INTERVIEW

北乃きい×森崎ウィン

映画『おしょりん』撮影での発見とは


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年11月28日

読了時間:約6分

 北乃きいと森崎ウィンが、映画『おしょりん』(公開中)に出演。北乃は増永五左衛門(演・小泉孝太郎)の妻・ むめ、森崎は五左衛門の弟の幸八を演じる。日本産メガネの95%を生産している福井県。藤岡陽子氏の『おしょりん』(ポプラ社)を元にした本作は、明治時代の福井を舞台に、豪雪地帯のため冬は 農作業ができず収入の道がなくなる村を助けようと、メガネ工場をゼロから立ち上げた増永五左衛門と幸八の兄弟と、二人を信じて支え、見守り続けた妻・ むめを描いた家族の愛の物語。インタビューでは、本作の見どころから、撮影を通して感じたことについて主演を務める北乃きいと、森崎ウィンに話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

0から1にする難しさを感じた

©「おしょりん」制作委員会

――脚本を読んだときの印象は?

北乃きい 明治時代がすごく好きで、本作の背景が明治時代だと知ってすごく嬉しかったです。ただ、実在されていた方の物語なのでプレッシャーもありました。自分がドキュメンタリー、実話に基づいた話しがすごく好きなので、脚本を読んでドキュメンタリーとストーリー性が組み合わさった感じで、オール福井ロケと聞いていたのでワクワクしていました。また、撮影中に増永家の方にお会いさせていただいて、リスペクト持って演じさせていただきました。

森崎ウィン 福井県のメガネは誰もが知る産地であることはもちろん知ってはいたのですが、脚本を読んでその背景を知り、歴史をより知ることができました。すごく勉強になり興味深かったですし、映画にすべき作品なんじゃないかとすごく感じました。そして、0から1にする難しさや一歩踏み出すことの大切さを改めて感じ、特にものづくりをする人にとってすごく力がもらえる作品になったと思います。

――撮影の裏側や隠れた見どころはありますか?

森崎ウィン う〜ん、隠れた見どころかあ...僕らも見落としてるかもしれない(笑)。むめと幸八の2人が10代だった頃のシーンが撮影初日だったのですが、ロケ現場に行くまでも大変で。そのシーンはよく見ると2人の息があっているようであってないみたいな感じ、初めて会った感がリアルに出ていて、隠れた見どころの一つです。また、あのシーンで出てくる花は造花なのですが、すごくリアルにできていて、本物と見間違えると思います。

北乃きい 子どもが本を逆さまに読んでいて、みんなはその子が視力が悪いと気づいていないのですが、むめが視力の悪さに気づくというシーンです。演じていた子は実際視力は悪くないので、そういうふうに演じるのがすごく大変そうで、本を逆さにして読む練習をしていました。自然な感じで見せるには地道な努力が必要で、何回も撮り直しました。

――さらっとやっているように見えますが大変だったんですね。現場の雰囲気はいかがでした?

北乃きい 真剣なお話しなので、撮影も真面目な現場でした。小泉孝太郎さん、駿河太郎さんもすごく真面目で。クランクアップしてから、森崎さんとはラジオドラマで共演させていただく機会があって、そのときはいろいろ遊んでました(笑)。森崎さんに投げかけるといろいろな反応が返ってくるのでおもしろくて。一見「僕、考えてませんよ」みたいな雰囲気なのですが、けっこうプランを練ってきてるんです! 実は真面目なんだなと、そういったギャップがありました。

森崎ウィン あはは(笑)。なんとなくお互いの存在は知ってはいるけど、会うのは今回の撮影が初めてで。僕の中で脚本を読んで、北乃さんは主演だしすごく大変だろうなと感じていたので、あまり絡んでほしくないのでは? と思いながら撮影に入ったのですが、すごく気さくな方で同じ年齢というのもあり喋りやすかったです。当たり前ですがプロ意識もすごく高いですし、感じたこと思ったこともちゃんと言います。男の俳優さんたちに囲まれながらも真ん中でバンと立っている姿が素晴らしかったです。方言も覚えなければいけないすごく大変だった中で、周りのこともしっかり見ているし、みんなのことを気にかけてくれるから、座長って大事だなと改めて思いました。

北乃きい もうこれ以上ない答えですね。(笑)。嬉しいです。

森崎ウィン これは模範解答でしょう(笑)。落とすわけではないのですが、北乃さんは人の話を聞いているようで聞いてないところもあります(笑)。

北乃きい 森崎さんはすごく社交的なんです。幸八のどんどん繰り出していく感じと森崎さんがすごく合っています。

森崎ウィン 今回キャスティングされた方は、天才だと思います。もしかして当て書きなんじゃないかと思うくらいキャスト全員が役とピッタリでした。

――今、お2人のやり取りがおもしろいのですが、現場では今のような雰囲気ではなかった?

北乃きい 現場では集中しないといけなかったので。今のような感じになれたのは、ラジオドラマで共演する機会があったからだと思います。他のキャストの方たちとは、撮影が終わってからお会いできていないのですが、森崎さんだけご一緒する機会が続いたんです。今まで会う機会なんてなかったのに不思議だなって。

森崎ウィン うんうん。何回かお会いして、姉弟役とかやったらすごくおもしろいんじゃないかと思った。

北乃きい さっきメイクさんに、幼馴染みみたいだねって言われました(笑)。

対峙する相手によって化学反応がおきる

村上順一

北乃きい×森崎ウィン

――撮影を通して新しい発見はありましたか。

森崎ウィン 作品との出会いというのは自分の人生観に影響を与えるものだと思っていて、共演者の方々から学ぶことがすごくあります。今回で言えば歴史的なもので、実在する人物、その方々の再現VTRを作るというわけではないですし、歴史的な教材を作るわけでもなくて。映画なので脚本があって伝えたいものがあって、そこに僕ら役者が描かれている役を演じるものだと僕は思っています。本作は明治時代だから電線がないところを探して撮影したりとか、衣装がキレイに見えるようにするための所作一つとってもいろいろ学べることがたくさんありました。

――北乃さんの発見は?

北乃きい 役から発見できることは毎回あります。台本に「涙を流す」といったト書きがあるのですが、ト書きがないところでもそういった感情が出てくることがあります。それは本作でもありました。たとえば涙を流すところは決まっていますが、そうではないところから感情が出てくることもあって、それが対峙する相手によって化学反応がおきます。それは小泉さんとのシーンでも感じましたし、森崎さんと2人でホオズキを見ているシーンでもそういう感覚がありました。

――すごく印象的なシーンでした。

北乃きい あのシーンはすごく距離が近かったです。

森崎ウィン そうそう、本当にすごく近かったよね。

北乃きい 映像見るとそんな風に感じないと思うのですが、寄り目になっちゃうぐらいの近さで。距離が近かったからこそわかる、森崎さんの目から台本に書いてあること以上の感情を受け取りました。また、新人の役者さんの姿勢からすごく勉強になることもあります。

森崎ウィン 子どもがすごいんです。今回は子役はいなくて、(オーディションで選ばれた)地元の子どもたちなので、長く撮影を続けていると、普通はどんどんテンション下がっていくものなのですが、テンションを保ってくれて。

北乃きい 1年目しか出せないものがあって、そのときの年齢やこの人じゃなければみたいなものがあるので、すごく勉強になります。

(おわり)

作品情報

©「おしょりん」制作委員会

「おしょりん」

出演:北乃きい、森崎ウィン、駿河太郎、高橋愛、秋田汐梨、磯野貴理子、津田寛治、榎木孝明、東てる美、佐野史郎、かたせ梨乃、小泉孝太郎
監督:児玉宜久
原作:藤岡陽子「おしょりん」(ポプラ社)
脚本:関えり香 児玉宜久
エンディング曲:MORISAKI WIN「Dear」(日本コロムビア)
製作総指揮:新道忠志
プロデューサー:河合広栄
ラインプロデューサー:川口浩史
撮影:岸本正人
照明:桑原伸也
録音:林昭一
整音:瀬川徹夫
記録:目黒亜希子
編集:村上雅樹
美術:黒瀧きみえ
装飾:鈴村高正
衣装:田中洋子
ヘアメイク:西村佳苗子
助監督:宮崎剛
制作担当:相良晶
制作プロダクション:広栄 トロッコフィルム
配給:KADOKAWA
©「おしょりん」制作委員会

この記事の写真
村上順一
村上順一

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事