神戸出身のオルタナティヴロックバンド・パノラマパナマタウンが、ステイホーム期間中の5月から行っていた配信番組『PPT Online Studio』で、新曲を次々と投下。8月16日には自身初となるオンラインライブ『PPT Online Live「On the Road」』を行い、「Rodeo」や「SO YOUNG」、そして「Dogs」と新曲のフルバージョンを披露したことも記憶に新しい。

 『PPT Online Studio』とは、彼らのデモ制作の過程を公開しながら、時にリスナーも巻き込んで1曲を作り上げていくという参加型企画。5月からスタートし毎週火曜日の21時から生配信をスタート。8月25日の放送回をもって終了した。

 MusicVoiceではこれまでシーズン1で完成させた「Rodeo」、シーズン2の「Chameleon Man」「Rocket」「SO YOUNG」の計4曲を考察、分析してきた。今回はシーズン3の中から「Dogs」について『PPT Online Studio』の様子も織り交ぜながら分析したい。

 シーズン3では岩渕想太(Vo.Gt)が4曲のデモを制作。リスナー投票で1位に選ばれたのは「Together Song」、そして2位が「Dogs」だったが、岩渕が個人的にやってみたいと、この「Dogs」が選ばれたという経緯があった。

 UKパンクロックを感じさせるイントロのリフが印象的ではある「Dogs」。この曲のサウンドを担う大きな要素として、16ビートのドラムがある。ハイハットを細かく刻むことにより、ダンスサウンドへと昇華しているのが、この曲のポイントの一つになっている。だが、サビは8ビートで王道のロックサウンドという鮮やかなグルーヴの変化を楽しめる。こういった細かいところが楽曲の躍動感に繋がっていると感じさせてくれた。

 浪越康平(Gt)によるギターは、セクションによってバリエーション豊かな表情を見せる。サウンドとしてはドライブの効いたロックギターをベースに、AメロBメロでは、閉塞感がありながらもバリエーション豊かなフレージングで単調にならないように工夫している。サビでは一転して解放されるかのようにカウンターメロディーで広がりを与えることで、サビ感を強調している。エンディングで聴けるキーがずれていくようなギターフレーズも、葛藤している様子を音で表現しているようで、ハッとさせられる。

 タノアキヒコ(Ba)はシンプルにギターとユニゾンし、音に厚みを加えるベースで、堅実にアンサンブルを支えるものとなっている。派手さはないが、まさにベースとなる「縁の下の力持ち」的なイメージだ。それにより歌がしっかりと際立つ。何を聴かせたいか、その意図が明確なアレンジだ。

 歌は気怠い感じをだしたかったと岩渕。あえて間延びしたかのようなアンニュイな表現方法は、この楽曲の世界観を強固なものにしている。ドラムのタイトなビートとは対照的で、良い意味での違和感をリスナーに与えていると感じさせた。

 歌詞は難産だったという。出だしの<俺はDog>というフレーズは早々に決まっていたとのことだが、その後がなかなか続かず苦戦したと番組で明かしていた。言いたいこと、テーマは決まっているが、それをどのように音楽として落とし込むのか、そのバランス、塩梅を追求、模索した。

 結果、上がってきた歌詞は岩渕らしさがある、自分を信じて生きていく姿勢を感じさせてくれた。サビでの<吠えろ!無難な正解に>というのは、果敢に攻めていく姿勢を表し、さらに<くだらない一般論に腹の底から大胆に吠えろ>と、力強い言葉で締めくくる。

 人間とは弱いものだということを痛感させ、当たり前の風潮に流されずに、自分自身というものを強く持つこと、情熱ややりたいことを貫くことが大事だと改めて考えさせてくれる。もしかしたらこの歌詞は、岩渕が自分自身に向けて、そうならないようにと言い聞かせていることなのかもしれない。

 8月16日に行われた自身初となるオンラインライブ『PPT Online Live「On the Road」』では、この楽曲のフルバージョンを披露し、リスナーからも「デモの時よりもさらに進化している」と反響を集めていた「Dogs」。そういった感覚が生まれたのも、この『PPT Online Studio』でプロセスを共有できたことが大きいのは明白だろう。

 惜しくも『PPT Online Studio』は終了してしまったが、少しずつ楽曲がブラッシュアップされていく過程を確認しながら、完成した音源として我々のもとに届く楽しみがこの番組にはあった。制作からライブ披露までの流れが見れたことは、ファンにとって貴重な体験、時間だったはずだ。

 そして、12月12日にバンド結成の場所である神戸太陽と虎で、約1年ぶりとなる有観客ライブ『from KOBE』の開催も決定し、久々に“生”のパノラマパナマタウンが体感できることとなる。今からどんなステージを見せてくれるのか期待が高まる【村上順一】

ライブ情報

PANORAMA PANAMA TOWN ONE-MAN LIVE "from KOBE"
2020年12月12日(土)
兵庫 music zoo KOBE 太陽と虎
開場 17:15/開演 18:00
チケット代:3,500円(税込)(drink代別途必要)
[チケット一次販売]
受付URL:https://eplus.jp/ppt1212/
受付期間:10月28(水)0:00〜11月9日(月)23:59
枚数制限:お一人様1枚まで

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