INTERVIEW

池田エライザ

「撮影中は常に重圧」娘を誘拐された母親役:映画『おまえの罪を自白しろ』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年10月20日

読了時間:約9分

 池田エライザが、映画『おまえの罪を自白しろ』 (10月20日公開)に出演。宇田家の長女で娘を誘拐されてしまう麻由美を演じる。同作は真保裕一の同名小説を、映画『舞妓Haaaan!!!』など数々のヒット作を生み出してきた水田伸生監督が映画化 。出演者には、疑惑を抱える国会議員・宇田清治郎の次男であり議員秘書の主人公・宇田晄司役に中島健人、そしてその渦中の政治家・宇田清治郎役に堤真一、宇田家の長男・揚一朗役に中島歩、麻由美の夫・緒形恒之役に浅利陽介らが脇を固める。同作のストーリーは政治家一族の宇田家の孫娘が誘拐され、犯人から明日午後5時までに記者会見を開き、罪を自白しろというもの。誘拐事件をきっかけに明かされる罪とはなんなのか、犯人の目的とは? 壮大なスケールで描かれるタイムリミットサスペンス映画となっている。インタビューでは、本作の撮影の裏側から、いまだにお芝居は苦手だと話すその真意、活動の原動力について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

柚葉との思い出を構築していく時間は愛おしかった

村上順一

池田エライザ

――出演が決まった時の率直な心境は?

 自分の役はわかっていたので、自分の娘が誘拐されてしまったという喪失感があり、読み進めていくたびにすごくドキドキしながら震えて、とてもしんどかったの覚えています。

――かなり感情移入されて。

 脚本の素晴らしさもありますし、麻由美について物語の中で丁寧に描かれていることが伝わってきたので、彼女の痛みを感じながら読んでいました。

――娘が誘拐されるという過酷な役ですが、その気持ちをどのように自分に落とし込んで演じられたのでしょうか。

 事前に役について聞いて、台本を読んでいたら身構えていたかもしれないのですが、役の詳細を聞かずに、台本を読み始めたので身構えることはなかったです。子どもを産まないと母性を感じられないわけではないと思うのですが、産んだ経験がある人がもっている共通の何かがあると思っていて、それが自分は子どもを産んだ経験がないからこそ宇宙規模のミステリーでした。楽屋ではヘアメイクさんたちが子どもを連れてきてもOKという環境だったので、私は子どもを産んだ経験がある人がもっている共通の何かを探るため観察していました。

――実際に演じられていかがでしたか。

 自分の中から溢れる母性が辛くてしょうがないぐらい、最初に脚本を読んだ時はインパクトが強かったです。実際演じてみてもっと人に伝えられるレベルになるには、事実を作っていかなければいけないなと思いました。柚葉役の佐藤恋和ちゃんはすごくラブリーな子なので話していても楽しかったですし、その中でたくさん愛おしい部分見つけました。お家の中の美術、柚葉の部屋や彼女が描いたであろう絵であったり、宝探しのように見つけて、自分の中で柚葉との思い出を作っていきました。そうやって思い出を構築していく時間というのは撮影が始まってからもやっていて、それはすごく愛おしい時間でした。

――今回撮影を通して発見したこと、気づきはありましたか?

(C)2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

 畳の上でみんなであぐらをかいておしゃべりをすると、いつも以上に仲良くなれると思いました。家族役のキャストに加えて(事件を追う刑事・平尾を演じた)山崎育三郎さんがいた時もあったのですが、基本的に中島健人さん、堤(真一)さん、私と恋和ちゃんで、待機時間は畳の上で過ごしておしゃべりしていました。ちょっと遠いところでロケをしていたので、そういった環境だったからこそ繋がりを感じることができました。本読みなどで会う機会はあるけれど、それとは違う空間ってすごく大切なんだなと感じました。

――どのような話題で盛り上がりました?

 堤さんは道の駅で野菜を買ってきて「とうもろこし買ってきた」とか、中島健人さんと中島歩さんとは音楽の話が多かったです。お2人とも曲を作ったりされているのでその作り方について、「楽器は最初何からやり始める?」とか本当の兄弟みたいにしていました。休憩中に楽しい時間、思い出を作って、それを本番で分断するみたいな(笑)。

――あはは(笑)。中島さん、堤さんと一緒にお芝居をしてみて感じた印象は?

 堤さんは役柄と同じように常に私のお父さんのようでした。ちょっと不器用で普段は関西弁で、その関西弁の感じがよりお父さんって感じがして。お芝居では威厳がありましたし、宇田清治郎らしい理不尽で尊敬できないお父さんでいてくれました。中島健人さん演じる晄司は年子、双子のような近さを感じさせてくれました。きらめきを忘れずに頼もしくいようとしてくれる。現場にいる空間、時間の全てが作品に繋がっているような感覚で、それは彼らの配慮であり、技術であると思います。

――池田さん自身は自然と現場では妹というポジションでいられたんですか?

 設定として、そんなに年が離れていないというのが私と晄司にはあったので、中島歩さんが揚一朗兄ちゃんだとしたら中島健人さんは晄司といった関係性でした。分かり合えているような関係にしようと思っていたので、やり取りも少ないけど「俺が守る」みたいなことを言ってくれる。それに対して「どうやって?」と言えるような関係性だと思ったので、不思議なのですが、あまり意識せずにそうなっていったような気がしています。

初めて自分が出ているシーンで涙が出た

――完成した作品をご覧になった感想は?

 撮影中はずっと切なくて苦しくて、常に重圧がかかり続けてるような感じで、麻由美として不甲斐ないなとずっと思っていました。でも、完成した映画を観てみると「なんだ、このわくわくする映画は!」と思えて「私はUSJに来たのか?」みたいな感覚がありました。また、自分が出ているシーンで涙が出たのも初めての経験でしたし、それ以上に匠な編集と音楽と映像のギミック全てにワクワクしていました。撮影に入る前はストーリーの前後をあえて読まないようにしていたので、ジェットコースターに乗っているような気分でした。

――本作は柚葉ちゃんが誘拐されるところから物語がスタートされます。誘拐される前後で状況や心境が一変します。一変するというところで、現実ではコロナ禍も同じような感覚もあったのではないかと思います。池田さんはどのような心境の変化がありましたか。

 日々変わっていきますし、いくつも気持ちがあるということを自分で認めるようにしています。コロナ禍というみんなが我慢して耐えた時期が、いまなんとなく終わってきたかなという喜びもあれば、結局何を信じれば良かったんだろうか? 何が正解だったのか、という疑念がなくなっていないというのも事実です。

 いまは未来にちょっとワクワクするような気持ちもありますし、体調管理に気をつけなければと大人として律する気持ちもあります。とはいえ、先日夏風邪をひいてしまったんですけど(笑)。ただ、いくつもの気持ちがあっていいというところに今は着地しています。芸能人だし、時には不謹慎な顔をしていなければいけないのかなと思うのですが、あえてそういったものを定めないようになりました。

――その気持ちがお芝居に変化を与えたりする部分も?

 変化はないです。いまだにお芝居が一番苦手で... 日々勉強中です。音楽は幼い時から触れてきましたし、親がシンガーなのである程度環境も整っていたのですが、お芝居に関してはゼロからなんです。わからないところから始まって、なぜこんな簡単なことも出来ないんだって。毎日ちょっとずつ練習して少しはマシになったかな? と思えば、またできないの繰り返しなので、全然何も変わっていなくて。

――音楽と言えばB'zの「Dark Rainbow」が主題歌なのですが、聴いてみていかがでした?

 もうたまらないです。激アツの映画に激アツな歌が入っていて救われた感じがあります。「あっ、この気持ちで良かったんだ」と気づかせてもらえました。映画はすごくシリアスなお話だし、余韻に浸って色々向き合わなければいけないこともいっぱいあると思うのですが、一旦B'zを聴こう、気持ちが上がっていいんだと肯定してくれるものがありました。

――エンドロールでこの曲が流れる意味がすごくありますよね。

 すごく考えて曲や歌詞を書いてくださっていると思うので、私もまだ初号でしか聴けていないのですが、早く歌詞をしっかり読みたいです。(※取材時)

活動の原動力は世田谷ベース

村上順一

池田エライザ

――本作のタイトルにちなんで...。

 えっ! 私、罪を自白させられるんですか(笑)。

――はい(笑)。

 すごくダイエットをしているわけではないのですが、先ほどもお話に出ましたが、この前夏風邪を引いてしまい、私は風邪になるとなぜかすごくお腹が空くんです。今回は朝昼晩とステーキを食べました。 さらに次の日は牛丼を食べて、さすがに3日目は罪悪感にかられてポッキーにしたんですけど(笑)。風邪を引いていた1週間ぐらいは毎日チートデーのように食べ続けていました。世に自白することでもないのですが、自分では罪深いことをしたなと思っています(笑)。

――女優、歌手、モデル、映画監督などいろいろな活動をされていますけど、将来的に池田さんはどのような活動を考えていますか。

 どんな災害がこれから起こりうるかも分からないですし、断定してしまうのもよくないかなと思い始めて、自分が何年後何をしていたいかというのは、その都度の自分ができる範囲で人の役に立つことと捉えておいた方がいいなと思っています。決して引退宣言とかではなく、表現をすることだけが人の役に立つことではなくて、いま自分が持っているもので最大限力になれるのか、何か世の中が変わればまた別の形で力になれるように勉強をし続けることは大事だと思っています。力になりたいと思ったら、その形は変わっていくと思っています。

――今、活動の原動力になっているものはありますか。

 今の活動の原動力は所ジョージさんの秘密基地、世田谷ベースです。かっこいい、おもちゃ箱みたいな場所を私も作りたいなと思いました。他に原動力となるものには家族とか動物などボランティア活動もありますが、その中で世田谷ベースみたいな空間ってすごくいいなと思いました。アトリエ兼スタジオみたいな場所を作りたいということが、いま活動の原動力に繋がっています。

(おわり)

・スタイリスト/Shohei Kashima(W)

・ヘアメイク/豊田健治


・ワンピース 23,100円(JOSE MOON/JOSE MOON︎ 03-5770-9334)

・ピアス 15,400円(ripsalis/ロードス︎ 03-6416-1995)

その他スタイリスト私物

公開情報

タイトル : おまえの罪を自白しろ
出 演: 中島健人 堤真一
池田エライザ 山崎育三郎 中島歩 美波
浅利陽介 三浦誠己 矢柴俊博 柏原収史 中村歌昇 佐藤恋和 アキラ100% 山崎 一
尾美としのり 池田成志 橋本じゅん 春海四方 小林勝也 菅原大吉 升毅 平泉 成
尾野真千子 金田明夫 角野卓造
監 督: 水田伸生
脚 本: 久松真一
原 作: 真保裕一『おまえの罪を自白しろ』(文春文庫刊)
主題歌 : B’z「Dark Rainbow」(VERMILLION RECORDS)
配 給: 松竹
クレジット:(C)2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会
公 開 : 2023年10月20日(金) 全国公開

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