シンガーソングライターのNakamuraEmiが12日、配信ライブ『NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2~Release Tour 2020~ Band ver.』を行った。このライブは今年2月にリリースされたベストアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』を提げて3月より行う予定だったもので、コロナ禍により有観客でのライブツアーは中止となったが、配信ライブとして11月22日にアコースティック編成、そして12月12日にバンド編成で実施。Band ver.ではベストアルバムに収録された曲に加え、新曲の「一服」、ライブでは定番となっている「YAMABIKO」など全14曲を披露した。そのライブの模様を以下にレポートする。(※ネタバレあり)【村上順一】

いろんな想いが伝わるように

NakamuraEmi(撮影=古賀恒雄)

 前回のライブから行っているセットリストの1曲目から5曲を予想するという企画。前回は当選者なしという結果だったが、今回は当選者は現れるのか、リスナーもその企画も含め、ライブのスタートを心待ちにしている様子がチャット欄から伝わってきた。

 開演時間になり、全貌がまだ見えぬ中カワムラヒロシのギターが鳴り響く。そして、カメラが別アングルにフェードインすると、白を基調とした衣装にニット帽を被ったNakamuraEmiの姿。オープニングを飾ったのは「BEST」だ。前回のAcoustic ver.では、ラストで披露された同曲。フルバンドということで趣を変え、NakamuraEmiの歌声もエネルギッシュだ。チャットコメント欄では早くも「最高すぎてもう泣く…」など感動伝えるコメントも見られた。

 これまでのステージを支えてきたTOMO KANNOのドラムと大塚雄士のパーカッション、SOKUSAIのベースが絡み合うリズム、そして、前回のアコースティックライブでも存在感を放っていた、千葉岳洋によるシンセの印象的なサウンドがカラフルだった「ばけもの」、そして「一緒に過ごしてくれてありがとう」と感謝を告げ「Don't」へと紡がれる。チャット欄ではここまでの流れに「最高のセトリ」と満足そうなコメントも多くみられた。

 バンドが繰り出すグルーヴにノリノリのNakamuraEmi。観ているこちらも身体を動かさずにはいられない「大人の言うことを聞け」と、フルバンドの魅力を存分に堪能できる序盤の流れだった。

 MCでは「いろんな想いが伝わるようにライブをやっていきたいなと思っておりますので、よかったらお付き合いよろしくお願いします」と丁寧に意気込みを伝え、メンバー紹介へ。メンバーの人間性、NakamuraEmiとの関係性がわかる紹介にチャット欄も盛り上がる。

ライブの模様(撮影=古賀恒雄)

 「今の自分のリアルを入れる」、それがベストアルバムに収録された新曲たちのコンセプトだという。そのリアルのひとつである自身の葛藤を描いた「東京タワー」を歌唱。青を基調としたライティングは悲壮感を漂わせ、彼女の歌声は当時の想いをリアルに映し出していく。

 ライブは中盤戦へ。パラアスリートの中西麻耶選手と出会って生まれた「N」。そして、自身と関わる人たちから様々な考えをもらって出来た「ちっとも知らなかった」と、外からの影響を大きく受けた2曲を披露。NakamuraEmiとカワムラのギター、幻想的なシンセが彩るなか叙情的な歌い出しはグッリスナーの心を掴む。心情を見事にサウンドで具現化していくようなストーリーを感じさせた。チャット欄では「心が揺さぶられる」と、この曲がリスナーにしっかりと響き、届いていたことが証明されていた。

 続いて、Acoustic ver.でも披露された「ふふ」。人としての優しさ、温もりを感じさせる歌声。今の世の中に必要だと感じさせる考え方、気持ちを、NakamuraEmiというフィルターを通すことで、よりその意味が高まっていくのがわかる。「目頭が熱い」「優しい気持ちになれる曲」と聴いた人々の心を包み込んでいた。

完成した時の感動を忘れず一生歌っていきたい

ライブの模様(撮影=古賀恒雄)

 浮遊感のあるバンドサウンドが心地よい空間を作り出していた「甘っちょろい私が目に染みて」。そして、竹原ピストルのライブを観た時の衝動を落とし込んだ楽曲「痛ぇ」とライブは進んでいく。「痛ぇ」は竹原のマインドにも通じる心に刺さる一曲だ。真摯に音楽と向き合うアティチュードを、ひしひしと感じさせてくれたパフォーマンスだった。

 ライブも後半戦へ。いま歌うべき曲なのではないかと話す、4年前から存在していた楽曲「一服」。前回のライブでも反響があった新曲だ。カワムラの凛としたアコースティックギターの音色に乗って、自分自身に言い聞かせるような歌唱。リスナーからは「歌うために生まれてきたんだなぁと心底思う」「なんてすごい歌を歌うんだEmiさんは・・・」と、シンガーソングライターとしての彼女の存在を讃えるものも多かった。

 ライブはラストスパートへ。複雑な乙女心を歌った「チクッ」を披露。ベストアルバムではリアレンジされストリングスが印象的な1曲に深化。行進するかのようにリズムを刻むNakamuraEmiの所作は、前へ進んで行こう、という気概を感じさせた。

 「貴重な時間をありがとうございました。ベストアルバム2枚目を出せたのは皆さんのおかげだと思います。そして、ここまでこれたのは次の曲のおかげかな。完成した時の感動を忘れず一生歌っていきたいと思います」と語り、ラストは「YAMABIKO」を届けた。

NakamuraEmi(撮影=古賀恒雄)

 彼女のキャリアに欠かせない1曲は一緒に叫びたくなる、生きていることを実感させてくれる。全身を使って楽曲の持つエネルギーを画面の向こう側へと声とアクションで届けるNakamuraEmi。バンドの演奏も楽曲が進行していくなかで、熱を帯び高揚していく空気感は無観客とは思えない、躍動感に満ちていた。チャット欄ではこのライブの感動を伝えるコメントがものすごい勢いで流れていく。

 今できる最高のカタチで終えたステージ。音楽というのは何なのか、その片鱗を感じさせてくれた一夜だった。それはここから生きていくための活力、心を震わせられるという喜びだったと思う。また今回披露された楽曲を生で聴ける日を待ちわびながら、1日1日を大切に過ごしていきたい、と思わせてくれたステージだった。

セットリスト

NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2~Release Tour 2020~ Band ver.

01.BEST
02.ばけもの
03.Don't
04.大人の言うことを聞け
05.東京タワー
06.N
07.ちっとも知らなかった
08.ふふ
09.甘っちょろい私が目に染みて
10.痛ぇ
11.かかってこいよ
12.一服
13.チクッ
14.YAMABIKO

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