INTERVIEW

柳俊太郎

感慨深かった坂口健太郎との映像初共演「背中が大きかった」:『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年03月11日

読了時間:約8分

 柳俊太郎が『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』に出演する。漫画『ヒル』『ヒル・ツー』(新潮社バンチコミックス)が原作。他人になりすましをされた青年・ユウキ(赤楚衛二)が、他人に寄生する不法滞在者“ヒル”の存在を知り、彼らに果敢に立ち向かっていく姿を描く。柳はユウキに成りすますヒル・ヨビを演じる。かつて両親を殺し世間を騒がせた少年Aであり、カラ(坂口健太郎)に救われヒルになったものの、暇つぶしのためにヒルを玩具の様に扱い遊んでいる役どころだ。柳と言えば、Netflix『今際の国のアリス』では顔面にタトゥーが入ったラスボス役を、ドラマ『トーキョー製麺所』では好青年のバイトリーダー青井春翔役を好演。更に実写ドラマ『ギヴン』では感情の機微を繊細に表現するなど役者として高い評価を得ている。そんな彼は今回の役どころをどう捉え臨んだのか。※柳俊太郎の「柳」は、正しくは木へんに夘。【取材・撮影=木村武雄】

ヨビへの理解

――演じる上での心構えとして、以前、原作があるものとないものとでは演じ方が異なることや、台本以外の小さな感情を探していくと話されていましたが、今回のヨビはどうでしたか。

 原作を読ませていただきましたが感情の幅が広いというか今回はより繊細な役でした。周りから見るとやっていることがサイコパスで表現はイカレきっているんです。人を殺してめちゃくちゃ笑うみたいな。でも彼にはしっかりとした理由があるんじゃいかと。彼の中にはちゃんとしたバックボーンがあって、そうなるようにできてしまっているんじゃないかと思いました。だからサイコパスではなく絶対的にソシオパス(精神疾)だと思いながら演じていました。

――原作を読んでいない人からすれば、サイコパスにしか映らないと思うんです。ただ最後の方になってその理由も分かりますが、その辺の見せ方はどうだったんですか?

 僕も台本を読んだ時はサイコパスにしか見えなかったです。最後の方で彼のバックボーンが分かるんですけど、演じる上では自分の中で理解して消化させなくてはならなくて。行動には理由があって、人を殺めるにも絶対的に理由がないと表現できないんです。だから自分の中で、彼の過去にはこういうことがあったという事を常に持っておかないとただのサイコパスになってしまう、彼を演じる身としてそれは嫌だなと思って。観ている人がサイコパスに見えても、自分の中でソシオパスだと思っていたい。それが殺し方や感情の表現に繋がっていき、最後に理由を明かしたときに「なるほどな」というふうに見せたいと思っていました。

――そのヨビは、言葉のなかでよく「遊び」というワードが出てきますが、今の話を聞くと構ってほしいという裏返しなのかなと。

 やっぱり父親へのトラウマがあるので、そうかもしれないですね。

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役への葛藤

――撮影に入るまでは普段、どう過ごされているんですか?

 その役によって結構違います。でも、友達と飲む時間は絶対に作っておきます。

――それはリセットするためですか。

 そうですね。単純に自分の楽しみがないといけない性格というのもあるんですけど(笑)

――結構役に入ってしまう?

 そうですね。一人でいると、そればっかり考えてしまうことも多いです。

――プライベートな自分が、役に引きずられてしまうことはありますか?

 そこから逃げたくて友達と飲むというのもそれが理由もあって。今までも人を殺す役が多いんです。そういう役が一時期続いて「明日、人を殺すシーンがあります」と言われて、その役のバックボーンを考えるんですけど、家庭環境にいろいろあって「ただ楽しくて殺しているわけじゃないんだ」と思ったらすごくつらくて。

 ヨビには親がいないんですけど、もしヨビに唯一信頼できるおばあちゃんがいたら絶対につらい思いをしているだろうなとかいろいろ考えてしまうんです。もちろんそういうふうに考えることは重要ですし、考えた上での表現なので追い込みますが、どこかで自分として客観的にいなきゃいけないと思っていて、その方法が分かってきたというか、対処法ではないけど、ちょっと外で散歩しようとか飲み行こうとかしています。

――演じている時はその役と同一化しなければならないですが、撮影以外ではそうならないように離れるように気を付けているんですね。

 そうです。今の時代、YouTubeにいろんな情報があって自分も調べものをすることもあるんです。でも、例えば今回のヨビのような人殺しの役の場合にそれ近づけるために動画で調べものしますが、実は優しい人だったんじゃないかと理解しようとしたときに、関連で上がってくる動画で実際に起きた殺人事件に関するものだらけになって、そうした犯人までも実は優しかったんじゃないかと同情心が出てくることがすごく嫌で、怖くて…。一人でいると役について考えてしまったり、そういうものを見てしまうので、なるべく近づけないようにしています。飲みに行くということで自分を制御できているのかもしれないです。

――苦しいですね。犯罪はもちろんだめですが、犯罪者にも子どもの時代があってその頃の家庭環境が大きく影響しているという話も聞きます。ご自身がそういうことに向き合って感じることはありますか?

 もちろん家庭環境が大きく影響していることもありますが、なかにはサイコパスもいるのでその線引きは一見では分からないです。今回のヨビのような役を見て果たして心を救われる人がいるのかと。ドラマとしてエンターテインメントとして観る方がほとんどだと思いますし。もちろんそれでいいんですけど、そこに責任があるかと言われたら…。北野武さんが『アウトレイジ』の製作記者会見で、記者から「これだけ人を殺してヤクザものを作って社会に悪い影響を与えないんですか?」という質問を受けた時に「今までも素晴らしい映画はいっぱい出来てきたけど、今のこの時代はそんな素晴らしい世の中になっていますか?そんなもんなんですよ、映画は」と答えられた時に確かにそうだよなって。1本の映画が救うこともあれば、そんな責任を負う必要もないのかもしれないなと。そう考えた時に僕はまだそこまでの責任を持ってこの役を演じていないのかもなって思ったりもします。

――そのヨビが最後の方で、覆っていた鎧みたいなものが溶ける瞬間がありますが、ヨビも人の子だったんだと、もしかしたらそのシーンで救われる人もいるのかなと。

 それはヨビ自身が今まで逃げてきた感情によって破られたので。でもヨビは難しくて、果たしてそれで救われているのかというところではありますよね。その後も彼は生きていますが心は死んでいるようなものなので。

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引き出す役回り

――完成報告会で赤楚さんと坂口さんが登壇されて、赤楚さんがヨビが本当に憎たらしかったので演じる上で大変助けになったと話されていました。

 それは本当に良かったです。

――赤楚さんとの絡みはどうでしたか。

 すごくやりやすいです。僕はもう好き勝手やっていたので、それをそう感じ取っていただけたのは嬉しいです。

――ある種、相手の感情を引き出す役割ですからね。

 そうです。こちらがそういう感情にさせないと相手も動けないので。

――監督とは演出の部分で話し合いは?

 ヨビは結構、状況説明のようなセリフが多いんです。もちろん彼には仲間がいますし、ユウキ(赤楚)に言うシーンもありますが、ヨビは誰かに向かって言っているようで。それは自分にも言っているというか。自分で言って自分で納得しているところもあります。その時の目線とかは結構話し合いました。仲間がいても孤独な存在に見えるようにしたかったので。

――不敵な笑みというかそういうのも結構見られますが、何か感情がなさそうな感じもありました。

 やっぱり深くつかないと本当の姿は見れないキャラクターだったので。

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坂口健太郎は特別な存在

――カラを演じた坂口健太郎さんは同じモデル仲間ですよね。共演はどうでしたか。

 映像での共演は初めてでした。感慨深かったですね。彼は素晴らしい役者で、モデルの撮影では何回も一緒にやりましたし「メンズノンノの新しい時代を作っていこうぜ!」と2人で話し合ったりもしました。彼の活躍はすごく見ていましたし、うらやましいと思う反面、「オレは違う方向で頑張ってやる」と思っていて。それで10年以上経って全く異なるキャラクター、ヨビとカラで出会うとは思いもしなかったですね。この作品で共演できたのはすごく嬉しいです。役者としての健太郎はやっぱり第一線を張る人物だなって。背中も大きかったし見ていてかっこいいなと思いました。

――宮沢氷魚さんにインタビューしたときに、メンズノンノのモデル仲間は「僕にとって大事な存在で、ライバルでもあるし仲間でもあってやっぱり気になる」と話されていて。原点でもあるモデル仲間はどういう存在ですか。

 僕の中では「モデル仲間」という意識ではなくて役者として接している感覚です。健太郎はちょっと別で同い歳で役者を始める前からの友達なので出会い方が違くて。僕も氷魚も成田凌もその頃すでに役者を始めていて、みんな役者になりたくてメンズノンノに入った感覚もあってちょっと登竜門的な雰囲気が出来つつあって。だからモデル仲間というよりも役者として接することの方が慣れているというか。氷魚も素晴らしい役者で、もちろんメンズノンノで出会ったというのはありますけど、僕はライバル意識というか「役者として立っているフィールドは違うから」という変なプライドがあって「お前と違うよ」みたいなスタンスでずっといました(笑)。

――フィールドがあること自体がすごいことだと思います。それこそ役者としての個性ですから。

 でもある意味、逃げだと思うんです。みんなメインストリームで頑張っているので。大きくみたら一緒ではあるんですけどね。撮影の現場では一緒ですし、キャラクターはその役によって変わりますし。でも、変なプライドはあったのは事実です(笑)。

――外側からみるとそのプライドが、今のような唯一無二の存在になっていると思いますが、今のご自身の現在地をどう見ていらっしゃいますか。

 スタートです。常にフレッシュでいたいんです。芝居もフレッシュに見られたい。変な違和感もあった方がいいなと思いますし、台本読んでこういう役だからこういう芝居するは嫌なんですよね。もうちょっと違和感をつけたい、フレッシュに見られたいというのはあるので、また一からスタートだなという印象です。

――作品の積み重ねではなくて、一つ一つが横軸で並んでいる感じなんですね。

 そうですね。もちろん積み重なっている部分はあるとおもいますが、まだ積み重ねられているなという実感もないですし自信もないので。「こういう演技するんだ」と毎回思われたいというか「何か気になるな」みたいな。わくわくさせたいです。

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(おわり)

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