[Alexandros]が4月28日、結成初期から企画し行ってきた恒例イベント『THIS SUMMER FESTIVAL』を開催。今年は8年ぶりに対バンイベントとして実現したこのイベント、会場の東京国際フォーラム・ホールAでは、対バンらしいバチバチ感とそれを超えてバンドどうしの絆とリスペクトを感じさせる素晴らしい雰囲気のもと、熱いライブが繰り広げられた。

 開演前の会場にはいつもどおり注意事項などを伝えるアナウンスが流れる……のだが、まずこのアナウンスがこの日最初のサプライズだった。影アナを務めたのは[Alexandros]が主題歌を担当した映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ハサウェイ役を務めた声優の小野賢章。あの美声に客席もざわついた。今回の影アナは川上のレギュラーラジオに小野がゲスト出演した際に出た話が実現した形だ。小野によるアナウンスのあと、ついにライブが開演である。

 まずステージに登場したのはゲストとして久しぶりの対バン相手にブッキングされたsumikaだ。眩い光に包まれる中「リグレット」でスタートしたライブ。片岡健太の「めちゃめちゃ楽しみにしてきました!」という言葉通り、のっけからテンションの高いパフォーマンスが繰り広げられる。「Flower」「Lovers」とこれぞsumikaな色鮮やかなポップチューンで展開したかと思うと、一転、「グライダースライダー」ではキレのあるバンドサウンドで魅せる。バンドとしての懐の深さを感じさせる序盤戦だ。

sumika(撮影=Sotaro Goto)

 「THIS SUMMER FESTIVALにようこそ!」。両手を広げてそう挨拶した片岡に大きな拍手が送られる。「呼んでくれた[Alexandros]が大好きだ!」と言いつつ、川上洋平とは「ドライブに行ったりする」仲だと明かす片岡。磯部寛之とも会えば笑って話すと言いつつ、「白井(眞輝)さんですね。今日の俺のいちばんのミッションは白井さんを笑わせること」と今日のテーマを掲げてみせる。さらに川上のうどん好きにまつわるエピソードを披露すると、「そんな[Alexandros]と来てくれたあなたに向けて愛情を込めてぶっ放します!」とサプライズで[Alexandros]「風になって」のカバーをパフォーマンス。バックのスクリーンにはちゃっかり[Alexandros]のバンドロゴが映し出されている。

 ここまでですっかりsumikaのホームのような空気を作り出すと、後半はますます振り幅の大きい楽曲でsumikaの世界を表現。「Babel」では他のメンバーが一度ステージから退場し、片岡とDJのみでダークなムードを描き出す。じつは片岡、この日の直前まで体調不良でライブを休んだりもしていたのだが、パフォーマンスを見る限り完全復活したようだ。再び全員で鳴らした「Strawberry Fields」で各メンバーのソロパートを見せると、「願い」では切ないメロディが会場いっぱいに広がる。

 「対バンするということは、先輩とか後輩とか抜きにして、バチバチやるべきだと思うんですよ。今日もちゃんとやっつけるつもりでこれまでやってきたんですけど」と言いつつ、コロナ禍でライブができなかった2020年、一番連絡を取り合っていたのが川上だと話す片岡。その日々があったからこそ今日がある、と感慨深げに語りながら、「[Alexandros]がずっと続きますように。俺たちも負けないように音楽やります」と宣言してみせる。そんな言葉からバンドの残りのパワーをすべて注ぎ込むような熱演を見せた「ファンファーレ」、そして観客全員を巻き込んでハッピーなヴァイブスを撒き散らした「Shake & Shake」を鳴らし切り、[Alexandros]へとバトンを繋いだ。

 さて、次は[Alexandros]……なのだが、その転換中にメインステージ横に設けられた小さなステージに登場したのが、[Alexandros]にとっては事務所の後輩にあたるバンド、the shes goneのヴォーカル・ギター兼丸だ。1週間くらい前に急に呼ばれたそうで、さすがに緊張感を漂わせながらも「バンドのつもりで立ってます」と堂々たる弾き語りのパフォーマンスを見せる。美しい声で想いのこもった歌を届けた兼丸がステージを降りると、いよいよ[Alexandros]の出番だ。

the shes gone

 ブルージーなサウンドに乗せて、アメリカンニューシネマのようなオープニングクレジットでメンバーを紹介しつつ、「Burger Queen」でキックオフした[Alexandros]のステージ。「Droshky!」から「Rocknrolla!」の流れで最初のハイライトを描き出すと、そのまま「Waitress, Waitress!」に「Kick&Spin」とアグレッシヴに攻め立てるような序盤だ。カジュアルな衣装に身を包んだ4人もどこかリラックスした表情で、ときおり笑顔を見せながらライブは進む。「Kick&Spin」のギターソロでは白井とサポートギタリストのMULLON(THE LED SNAIL)の2本のフライングVが競演するという粋な演出でも魅せる。

 と、ここでいきなりの新曲披露。NHK Eテレで放送中のアニメ『アオアシ』のオープニングテーマとなっている「無心拍数」だ。手拍子が巻き起こるなか、メンバー全員でのコーラスが盛り上げるアンセミックなロックチューン。ショートバージョンでの披露だったが、これはフルで早く見たいと思わせる楽曲だ。そしてバックに流れる映像も印象的だった「日々、織々」を挟み、ROSE(THE LED SNAIL)のピアノから披露されたのが川上も「初めてやります」という「空と青」。川上も出演したドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』の主題歌として家入レオに提供した楽曲のセルフカバーだ。川上の伸びやかな歌声が、聴きなれたはずの曲に新たな命を吹き込んでいく。「完璧に最高の夜です。みなさんのおかげです!」。川上洋平が晴れやかな顔でそう客席に語りかける。久しぶりのライブ、久しぶりの対バン。MCで延々喋り倒すほど、川上をはじめメンバーも心からこの一夜を楽しんでいるようだ。

[Alexandros](撮影=renzo masuda)

 「Rock The World」で巨大なユニティを生み出すと、そこからバンドの勢いと熱量をすべて凝縮したような「閃光」へ。リアド偉武の雷神のようなドラミングがバンドのアンサンブルを前へ前へと突き動かす。真っ白な光に照らされた客席でいくつも拳が上がる。さらに「Mosquito Bite」を畳み掛けて熱狂をますます加速させると、「Girl A」を経て本編ラストの「She’s Very」へ。フルスピードで終盤を駆け抜けると、メンバーはひとまずステージを降りた。

 手拍子に迎えられて始まったアンコールでは、「The」から「El Camino」へ突入するというサードアルバム『Schwarzenegger』そのままの流れを披露。川上も「10年ぶりぐらいにやってます」というレアなセットリストに客席は当然盛り上がる。リアドがそのまま「Waitress, Waitress!」に行こうとして川上が「それもうやったから!」と止めるギャグも、わかる人にはわかる通好みの演出だ。そんな一幕を経て「隣の楽屋にバンドさんがいるというだけで緊張感がみなぎる」と久々の対バンイベントの感慨を口にする川上。sumikaと兼丸、そしてサポートメンバーに感謝を述べると、「こんな感じでやっていこうかな、ディスフェスは」と、[Alexandros]らしい「フェス」のあり方を続けていくことを宣言する。そしてアコースティックギターをかき鳴らしsumika「センス・オブ・ワンダー」の一節を歌うと、「荒々しくいきます!」と「ワタリドリ」へ。さらに「Adventure」で遠くない未来に戻ってくるであろうみんなでの大合唱に思いを馳せると、2022年のディスフェスは幕を閉じた。

[Alexandros](撮影=renzo masuda)

最後には出演者全員で記念写真を撮り、大団円。その後にはすでに告知されていた7月リリースのニューアルバムのタイトル(『But wait. Cats?』)や詳細をアナウンスするムービーが流れた。アルバムツアーも発表され、いよいよ2022年の[Alexandros]が大きく動き出す。4年ぶりのアルバムで彼らはどんな姿を見せてくれるのか、そのアルバムを引っ提げてのツアーはどんなものになるのか、今から大いに期待して待ちたいと思う。【文:小川智宏】

セットリスト

『THIS SUMMER FESTIVAL 2022』
2022.4.28 東京国際フォーラム ホールA

sumikaセットリスト

1.リグレット
2.Flower
3.Lovers
4.グライダースライダー
5.[Alexandros]「風になって」カバー
6.ソーダ
7.ペルソナ・プロムナード
8.Babel
9.Strawberry Fields
10.Traveling
11.願い
12.ファンファーレ
13.Shake & Shake

[Alexandros]セットリスト

1.Burger Queen
2.Droshky!
3.Rocknrolla!
4.Waitress, Waitress!
5.Kick&Spin
6.無心拍数
7.日々、織々
8.空と青
9.Rock The World
10.閃光
11.Mosquito Bite
12.Girl A
13.She’s Very
En1.The~El Camino
En2.ワタリドリ
En3.Advernture

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