池田純矢「今ならできる」10代の構想を形に、生駒里奈の「生命力」に期待
INTERVIEW

池田純矢「今ならできる」10代の構想を形に、生駒里奈の「生命力」に期待


記者:木村武雄

撮影:

掲載:20年03月22日

読了時間:約7分

 池田純矢が脚本・演出を手掛ける舞台『エン*ゲキ』シリーズの第五弾『-4D-imetor(フォーディメーター)』が5月8日から東京・紀伊國屋ホールで、その後大阪で上演される。本作は池田が10代の頃に構想した「量子力学」がテーマのミステリー。四次元世界と超能力をイリュージョンマジックで魅せる。W主演を務めるのは生駒里奈。テレポーテーションのように突如出現する記憶を失った謎の少女・ノアを演じる。脚本・演出とともに私設研究機関の所長・渡来暦をもう一人のW主演として演じる池田に本作への思いと自身の成功の哲学を聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

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生駒里奈に期待する説得力と生命力

――なぜこのテーマにしようと思ったのですか?

 昔にこの本を書いてみたことがあって。もともと、数学的なアプローチから超能力をテーマにした話は好きでした。10代の頃にこれをエンタメで表現したいと思い構想を練って書き出しましたが、一つの物語にまとめることができなくて、諦めてプロットのまま寝かしていました。今回、新しい事を何かやりたいと考えたときにそれを思い出して。当時はイリュージョンを掛け合わせるという発想もなかったけど、今ならビジュアル的にも見せられるんではないかなと思い、再び書いてみたいと思ったのがきっかけです。

――ノア役に生駒里奈さんを起用した理由は?

 生命力に満ち溢れている人がいいなと思っていました。いつもは宛て書きせず、まず自分が書きたい事を書いてそれからキャスティングするという形で、今回もそうでした。でも今回は扱う題材もノアという役柄も難しいなと。玄人過ぎても下手過ぎてもだめ。そのバランスで結構悩みました。そんなときに、生駒さんを思い出して。もともとお仕事を通じての知り合いでしたが、たまたま会う機会があってひらめいて。「生駒さんだったら、説得力や生命力を表現することができる」とお願いしました。

――池田さんは、渡来超能力研究所の所長の渡来暦という役です。

 プロデューサーに言われて何度も断ったんですよ(笑)。「別の主役の方を探してください」と言い続けて、数カ月経ってから再び言われて。もちろん、俳優としては挑戦したい役ではありますし、自分が演じると考えた時に色々なアイデアも出てくるし。でも演出、脚本のことも考えなくてはいけない中で、その重責を担えるのかと。でもマネージャーや信頼する方達に「この役は池田純矢が合うのではないか」と言って下さって。「それなら全力で」と。作品にプラスになれば良いなと最終的には引き受けました。

――このシリーズを積み重ねてきたから引き受けることが出来た?

 それはあると思います。これが、2本目、3本目だったら当然無理だったと思います。シリーズを続けてきたことによって、演出、脚本でも地に足が着いてきたと思いますから、その影響は多少なりともあると思います。

――難しい役柄だと思いますが、どのように役作りをされていきますか。

 まず寝ないという事ですね(笑)。俳優も演出もおこなうので寝る時間くらいしか削るところない(笑)

――寝ないという体力的な部分もそうですが、演出と言う部分で客観視しなくてはいけない。その辺も難しいと思います。

 演出をしながら俳優として舞台に立つ時は、代役を立てて外から見ることを意識しています。今回もそうすると思います。外から見る目も必要ですし、自分自身が中に入って稽古を重ねていくことも必要。自分自身が入る時は毎回稽古場に大容量のビデオカメラを置いて、家で復習するという形になると思います。

-4D-imetor(フォーディメーター)

不安が力になる

――脚本を書くにあたって意識している点はありますか。

 最初は自分が一番面白い事をやりたいと思っていました。観客にも観て頂きたいと思っていますが、自分が一番の観客だと思っているところもあるので、まず自分が観たいものなのか、ということを意識しています。でも前作『絶唱サロメ』から、プラスして観客に対しても「こういう思いを届けたい」「受け取ってほしい」と思うようになり、対自分に向いていた目線が少し広がった気がします。

――自分が面白いと思ったものが、観客に受け入れられるかという不安は?

 もちろんあります。クリエーターの部分では幕が開いても、千秋楽の幕が降りるまで、ずっと不安。面白いと思っているのは僕だけかもしれないと。脚本を書いても、キャスティングが終わっても、演出プランを考えていてもずっと不安なんですよ。でも、この不安が自分にとっては力になっていると思います。ポスター撮影で衣装を着て、思い描いていたものが少しずつ具現化されていって「これで大丈夫だ」と思えるものが増えていく。そうなったときが自分目線から観客目線になったということの現れかもしれないですね。でも観客が「楽しい」「面白い」「これ最高」と思うだけでは足りなくて、それを全方位に届けられるか。それが大きな不安要素かもしれないです。

――普段は音楽を聴きますか。

 実は、音楽を聴こうと意識して聴かないんですよ。僕はすごく影響を受けやすい人間なので…(笑)。沈んでいるときに元気付けられる音楽を聴いたりとか、ハッピーなときにもっとハッピーになる曲を聴いたりとかはしなくて。自分のマインドと合致する音楽を聴くと、その音楽にすごく引っ張られちゃう癖があるので。ただ、街中に流れている音楽やラジオから流れてくる音楽で、知っている曲やその時にマッチした曲が流れてくると少しホッとします。音楽は大好きですが、あえて今これを聴きたいから聴こうという事を禁止している感じです。

池田純矢

成功の哲学

――さて過去に、今回のシリーズは「ご自身で全て背負っているから失敗はできない」という話もされていました。池田さんにとっての成功の哲学は。

 自分の感覚をすごく大切にしています。美しいとか面白いとか、そういう感性や感覚に対することは妥協しないというか、すごく細かく意識しています。キャスティング一つとっても、この人は人気者だから演じて頂くということではなくて、役柄とのマッチ感やバランスを細部に意識していて。もちろんキャスティングだけでなく、本を書く時も、演出をする時も、自分が美しいと思うタイミングでやっています。それを少しでも妥協してしまうとそこから崩れてしまう。美しく思うことを、美しいタイミングで、美しく出すということは心掛けています。見た目だけではなく、全体のバランスとして。

――それがそうであるための理由もしっかり考えているんですね。

 そうですね。わりと神経質です(笑)。

――まず答え、例えば目標とかを立ててからそれにあてはまる式や方法を考えていくタイプですか?

 それに近いかもしれないです。例えば、分からないなかで壁にぶち当たった時に、ゼロ想定なのか、それとも選択肢を用意しておくのかによってその先が変わってくると思います。危ないと思ったところにいくつか選択肢を用意して、そのなかで最も安全なルートを選ぶという感じです。

――危機管理能力に長けていそうですね(笑)。では最後にメッセージを。

 イリュージョンやマジックを演劇と融合させています。でもそれをショーとしてやるのではなく、地続きに必然性をもって物語に組み込まれています。お芝居を観たことないから「ハードルが高いな」と思っている人たちにも、フラットに面白いと受け取ってもらえるものを、たくさん散りばめています。ですので、安心して観にきて頂きたいと思います。アトラクションに乗るようなワクワクドキドキした気持ちを受け取ってもらえると思いますので、難しく考えずに、リラックスして遊びに来ていただけたら、楽しむ時間を提供できると思います。

ヘアメイク/成谷充未
スタイリスト/津野真吾(impiger)
衣装協力/原宿シカゴ

池田純矢

(おわり)

エン*ゲキ#05「- 4D -imetor(フォーディメーター)」

物語

私設研究機関「渡来超能力研究所」の所長・渡来暦は
世間からオカルトマニアの変人と噂されながらも、超能力の解明に明け暮れていた。

ある日、研究所の壁面からまるでテレポーテーションのように
突如出現する記憶を失った謎の少女・ノア。
ルーツを辿る唯一の手がかりは
「ノア、必ず帰ってこい。渡来超能力研究所で待つ」
と書かれた血まみれのメモ。

時を同じくして、首相官邸ではテロ組織が超能力でも無ければ
不可能な手口で総理を人質にとり、立て籠もるという事件が発生。
渡来は、ノアやテロ組織ら超能力者を、三次元の肉体を持ちながら
四次元世界に干渉できるように進化した新人類"4Dimetor"と推論し、事件の真相を追う。

一方、政府の「国立研究所」では何やら不穏な気配が立ち込めていた。

失われた記憶、血まみれのメモ、テロ組織の目的、国立研究所の闇...
あらゆる謎が、パズルのピースを埋めるように次々と解き明かされていく。

「さあ、好奇心の扉をあけよう」

作・演出:池田純矢
出演:生駒里奈 池田純矢
玉城裕規/松島庄汰 田村心 新子景視
藤澤アニキ 北村海 町田尚規 前田りょうが 相田真滉
阿南健治

■東京公演
2020年5月8日(金)~5月18日(月)
会場:紀伊國屋ホール

■大阪公演
2020年5月23日(土)~5月24日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

■公式サイト https://enxgeki.com/

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