INTERVIEW

池田エライザ

「リアルを積み上げていく」ドラマ『DORONJO』の舞台裏


記者:村上順一

写真:片山拓

掲載:22年10月18日

読了時間:約6分

 池田エライザが、毎週金曜午後11時より放送・配信中のタツノコプロ創立60周年記念 『WOWOWオリジナルドラマ DORONJO/ドロンジョ』に出演。WOWOW連続ドラマ初出演・初主演となった池田エライザは、『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』の敵役、後のドロンジョとなる泥川七音を演じる。表裏一体の正義と悪をテーマに、“ドロンジョ”が“ドロンジョ”になるまでを描くダークエンターテインメント作品だ。インタビューでは、貧しく過酷な環境下で育ち、アマチュアボクシングの日本代表を目指す泥川七音にどのようにアプローチしたのか、過酷だったと話す撮影の舞台裏、夢や目標を持たない理由など、話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=片山拓】

すぐに役には入れなかった

片山拓

池田エライザ

――完成した作品を観て、どのような感想を持ちましたか。

 絶望的な展開のようで、生きる希望を感じていただける話になっていると思いました。3話くらいまでは泥川七音の生い立ちを描いているので、けっこうハードなんですけど、そこから切り開いていく格好いい姿が見れるので、まずは3話まで耐えてもらえればと思います(笑)。

――役作りで苦労したところは?

 すぐに役には入れなかったです。課題はどれだけ身体をボクシングに特化したものに変えていけるかだったので、どんどん猫背になっていきましたし、普段つかない肩にも筋肉がついていきました。そこに順応するまでに時間が掛かりましたね。クランクインしてからの3話までは精神的にもきつかったです。とにかく身体の中で痛くないところがなかったです。そして、人が正義を信じられなくなる、正義の価値観を積み上げていくまでの過程は大変でした。

――現場の雰囲気はいかがでしたか。

 現場にはボクシングの経験者の方やアクション俳優の方、さらにムエタイが強い方など屈強なお兄さんたちが沢山いて、空き時間に「ミット打ちやる?」とグローブを持ってきてくれるんです。私も「やるやる!」といった感じで、信じられないくらいボクシングに夢中でした。あと、のちのボヤッキー・飛悟(演:矢本悠馬)とのちのトンズラー・匠苑(演:一ノ瀬ワタル)の2人がふざけたりしているのを見て笑ってました。私一人のシーンはすごく暗かったのですが、それ以外の時間は楽しくやっていました。

――アクションシーンはいかがでした?

 ひたすら基礎の繰り返しでした。ワンカットでも空き時間があればミット打ちをしていました。実戦のシーンはアクションになるので、ボクシングとはまた違った頭の使い方をするんです。当たり前のことができるように一つひとつ丁寧にやっていくという感じでした。アクションシーンが多いので、すごくハードでした。

――褒められたりしました?

 皆さん褒めてくださるんですけど、それは信じていませんでした(笑)。調子に乗らないように謙虚な気持ちでやっていたんです。

――義足をつけての撮影でしたが、体験してみていかがでした?

 このドラマで義足は七音の恨みの根源と言えるものなので、感情を高ぶらせてくれるものが視界に常にあるというのは、七音を演じる上で大事なものでした。撮影現場に指導してくださる方がいらっしゃって、歩き方の指導などをしてくださったので、そうやってリアルを積み上げていくという作業でもありました。

――泥川七音は執念みたいなもので動いている感覚もあったのですが、そこは共感できたり?

 できなかったです。共感できないからこそ作品になったと思いました。そういう境地にいるからこそ、そこから這い上がる七音の強さが魅力になっているんじゃないかなって。私の場合はその人物に身体を貸すという考え方でいいと思っていて、共感はできなくても大丈夫なんです。今回の場合は七音がやりたいことに、私の筋肉を貸すよみたいな。毎回ズタボロになって帰ってくるんですけど(笑)。

――池田さんから見たドロンジョのイメージは?

 もともとのイメージは、『ヤッターマン』という作品の中で非常に愛されてきたキャラクターだと思います。愛される悪役と言いますか、応援される悪役の元祖だなと思いました。彼女から絶望しない、立ち上がる力というものを感じました。

 泥川七音は、なかなか味わえない人生の絶望から立ち上がるまでを、私たちの代わりに体現してくれていると思いました。自分の人生の選択肢の中で路頭に迷う、絶望を感じている人は多いと思います。踏み出せなかったり、壊れることが怖かったり、正直になれない、見て見ぬ振りをするしかないという人たちの代わり、七音が100%足掻いて、100%絶望している。ダークヒーローやダークヒロインというのは、そういった人たちの味方というイメージを持ちました。

 今回のドロンジョはオリジナルで描かれたもので、脚本も色んな段階があり、何度か書き直されているんですけど、生きることへの執着というのは、『ヤッターマン』のドロンジョと通ずるものがあると思いました。ダークなお話ではあるので、アニメとテンションは全然違うのですが、「絶望に負けない」というのは同じだと思いました。ボヤッキーとトンズラーもいるので、『ヤッターマン』らしいシーンもあるのですが、新しい解釈だと思って観てもらうのが一番いいと思います。

――実際演じられてイメージは変わりましたか。

 30年も前のキャラクターだけど、ドロンジョだけでも話ができるという、ドロンジョへの愛情を感じたのと、アニメとテンション感は違うけれど、観ている人に希望を与えたいという意志は感じました。

夢や目標はあえて持たない

片山拓

池田エライザ

――ところで池田さんは『ヤッターマン』以外のタツノコプロ作品への親しみはありますか?

 『ゼンダマン』は少し観たことがあったと思います。他の作品は私が生まれていなかったこともあり観れていないのですが、『ヤッターマン』は再放送で観たことがありました。色んな作品の元祖だと思っていて、この作品を元に色んなアニメがあると思うんです。

――『ヤッターマン』のファンに向けてどんなふうに観てほしいですか。

 作品の中でドロンジョのフィギュアが有名な大泥棒という形で登場するんですけど、そういったメタなシーンもあります。ちょっとパラレルワールド的な感覚になるシーンですが、注目してもらえると嬉しいです。

――池田さんは目標は持たないと、過去のインタビューで見たことがあるのですが、それは現在も?

 はい。夢や目標はあえて持たないようにしています。この移り変わりの早い世界で、目標を持って、もしそれを達成できず、世の中のせい、裏切りだと言うのであれば、毎日違うことを言っている方が面白いと思っているからなんです。

――大変な撮影でしたが、そんな池田さんの原動力になっているものは?

 私は役に立つことが好きなんだと思います。自分のために働くよりも、人のために働いた方が動きやすいといいますか。自分のためだけだと腰が重いんだと思います。昔は自分のため、学ぶために色々やっていたんですけど、今の原動力は誰かのため、というのが大きいです。

――『WOWOWオリジナルドラマDORONJOドロンジョ』のどんなところに注目してほしいですか。

 皆さんに楽しんでもらいたいのは、常に進化していく、ドロンジョになっていく様を見てほしいです。その中で変わっていく正義の定義や、アクションシーンは楽しんでいただけると思います。

(おわり)

ヘアメイク/RYO
スタイリスト/福田春美

WOWOW公式YouTubeチャンネルにて、第1話無料配信中

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片山拓
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