I Don't Like Mondays.が、配信シングル「MR.CLEVER」をリリースした。本作は5カ月連続配信予定の第2弾で、“クールに賢く世間を生き抜く姿”がテーマとなっている。コロナ禍によるアルバム発売の延期や全国ツアー延期という困難の中で、彼らは立ち止まることなく新たにパワーアップしての連続音源リリースという意欲を見せる。「2020年のI Don't Like Mondays.を表せるような1曲を作りたい」と語る本作についてや5カ月連続配信というアプローチ、さらにメンバーの自粛期間中の過ごし方や近況など幅広く話を聞いた。【取材=平吉賢治】
自粛期間の過ごし方
――2月の東京・豊洲PIT公演後、コロナ禍という状況になってしまいましたが自粛期間中はどう過ごされていましたか。
YU 自粛期間も曲作りは進めていまして、リモートでの曲作りという斬新なことをやりました。画面でメンバーの顔を写して誰か一人が打ち込んで、メロディをみんなでアイディアを出し合うみたいな感じの挙手制で。「ここ思いつきました!」「どうぞ」という感じの(笑)。意外と上手くいった部分もありました。
――例えば「こういうリフを思いついた」という感じもあったり?
CHOJI ありましたね。俺は自粛期間中も普段と変わらずけっこう家の中でおとなしくしていました。クラシックギターを弾いたり映画を観たりと。
――CHOJIさんといえばレスポールギター(ギブソン社の代表的エレキギター)を愛用という印象がありますが、クラシックギターも弾かれるのですね。
CHOJI でもクラシックギターもレスポールみたいなもので(笑)。
KENJI 形は似てるかもね(笑)。
――KENJIさんはYouTubeで機材紹介などもされているようですが。
KENJI あれは他のメンバーもやっているんです。
YU 僕以外はやっているんです。
KENJI CHOJIが第1弾、SHUKIが第2弾、僕が3番目で。それ以外では、基本的に僕らは4人で曲作ることが多いんですけど、昔は1人でトラックを仕上げるとかけっこうやっていたんです。時間があるから色んなアーティストやクリエーター、エンジニアの方が「この曲やこの音はこう作っているよ」みたいなのを観たりして勉強していました。
――SHUKIさんは?
SHUKI いつもと一番違ったのは、料理を凄くやっていたことです。ジャンルはパスタ、中華、和食…。
YU 中華は凄い!
SHUKI 麻婆豆腐とかね。やるからにはただ作るよりも向上していきたいなと。レシピを探す時間の方が長いかもしれないです(笑)。
――こだわりがあるのですね。ところでオンラインライブが7月にありましたが感触は?
YU 正直1回目は、反応がない難しさを感じたりしました。でも「なるほど、こういうものなのか」と思って、『a-nation online 2020』の時には慣れてきたと感じました。けっこう僕らのライブは盛り上がったりする系の感じだと思うんですけど、オンラインはまた違ったパフォーマンス、今までのライブとはまた違う中で楽しさを見つけながら試行錯誤して、今後やる機会にはもっと楽しめるように突き詰めていきたいと思います。
2020年のI Don't Like Mondays.を表せるような1曲
――今作「MR.CLEVER」含め5カ月連続配信ですが、これは前から考えていた?
YU 前からではなく、僕らは7月にアルバムリリース、9月からツアーという予定が流れてしまって。かといってこの期間何もせずじっとしていられるタイプでもないですし、少しでもファンのみなさん含めて何か楽しめるものができないかなということで。毎月出たらさすがにワクワクするだろうと思い切って5カ月連続と。楽しんで頂けたらいいなと思っています。
――「MR.CLEVER」はI Don't Like Mondays.の新たな一面という印象も受けました。制作はどのように進んでいきましたか。
YU この曲に着手する時に、2020年のI Don't Like Mondays.を表せるような1曲を作りたいと思いました。それは僕らのパーソナリティーや考え方、そういったものを1曲の中に詰め込められないかなと試行錯誤した曲です。そういう意味では何回もトラックもデモも出来上がって「こうじゃない、ああじゃない」と言いながらけっこう苦労した曲でした。
細かい部分で言ったらBメロでラップみたいなセクションも、初めはAメロの延長みたいなBメロにしていましたが、作っている中で「これってもちろんそれなりにいい曲だけど、このままだと僕らのひねくれた部分が出せてないな」と。ここでちょっとみんなが驚くようなセクションを作ろうと考えながら最終的にああいう曲調、歌詞になりました。結果、自分達を表すような曲になって凄く上手くいったと思います。このタイミングでこういう曲調のものを出すこと自体も僕らっぽいなと。
――Bメロのトラップ的なビート面のアイディアはどのように出てきたのでしょうか。
SHUKI 「全部アナタのせいなんだ」を作った時の、2番のAメロで実験に近い感じのセクションをやった体験をもとにさらに伸ばしました。あの時は2番のAメロは一回しか出てこなかったんですけど、今回Bメロはこういう感じのセクションで作ろうというのはそこから出てきていたりします。
――今作のテーマについて、最初に聴いた時「クレバーにカッコよく生きて行こう」という感じのものかなと想像しましたが、実際はいかがでしょう。
YU 捉える方次第だと思います。真意はどちらかというとアイロニーというか。本音を隠して賢く生きていくよというか、それがいいか悪いかは別としてという。最後の方の英歌詞で、<DoN'T wanna be Forever>というのが出てくるんですけど、これは「こんな風にはずっとやりたいわけじゃない」ということを実はサラっと言っていて。都会のしがらみ、人間関係のしがらみで社会で生きていくにはそうせざるをえない部分もあったりして。でも、それ自体を楽しんでいかないとやってられないというのを一応表したいなと思って書きました。それを「自分と同じように考えている人もいるんだ」と、最終的にはポジティブに変換してもらったらいいなと思った曲です。けっこう自分が普段思っていることを思いきり詰め込んで、かなり本音を言ったつもりです。「ポジティブに生きていこう」というメッセージは1ミリも込めていません(笑)。
――なるほど。「MR.CLEVER」というタイトルの“CLEVER”は“賢い”という意味?
YU そうですね。“CLEVER”は両方の意味があると自分は思っていて。いい意味での「賢く生きて行こう」あとは「ずる賢く生きて行こう」と、その二面性は込めました。そこにさらに“MR.”をつけることで自分的には皮肉るというか。そういうのを表したいと思いました。
――サウンド面でこだわった点は?
CHOJI ギターのリフみたいなものは早い段階で出来たんです。前々から「こういうのをやってみたいな」というのがうまく当てはまったかなと。新しくてあまり聴いたことないなというのは自分で満足してますけど、よく考えてみるとギターの新しさというのは特になくて。やっぱりベースとかドラムが特にサウンド面の年代を決めるのかなと。だからギターはあまり変わらず、古典的なものなのかなとこの曲をやりながら改めて思いました。
――「MR.CLEVER」のようなギターフレーズは生み出すのが難しいという印象があるのですが。
CHOJI ローリング・ストーンズ並みに同じことやってるっていつも思いますけど(笑)。でも手癖みたいな感じもあったりするんです。もうちょっとリズムを食ってみたりとか、そういうのをみんなで意見を出し合ったりしていい感じになってくるのが多いですね。
――ベース面ではいかがでしょうか。
KENJI 今回はSTYさんと一緒にやらせて頂きました。打ち込みを得意とするプロデューサーさんなので自分の弾く癖などをいい意味で壊してほしかったというのが凄くありました。自分で打ち込んでいったんですけど、「好きに変えてくれていいですよ」という感じでした。僕らと繋がる前からライブなど観に来てくださっていて、僕らの音楽も凄く理解していてくれて、それを活かしながら凄く格好良いリフにしてくれました。ちゃんと僕が打ち込んだものも組み込みつつ、STYさん節のいいフレーズになったと思います。ベースをしっかり理解されている方だなと改めて思いました。
――STYさんからビート面ではどんなディレクションがありましたか。
SHUKI そもそもSTYさんはバンドのものを初めてやられるんです。僕らの中では打ち込みとバンドの融合をずっとやってきたので「ここまでいくとやりすぎ」というのはけっこうわかってきていたんです。その辺を「これくらいのところを目指しながらやりましょう」というのは最初のうちに話し合いました。
メロディも今まで僕らは本当に引きが強くて速いキャッチーなメロディとかを色々やってきた中で、今回はそういう部分ではなくて何回も聴きたくなるようなというところから作ったりしました。歌を聴かせようというのはずっと重視していて、ビート面でも最終的にミックス作業で完成する時には、けっこうビートが歌を邪魔している部分をちょっと逃がしたり、そういうことをやって歌を聴かせることを心がけました。
KENJI 今回は特にそうだよね。
――歌唱面で力を入れた点は?
YU 「力を入れないように」というところに力を入れました。こういう歌詞のタッチだし、頑張りすぎたらこの曲を表せないと思ったし、その感じの僕らのやりたいアーティスト像、I Don't Like Mondays.はそういう存在でいたいなと。格好つけすぎずに格好ついちゃうみたいなのが理想なので(笑)。そういう余裕感を逆に意識しました。
――その感じこそ“CLEVER”と捉えられたりするのでしょうか。
YU その通りです!
――みなさんが生き方として、どういった感じが“CLEVER”だと思いますか。
YU 歌詞でも表していますが、例えば本音を言ってぶつかるのが素敵だと思うんです。だけどたぶん世間はそんなに一筋縄にはいかなくて、時には非難されたりすることもあると思うんです。どちらを選択するかというと、本当は僕自身はクレバーなんかでいきたくないんです。別にダサくてもそうじゃなくても、自分に正直にいったらいいと思っていて。どちらかというとそれを推奨したいんですけど誰もがそうできるわけじゃないし。僕だってそれをやりたいけどできていない自分もいたりと、人間そんなに強いわけじゃないので。だから本音を言わないことで争いを避けたり傷付かずに済んだりすることもあると思うので、その両方をこの曲に込めました。クレバーというのはそういう意味ではあまり僕はいい意味で使っていないのかもしれないです。今回は。
――CHOJIさんは“CLEVER”をどう解釈されていますか。
CHOJI 世間が求めているものに提示する、音楽だけではなく色んなことがそうだと思うんですけど、それがスムーズにできる人がクレバーという感じがします。
――KENJIさんはクレバーで生きたいと思うところもある?
KENJI そう生きたい部分もありますし、クレバーというワード自体は“賢い”という意味もありますけど、どちらかというと歌詞で書いているような、世の中上手く渡り歩っているみたいな感じだと思うので。ずる賢くしておいた方がいいなという瞬間もたぶんあると思うので、使い分けられたらいいかなと(笑)。
SHUKI 恐らく、過程より結果を大事にするのがクレバーというか。本当に本音を大事にするのはその瞬間に言いたいことを言うことが大事になると思うんですけど、そこを押し通すということは、その先の結果の方を大事にしているという感じだと思うんです。
YU 「クレバーにならなきゃいけない時もあるんじゃない?」みたいなね(笑)。
KENJI 誰しもが思っている部分でもあると思うからね。
――時にはクレバーに、というくらいがちょうどいい感じでしょうか。
YU 僕は本当はクレバーである必要はないと思っています。別に不器用でもいいと思っているし。
SHUKI クレバーにならなきゃいけない場面もあったりするよね。
YU 僕もそれを目指して生きているけど、本音を常に言うようにしたいし。それでも「ここは空気読んだ方がいいな、バカなふりしておこう」とかやっぱり思っちゃう時があるし。そういうことって僕は今まで隠してきたんです。今回のこの曲は、その「本音を言ってませんよ」という本音を言っているというのが二重アイロニーというか。
今までとは違うI Don't Like Mondays.
――コロナ禍で環境も変わったと思われますが、最近注目していることやハマっていることは?
YU 緊急事態宣言が出た時に電子ピアノを買いました。今まで弾きたいなと思っていたんですけど、せっかく時間があるしと思って、ピアノをやり始めたのが自分の中ではこの期間で大きかったなと思います。バンドとかでもそれは活きるなと思いつつ。あと、僕は絵を描くんですけど絵以外にも造形物を作ってみようと粘土でつくってみたり、アニメーションにトライしたりとか。
CHOJI 僕は好きなクラシックの曲のオーケストラの楽譜を弾きながら追うのが好きになりました。クラシックって時間的に長いから弾けなかったりもするんですけど、楽譜があると時間が短く感じるというか。音色も組み合わせによって「こういう音がするのか」という理解を深めたいというのもありました。家にいることが多くなったので、クラシックギターを弾いたりするのもその一つだと思います。自分が勉強したかった部分をもっと知りたいということでやっていました。
――KENJIさんが最近始めたことやルーティン的なことは?
KENJI 犬を飼っているので色んな所を散歩しています。公園に行って「凄い造りなんだな」と改めて感心したり(笑)。体感的に5、6℃は涼しく感じるようにできているし、誰も公園のありがたみなんて気づいていないだろうなと思ったりしました。あと、お酒を飲みに店に行っちゃうと密になるからか「公園でお酒飲んでる人多いな…」って(笑)。公園は素晴らしいですよ。こんなに虫に刺された夏はないんじゃないかというくらいでしたから。
――そういう発見があるのですね(笑)。SHUKIさんは?
SHUKI 漫画『刃牙』シリーズを全部読みました! 作中で侍の時代の展開があるんですけど、その時代は戦いで負けたら死ぬ時代に生きているんだなと改めて思いました。あと今やっているゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』も戦国時代の世界観で、ゲームの中を自由に歩き回れるんですけど、外れに行くとさびれた所の小屋に家族が住んでいたりするんです。そういう時代って本当に何もなくて、畑を耕して侍が来たら挨拶をしてみたいな「何を楽しみに生きているんだろう?」とか凄く考えて。今とは全然違う価値観だなと。それでも幸せだったのかなと思いまして。
YU 確かにね。だからテクノロジーが進化したからといって果たして人間は幸福になっているのかと。何の話ですかこれ(笑)。
――確かに(笑)。それでは今後の展望についてお伺いします。
YU 今回の5カ月連続配信という制作物自体が、今までのI Don't Like Mondays.のもちろん延長上ではあるんですけど、単なる延長ではないようにしようという心がけを持って制作に挑みました。それを体感して頂きたいなというのが一つあります。僕は作詞を担当させて頂いているんですけど、僕の中での一番大きな変化というのは、この期間になってたぶん世界中の誰もが今までより自分を見つめ直して、一度立ち止まって、僕ら自身もそうですが自分と対話する時間が今までのどの時間よりも長くなったのではと思っていまして。
そういう時に届けられる音楽というのは、今までは一緒に楽しむものというのがけっこう強かった僕らのサウンドではありましたが、それだけではなく本当に自分と対話する時の手助けになったり、何か僕の個人的な価値観から生まれるメッセージなど、聴いてくれる人の感性の中に注ぎ込むことができるタイミングなのかなと思って。そういう意味では言葉というのを今まで以上に大事にしてもいい期間なのかなと、僕らはバンドとしてもそれを真ん中に置いて考えてもいいんじゃないかと。
特に僕は、歌詞を書く時に今まではサウンドをいかに引き立てるかということを重視して考え、その後にどうやってメッセージを取り込ませるかと考えていたんですけど、それとは全く違うベクトルで今回からは書き始めました。特に第5弾と言い始めてからのこの曲はそうです。どちらかというと言葉、メッセージが最面に出てくるものを重視して作っていくことを心がけているので、どんどん作っていくほどそのスキルもブラッシュアップされてくると思うので、今までとは違うI Don't Like Mondays.を楽しんでもらいたいなと思っています。
しばらくみなさんの前でライブをするのがなかなか難しくなっていますが、僕らは元気でやっています。この間にさらによい作品を作り続けてどんどん出していきますので、それを聴いて普段のストレスはそれで発散してもらって、ライブができる時までにそのフラストレーションをいい意味で貯めてもらって、会った時に爆発させましょう、ということでそれまでお互い頑張りましょう!
(おわり)