。監督も「朗らかなのはここだけです」って断言してましたし。 でも、その過酷さが良かった。二人で飲みに行ったりする余裕なんて全くなかったけれど、この「難解なシナリオと正解のない問い」に立ち向かっているという強烈な「同志感」がありました。言葉を交わさずとも、中川くんの佇まいから「次はこう来るか」という刺激を常にもらっていました。

 中川大志  僕は蔵之介さんの現場での佇まいを見ていて、俳優としての「年輪」を強く感じました。喋っていない瞬間の圧倒的な存在感。完成した映像を見たとき、現場で自分が最前列で見ていたはずの蔵之介さんの芝居が、映像を通してさらに深みを増して拾い上げられていて。改めて「この背中を追いかけていきたい」と強く思わされました。

 

「役は引きずらない」――俳優・佐々木蔵之介の現在地

佐々木蔵之介×中川大志

 ――これほど濃密な役を演じると、私生活への影響も大きそうですが、いかがでしょうか?

 佐々木蔵之介  僕は全く引きずりません。撮影が終われば、スパッと切り替えられます(笑)。

 中川大志  さすがです(笑)。僕は少し気分が引っ張られてしまうこともあるんですが、蔵之介さんのその潔さを見ていると、表現者としての強靭さを感じます。

 佐々木蔵之介  でも、今回の作品を経て、自分の中で一つ扉が開いた感覚があるんです。「どう立ち向かえばいいか分からないこと」に取り組む面白さを、改めて知ってしまった。今は「もっと難解なやつ、どんと来い!」という気分なんです。24年前の自分にはできなかった、今の自分だからこそ楽しめる挑戦がここにはありました。

 (おわり)

 【佐々木蔵之介】
 スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole inc.) 
 ヘアメイク:髙橋幸一(Nestation)

 【中川大志】
 スタイリスト:川地大介 
 ヘアメイク:KUBOKI(aosora)

 ■作品情報

 連続ドラマW-30「ALIUS -特定事象捜査ファイル-」
 2026年7月19日(日)WOWOWで放送・配信スタート

 <スタッフ、キャスト>

 監督: 山本大奨 脚本:小島聡一郎
 プロデューサー: 井口正俊(WOWOW)、稲熊洋介(楽天)、中澤研太(東北新社)
         鳴海波奈子(WOWOW)、安藤有希子(楽天)
 原作: ALIUSプロジェクト/WOWOW・楽天
 制作プロダクション: 東北新社
 製作著作: WOWOW
 出演:佐々木蔵之介
   中川大志 恒松祐里
   長谷川初範 猪塚健太 池田良 松浦祐也 大河内浩 山中崇 / 坂井真紀 ほか

この記事の写真
村上順一

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事