大森靖子「何かを超えた感覚があった」デビュー6年目新たな領域へ
INTERVIEW

大森靖子

「何かを超えた感覚があった」デビュー6年目新たな領域へ


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年02月22日

読了時間:約12分

作品作りに対する想い

大森靖子

――さて、ベストアルバムなのですが、44曲収録ということで、余すことなく詰め込んだ感じがしますが、この44という数字には意味があるんですか。

 数字には何も意味はないです。スタッフから3枚組まで行けると話を聞いたので、じゃあ1枚13曲ずつぐらいかなと考えて。でも、選曲していくうちにあれも入ってない、これも入ってないと結果44曲になって(笑)。みんなの思い入れもあるじゃないですか? 大体いつも私の場合、何事も限界ギリギリまで入れる感じになってしまう、常にフルマックスに挑戦したいんです。やっぱり質量感、3500円でこの情報量というのがいいなって。

――かなりお得感ありますから。

 私にとってはCDを出せるというのは、作品を作れる、届ける事が出来る、その中で何が出来るのか、ジャケットを作れるならその中で何か新しいことは出来ないかと考えるんです。例えば複数枚タイプ違いを出せるなら、その中でBlu-rayを単体で出したら6000円ぐらいしちゃうと思うんですけど、CDを付けても同じ価格で出せたり、それはもうお得でしかないんです。

――今回も盛り沢山ですから。

 ごはん盤、おかず盤、デザート盤とあるんですけど、それは私が大森=大盛りということで(笑)。3タイプあってCDはそれぞれ共通なんですけど、中に入っているジャケットが違うんです。例えばごはん盤にはその曲数に応じた14枚のジャケットが入っていて、それぞれ違うんです。

 あと、CDって1枚だいたい60分ぐらいじゃないですか、それを聴いても「足りない、足りない」とか「理解が追いついてないから、もう一回聴こう」とか、この1枚を味わい尽くす時間を延長したい、しないとわからないもの、体験として大きなものを作りたいと思いました。

――確かに大森さんの音楽、ライブは体験という言葉がすごく合います。あと、アナログな感じがすごく強い。

 結局、手垢がついた感じになってしまいます。最初はなんかシュッとしていなくて、それがすごく嫌だったんです。自分の周りではシュッとしているバンドが人気だったこともあって。なんで私だけ、こんなに手垢、足跡を露呈しているんだろう、なんかダサいなと思っていたんですけど(笑)。でも、人に届いたときに温もりみたいなもの、生きている温度を感じてもらえると思います。どういう想いで作っていくかというのが重要なんです。

――大森さんはそもそも物事に対する考え方、アプローチの仕方が違いますからね。

 例えばTikTokが流行っているから、単純にそれに向けて作るのではなくて、こういうところがバズるんだとか、ここが面白いからこうなっているんだ、こういうの作るの楽しそうだからやってみよう、というのは同じTikTokでも違うと思うんです。クリエーターがしっかり意志を持ってやれば、世の中はもっと良くなっていくと思います。なぜそこにみんなが躍動を感じて、人がそれを使っているかを考えないで、「なんかバズってるから手を出してみよう」とやるから、痛い目に合うんです(笑)。

――考え方一つで大きく変わりますよね。5周年というところでお聞きしたいことがあるのですが、メジャーで5年間やってきて、メジャーのイメージは変わりましたか。

 どこにいても誰かと何かを作るということでしかないんだなと思います。ツアーとかしていても「今大阪にいるな」ではなくて、「この人がいるから大阪なんだ」みたいな感覚なんです。なので、レコード会社がどうこうというよりも、この人がいるからというのが大きいです。人は一緒にいると似てくるので、それで会社の色とか出来てくるんじゃないかなと思います。人の夢や希望の集まりでひとつの街が出来たみたいな。なので色んな人と関われるしメジャーは楽しいです。

――場所よりも人というのが大きいんですね。

 そうですね。あと、会いたい人に会えたり、コラボしたり、私が飲み会とかでポロッと話したことを覚えていてくれて、それを叶えてくれたりするので、これは1人では難しいですから。

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