INTERVIEW

津田健次郎

「とても緻密で大胆」映画『ブレット・トレイン』の魅力


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:22年09月01日

読了時間:約5分

 津田健次郎が、9月1日から公開されるブラッド・ピット主演映画『ブレット・トレイン』に、アーロン・テイラー=ジョンソン演じるタンジェリンの吹替え声優として参加。『ブレット・トレイン』は伊坂幸太郎氏の小説『マリアビートル』を原作にもつ新幹線を舞台にしたアクション・スリラー映画で、監督はデヴィッド・リーチが務める。インタビューでは、作品に参加することが決まった時の心境から、アフレコしていく中で感じた難しさ、さらにいま津田健次郎が追求していることなど、多岐に渡り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

すごくエンタメしている

映画『ブレット・トレイン』

――この作品に参加されることが決まった時の心境はいかがでした?

 実は前から気になっていた作品でした。面白そうだなと予告映像を、声優としての参加が決まる前から観ていました。

――津田さんが演じたタンジェリンはどのように見えていました?

 そもそもこの作品はクセのあるキャラがずらっと並んでいるんですけど、タンジェリンは髭の感じもあってかちょっと胡散臭ささのあるキャラだと思いました(笑)。

――完成したものを観てどのような感想を?

 ドタバタ劇で面白かったです。予告編を観ていると、スピード感のあるアクションムービーというイメージが強いと思うんですけど、すごく細かいことを沢山やっているいるので、大味ではなくとても丁寧に作られている映画だなと思いました。デヴィッド・リーチ監督が描く日本であって日本でない感じとか、独特な色味などすごくエンタメしているなと思いました。新幹線の車内の売り子さんが金髪だったりするのも印象的でした。

――確かに日本人ではこういう描き方は難しいかもしれませんね。さて、吹替えの準備はどんなことをされましたか。

 特別なことはしていないです。リハーサル用のビデオをいただいて、台本を読みながらという感じです。

――津田さん流の台本の読み方は?

 まずは自分の役にとらわれずに全体を読みます。その後に自分が担当する役を意識して再び読みんでいきます。

――読んでいく中で感じられたことは?

左からレモン(関智一)、タンジェリン(津田健次郎)

 この映画はやっていることはすごく派手なんですけど、基本的にはオフビートだと思っています。ただ、ウルフ(声・木村昴)はオンビートな役だと思いますが、タンジェリンとレモン(声・関智一)のコンビ、ブラットピット演じるレディバグ(声・堀内賢雄)はオフビートなんです。なので、脱力感のある会話がメインなので、いい意味で淡々としているなと感じました。

――お気に入りのシーンはありますか?

 タンジェリンとレモンのしょうもない掛け合いシーンですね(笑)。あの不思議な感じの掛け合いは印象的でした。そのしょうもなさがこの映画の面白さでもあると思います。僕がめちゃくちゃ喋っているシーンなので注目してもらえたら嬉しいです。

――本作を通して気づいたことや発見はありましたか。

 僕が参加した作品で、割とタンジェリンのような素っ頓狂な役、脱力した軽妙な対話というのは多くなくて、そこの難しさというのは発見でした。面白さもださなければいけないのですが、今回は力で持っていく笑いではないというところで、独特な役だなと思いました。

――全てのアクションシーンが火事場の馬鹿力と言いますか、人間離れしたアクションはすごいパワーを感じました。津田さんが思わぬ力を発揮できた瞬間というのはありますか?

 人間は不測の事態に追い込まれると思わぬパワーが出るなと感じていて、僕の場合だとそれが舞台なんです。舞台をやっている時に底力が出ていることが多い気がしています。それこそ誰かがセリフを忘れたとなるとアドレナリンが出ますから(笑)。

より自由になること

村上順一

津田健次郎

――今回の舞台が新幹線なのですが、津田さんは新幹線でのエピソードはありますか。

 新幹線は好きですね。よく使用するのは東京〜新大阪間なんですけど、その時間で何をしようかなと考えたりします。映画を観るのか、本を読むのか、何か書くのか、もしくは寝るのか。ただ、映画は観はじめても到着までにエンディングまで辿りつかないこともあって、結局新幹線を降りてから、ベンチで続きを観て帰ることもあります(笑)。

 あと、僕はどこでも寝れる体質なんですけど、新大阪から東京に向かう時は、新横浜あたりで眠くなってきてしまうんです。東京まであと2駅しかないので、時間配分がすごく難しい(笑)。

――寝たとしてもすぐに起きなければいけないですね(笑)。さて、いま津田さんが声優として追求されていることは?

 お芝居です。今、初心に帰ってお芝居をまた一からやり直しているような感覚があります。そこで感じたのは改めてお芝居の難しさで、追求のしがいがあるなと思いました。

――「五十にして天命を知る」という言葉があります。津田さんは存在意義や使命などわかったところはありますか。

 自分の存在意義とか使命は、まだ特に感じてはいないんですけど、もっと良いお芝居をやれるようにしたいと思っています。

――その中で津田さんの理想像はどんなものですか。

 これはお芝居を始めた頃からずっと思っていることで、非常に言語化はしにくい曖昧な感じなのですが、より自由になることです。まだ芝居をすることがどこか不自由だなと思いつつ、自由を獲得できずにいるので、常に自分の中の理想として持っています。

――最後にこの作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

 とても緻密で大胆、バカバカしいんだけどシリアスで、非常にカテゴライズしにくいポップさを打ち出してきている作品です。今までにない面白さに溢れていて、格好いいと思える映画なので、ぜひ大きなスクリーンで、良い音で観ていただけたら嬉しいです。

(おわり)

作品情報

・タイトル:『ブレット・トレイン』 (原題: BULLET TRAIN)
・公開:9月1日(木)全国の映画館で公開
・原作:伊坂幸太郎「マリアビートル」(角川文庫刊)
・監督:デヴィッド・リーチ
・脚本:ザック・オルケウィッツ

・キャスト:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之、マイケル・シャノン、バッド・バニー(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)、サンドラ・ブロック

・日本語吹替版声優:堀内賢雄(レディバグ)、山本舞香(プリンス)、津田健次郎(タンジェリン)、関智一(レモン)、木村昴(ウルフ)、井上和彦(エルダー)、阪口周平(キムラ)、立川三貴(ホワイト・デス)

この記事の写真
村上順一
村上順一

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事