大森靖子「何かを超えた感覚があった」デビュー6年目新たな領域へ
INTERVIEW

大森靖子

「何かを超えた感覚があった」デビュー6年目新たな領域へ


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年02月22日

読了時間:約12分

スピードを上げながらもクオリティを維持する

大森靖子

――今回、新録された曲が収録されていますが、この曲たちが選ばれた経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 「音楽を捨てよ、そして音楽へ」と「PINK」の2曲はインディーズのときにリリースした曲なんですけど、当時はほぼデモのような弾き語りの状態でした。目の前で言って伝わる話し方と、電話で伝わる話し方、メールで伝わる言い方は違うじゃないですか。音源にするんだったら、それに合う一番いい状態に変えなければいけないというのが、自分の中にはあって。でも、当時はそれをあまり考えられていなかったんです。

 ライブをやって「いいね」と言われて、それをそのまま入れようとなったんですけど、結果としてライブの方がいいねと言われて「なんでだ〜」って(笑)。その時はそう思っていたんですけど、この5年でライブの方が良いと言われるのもそりゃそうだよねと腑に落ちて。

――音源にもライブと変わらないものを求めていたんですね。

 やっぱり音源はその場にいるわけではないし、伝え方は変えないとダメだよねとわかって。「音楽を捨てよ、そして音楽へ」はいつもバンドでやっていたので、バンドサウンドにして、「PINK」はMONDO GROSSOの大沢(伸一)さんにリミックスしていただきました。大沢さんは、メジャーに来た時からずっと一緒にお仕事をするのが夢だったので。毎回、チラッと「大沢さんと一緒にできないかな?」とスタッフに話していたんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。なので、今回一緒にできて超嬉しいです。

――上がってきた作品を聴いていかがでした?

 私の衝動に寄り添ってくれて、そこに大沢さんの衝動をそのまま入れ込んでいただいた感じで、超カッコいいなと思いました。私が思う大沢さんの好きな部分がたくさん入った「PINK」になりました。

――作った人の手を離れて、人の手に渡ると、その曲の新しい一面を見せてくれますよね。

 そうなんです。人と話しているだけでも、一面の良いところしか出ていなかったりすると思います。例えば同じアイドルを違う人がプロデュースすると全く違う良さが出ますから。そういうのはすごく面白いなと思います。もう1曲「絶対絶望絶好調」は東京スカパラダイスオーケストラさんとライブをご一緒させていただいて、この曲を演奏していただいたのがきっかけです。この曲は打ち込みで音程も激しく上下してめちゃくちゃ音数が多いんですけど、それを全部管楽器で演奏してくださって、本当にすごかったです。

――スカパラさんのスキルの高さを感じられる曲にもなりましたね。ちなみに今回ベストに収録するか迷った曲はありましたか。

 「さっちゃんのセクシーカレー」は最初入れる予定はなかったんです。これは今ホームページで友人や知り合いからコメントを頂いている中で、好きだという声がけっこうあったので入れました。

――いま出ているコメントを拝見させていただきましたが、大森さん愛されてるなと思いました。

 本当に愛されているなと私も思いました。こんなに愛されているのに、私は愛されてない感じの曲を作っているのは最悪だなと思いました(笑)。こんなにたくさんコメントをもらえるなんて思っていなかったんです。

――それに対して返事を出しているのがスゴイなと思いました。

 もらいっぱなしは嫌だなと思ったんです。軽い気持ちで全員にお返事を書きますと言っちゃったんですけど、100件ぐらいコメントを頂いちゃって、嬉しいけど結構これが大変で(笑)。最近はもうそれしかやっていないぐらいの感じで、全部で10万字ぐらいになっちゃって…。

――本気でお返事してますからね。確かに「さっちゃんのセクシーカレー」が好きだと書かれている方いましたね。

 そうなんです。この曲がこんなに愛されているんなんて知らなかったんです。それで、入れなきゃと思って。あと、同じようにメジャーデビュー曲なのに「きゅるきゅる」を入れ忘れてたんですけど、滑り込みました。ちなみにごはん盤に入っている曲は自分でマストだなと思う曲を入れてあります。

――皆さんのコメントを読んでて面白かったです。皆さんとの関係性がよくわかります。

 たぶん、私のことを知らない、好きじゃなかったとしても読んでもらえたら面白いんじゃないかなと思います。音源まで辿り着かなくても良いので、サイトのコメントだけでも読んでもらえたら嬉しいです。

――さて、公開されているアーティスト写真なんですけど、セクシーですね。

 足がキレイに撮れたので(笑)。フェスとかでこの写真が出てきたら良い意味で浮くかなと思って。

――もう1枚は背中を向けた写真ですが、なぜこういうポーズに?

大森靖子

 これは衣装の模様を見せたかったんです。あと、ファンの人達が私の背中が見たいと言ってくれるので(笑)。自分ではなぜみんなが私の背中が見たいのかよくわからないんですけど、リクエストに応えました。要望にはどんどん応えていくスタンスです!

――ファンの方は応えてもらえて嬉しいですよね。さて、6年目に突入したわけですが、ここからどんなことにチャレンジしていきたいですか。

 曲を作るペース、ライブの本数を落とさずに、新しいことをやりたくて。でも、それを落とさずに、増やし続けてここまでやってきたんですけど、もう限界だなって(笑)。それを実行していくためには、スピードを上げるしかないんです。スピードを上げながらもクオリティを維持する、実力を上げたいです。実力を上げれば仕事が増やせる、遊ぶ時間も作れるので良いことだらけなんです。あとは、何かを捨てる勇気を持ちたいです。

――捨てる?

 取捨選択、これはもういいだろうというものを捨てていくことです。最近、自分は意外と優しかったんだなということに気づいたんです。だから、今のような状況になっているんだなって。これまでも言えないことが爆発してダメになるパターンが多くて…。なので、情でやるのではなくて、切り捨てる勇気を持たなきゃダメなんです。でも、こういう自分でありたい、こういうことする自分は自分じゃないから許せない、というプライドの方が大きいかも知れないですけど。

――難しいですよね。最後に読者にメッセージをお願いします。

 アーティストによって音楽の関わり方が全くバラバラになってきていると感じています。人間ではない人を推してたり、1曲のために人間がいたりとか、会える人、会えない人がいたり。私がこうだからというのもなく、面白いものがあったらやってみようという気持ち、自分のフィットする“好き”に出会えたら、仕事の効率も上がるし、ご飯なんか食べなくても良い気分になれると思うんです。なので、みんなも勇気を持って好きまでの距離を自分で縮めに行って欲しいなと思います。

(おわり)

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