ラストアイドル長月翠「戻りたかった」走り続けたエースの挫折と決意
INTERVIEW

ラストアイドル長月翠「戻りたかった」走り続けたエースの挫折と決意


記者:木村武雄

撮影:

掲載:20年04月21日

読了時間:約3分

<連載(全5回):「愛を知る」それぞれの戦い(4)長月翠>
 ラストアイドルが3作ぶりに原点回帰した。8thシングル『愛を知る』の表題曲歌唱メンバーは、総勢41人が参加した選抜オーディションバトルで決めた。更なる飛躍を目指した「大人サバイバー」や「青春トレイン」では団結力やグループの中での個々の役割、協力し合うことが求められた。それを経ての本作は何を意味するのか。オーディションバトルで上位5位に入ったメンバーに思いを聞いた。第4弾は2位だった長月翠(19)。

 「絶対に阿部菜々実の隣に戻りたかった。ここに立つからにはラストアイドルの代表として引っ張っていかないといけない。今まで以上に頑張りたい」

 選抜オーディションバトルで2位に選ばれたとき、そう決心を伝えた。

 ファーストバトルで唯一の敗者復活を遂げた。以降の活動は順風満帆。不動のセンター・阿部菜々実の横に立つことが多く、2期生による「愛しか武器がない」をのぞきデビュー作から本作までシングル表題曲全てに参加しているのは長月だけだ。そんなエリート街道を走ってきた彼女が挫折を味わう。

 「青春トレイン」では、苦手だったダンスに苦戦して立ち位置を下げた。

 「『あなたはダンスが上手くないです』と突き付けられたことで、急に怖くなって踊れなくなってしまいました」

 それを象徴するシーンがある。「愛を知る」の振り入れで、振付を担当したakane氏が叱責する場面。長月の顔はプレッシャーからかひきつっているように見える。

 「ダンスは嫌いではなかったけど、今は大っ嫌いです。それぐらいに苦手意識を持ってしまって…。これから皆が私のダンスに注目してしまう。それがプレッシャーになってしまう。振り入れの時もカメラに映りたくなから後ろの方にいました」

 ただ「青春トレイン」のインタビューではこんなことを話していた。

 「わりと平均点は取れる方だと思うんです。だけど、それは何でもできるように見せかけていたんじゃないかなって。それが丸裸になってしまったので、これからは自分にも素直になって下手だなと思うところはしっかりと練習していきたいと思いました。弱みを見せられたことで気持ちが楽になりました」

 「嫌い」と言いながらも努力は怠らない。

 「ファンの皆さんには、私が努力していると思われたくないんですよ」

ラストアイドル長月翠

 フロントに立ったものだけが見える世界がある。感動や嬉しさだけではない。時には悔しさや現実の厳しさを目の当たりすることもある。彼女が常々言ってきた「ラストアイドルをもっと大きくしたい」という思いはその体験からきているようにも感じる。

 旗を振り続け、メンバーを鼓舞する。絶対的エースと言われる彼女だが、初期の頃と比べると一歩下がって支える側に回っているようにも感じる。プレッシャーも感じていたことだろう。そうして臨んだ今回の選抜オーディション。

 「オーディション前日に急に不安になってきて、怖すぎて涙が止まらなくなってきてしまいました。行けると思っていたのに緊張し始めちゃって、当日も思うように出来なくて。ファーストバトルの時もこんなに緊張したことなかったし、初めて足がすくむというか、体が動かない経験をして。それだけ自分がこの2年間でラストアイドルに気持ちを入れて来たんだなということに初めて気付いて、色々なことを大事にしようと思いました」

 彼女が目指したのは1位でもなく、3位、4位、5位でもない。2位だ。「このシングルが勝負だと思っています」と意気込む阿部菜々実の隣を想定した目標だ。シングルに懸ける思いがのぞく。

 このシングルは自身の「転機になる」とも語っている。自身がこれまでに転機を迎えたのは「好きで好きでしょうがない」、「大人サバイバー」だといい、「どれも暗い曲なんですよ。自分の心の中のアルバムに明るい曲も入れたいと思っていましたし、『愛を知る』は明るい曲だから、同じ転機でも明るい方向へと行けたらいいです」

 「こう見えてわりとネガティブなんです」とも語っていた長月。それは繊細な心の裏返しでもある。阿部が陽であれば、長月は陰か。奇しくも同じ誕生日。陽と陰が揃って初めてバランスが保たれる。様々な経験を通して強くなった長月、そしてラストアイドルの未来は明るい。

 次回は阿部菜々実さん。

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