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女優の高梨臨が、映画『コットンテール』に出演。高梨は錦戸亮演じる慧の妻、さつきを演じる。本作は日本人キャストとイギリスの新鋭監督パトリック・ディキンソンがタッグを組んだ国際的な合作プロジェクト。東京からイギリスへと舞台を移しながら、家族の愛と再生を紡ぎ上げたロードムービー仕立てのヒューマン・ドラマに仕上がっている。本作は兼三郎(演・リリー・フランキー)の妻・明子(演・木村多江) が亡くなり、明子の遺言状に書かれていた「イギリスのウィンダミア湖に散骨してほしい」という願いを叶えるため、兼三郎と慧一家ウィンダミア湖へ旅立ち、旅先での家族の絆を描くストーリー。インタビューでは、イングランド北西部に広がるウィンダミア湖の美しい自然の風景が印象的だったと話す高梨に、撮影の裏側や作品を通して感じたこと、海外旅行での失敗談について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】
イギリス人の監督が描く日本の家族
――『コットンテール』に出演が決まったときの心境はいかがでしたか。
撮影は2年半くらい前なんですけど、コロナ禍になってしまい、海外での撮影なんて夢のまた夢だと思っていて、中止になると思っていたのですが、撮影が決まって参加できる喜びはすごく大きかったです。そんな気持ちのなか参加させていただいたのですが、現地のスタッフさんも優しくしてくださいましたし、監督も一生懸命にコミュニケーションを取ってくださいました。
――監督とのやりとりは通訳さんを通して行われていたのでしょうか。
監督は日本語がすごくお上手で、通訳さんなしでやり取りできるレベルでした。監督とキャストのみんなで話し合いながら、日本語の台本と英語の台本を読み比べをしたり、みんなと擦り合わせながらいい作品作りができたと思います。
――高梨さんが演じられたさつきは表情が重要な役だなと思ったのですが、実際演じられてみていかがでした?
さつきは思ったことを何でも言うようなタイプではないのですが、けっして気が弱いわけでもないんです。私はリリーさん演じる兼三郎に対して、もう少し仲良くしてくれないかな、といった雰囲気のお芝居をするつもりで臨んだのですが、リリーさんが強い口調でセリフを言ってくるので、それをリアルな反応で返していました(笑)。
――リリーさんの演技に引っ張られたんですね。
はい。監督からもリリーさんとのやりとりはもっと強くやってほしい、というリクエストがありました。監督と話し合いながら最終的に2人は険悪な関係になりました。
――高梨さんが本作のストーリーから感じたことは?
どの国も超円満という家庭は少ないと思っていて、本作のようなことはよくすごくあると思うので、リアルな映画だと思いました。日本の家族、父と息子の微妙な感じなど、イギリス人の方がどういう風に見えているのか楽しみでした。
――タイトルの『コットンテール』は『ピーターラビット』から付けられたとのことですが、高梨さんは『ピーターラビット』に思い入れは?
母が好きだったので、マグカップとかそういったものは家にありました。でも、私はお話もほとんど知らなかったので、今回(劇中で)絵本の読み聞かせをしていくので、そこでストーリーを知りました。
――夫役の錦戸さんとの共演はいかがでした?
過去に共演したことがあり、久しぶりの共演になりました。錦戸さんはすごく自由人で、役に関しても自分はこう思うとか言わないタイプです。みんなで話し合ったりすることはありますが、役について個別に相談をすることもほとんどないですし、現場では錦戸さんのお芝居についていく感じでした。なので、お話といえば「今日、何食べた?」とか他愛もない話をしていました。
――高梨が一番印象的なシーンは?
ウィンダミア湖でウサギを追いかけるシーンが印象に残っています。普通の旅行で今回のような地方はなかなか行かないので、撮影でこの場所に来られて良かったです。幸せな気持ち、前向きな気持ちになり家族もうまくいくんじゃないか、と思わせてくれるような景色で、すごく幸せな気持ちになったのを覚えています。
――家族といえど、人を理解するというのはすごく難しいことなんだと映画を拝見して改めて思いました。高梨さんは人を理解する、理解したいというところで、大切にされていることはありますか。
自分も難しいなと思っていて、人と接していく中で何が大切なんだろうとすごく考えます。人を信じるけど期待をしすぎてはダメだなと思うこともあります。その中で人に期待をしたくなってしまうけど、思い通りに行かなかったときに悲しい気持ちになったりしますが、そういったこともちゃんと受け入れることが大事だと思っています。その中で本当に信頼できる人って、嫌われてもいいから本当のことを言える人、自分をさらけ出せる人だったりするなと思います。
助けてと言えるところを必ず決めてから旅に出る
――イギリスでの撮影でしたが、高梨さんは海外旅行での失敗談はありますか。
1人で行くぐらい海外旅行は好きなんです。初めて1人でニューヨークに行った時のお話なのですが、「なるようになるさ」的な感じで、ホテルしか予約しないで行ってしまいました。その時はやることがなさすぎて怖くなったのを覚えています。
――無計画すぎてしまったんですね。
無計画で行くと街をぶらぶらして終わりになります。また、ニューヨークの街に出てすぐに20ドルほどぼったくられてしまったのも関係しています。それが原因で怖くなって外出できなくなり、急いで誰か友達がニューヨークにいないか探しました。
――いきなり洗礼を受けてしまったと。
そうなんです。それからは現地に日本人の友達がいるところに行くようにしています。助けてと言えるところを必ず決めてから旅に出るようになりました。
――イギリスにも1人で行かれたことはありますか。
はい。その時はすごく有名なホテルに行ってアフタヌーン・ティーを楽しんだり、私は『ハリー・ポッター』が好きなので、写真を撮りに行ったりしていました。映画の最後の方はちょっと追いきれてなかったのですが、最初の頃は単語帳を使って魔法を覚えていたぐらいハマって、本気でホグワーツ魔法魔術学校に入りたいと思っていました(笑)。
――ちなみに今回イギリスでのオフの時間はどんなことをされていたんですか。
リリーさんは撮影ですごく忙しそうにしていましたけど、私はロンドンでの日々はわりと時間があったので、朝起きてホテルの目の前にあった大きな公園で、コーヒーとパンを白鳥を見ながら朝食を食べていました。その公園で知らない人から話しかけられたので、私はカタコトの英語で喋って楽しんでました(笑)。
――コミュニケーション能力が高いですね! ビートルズ関連の場所には行きませんでした?
私は行かなかったのですが、錦戸くんは有名なアビー・ロードに行っていたみたいで、あとで写真を見せてもらいました。
――さて、本作『コットンテール』の隠れた見どころがあれば教えてください。
リリーさんが台本を読んだ時と実際に演じられているのを見た時に、あまりにも自分が想像していたものとは違いすぎて印象に残っています。リリーさんが演じるとそれはいい意味でリリーさんなんだと感じたので、お芝居に注目して観るとおもしろいと思います。また、隠れてはいないのですが、ウィンダミア湖がとても綺麗に撮られているところと、日本のシーンでもイギリス人が映す日本、という視点で観るとまたちょっと違った楽しさがあると思います。たとえば冒頭にお寿司屋さんのシーンがあるのですが、それも日本人の監督が撮るのとは違った趣があると思いました。
――最後にこの作品を観てくださった方が、どのようなことを感じとってもらえたら嬉しいですか。
私は今回みんなについて行っているような感覚、皆さんの中にさつきとして溶け込んでいけたらといった気持ちで参加していました。家族と美しい景色が溶け込むようなシーンはホッとすると言いますか、希望が見える感じがありとても温かい気持ちになりました。その気持ちを皆さんにも感じていただけたら幸せです。
(おわり)
ヘアメイク:清水恵美子(マロンブランド)
スタイリスト:有本祐輔(7回の裏)
作品情報
出演:リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨/恒松祐里、工藤孝生/イーファ・ハインズandキアラン・ハインズ
監督・脚本:パトリック・ディキンソン
製作プロダクション:マグノリア・マエ・フィルムズ、オフィス・シロウズ
製作総指揮:ガブリエル・タナ
プロデューサー:押田興将、キャロリン・マークス・ブラックウッド、エレーヌ・テオドリー
配給:ロングライド
2022年/イギリス・日本/日本語・英語/94 分/2.39:1/カラー/原題:COTTONTAIL
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