昨年メジャーデビュー5周年を迎えた超歌手の大森靖子が2月12日、ベストアルバム『大森靖子』をリリース。昨年から『超歌手5周年ハンドメイドミラクル5!』と題して、道重さゆみとのフィーチャリングや47都道府県ツアーなど5つの公約を掲げ、このベストアルバムで5周年を締め括る。ベストアルバムは3枚組で全44曲と大ボリューム。そこには大森の「体験として大きなものを作りたい」といった、並々ならぬ作品への想いが込められている。インタビューではツアーを回って感じたことから、作品作りへのこだわりに迫った。【取材=村上順一/撮影=片山拓】
ステージに出ればゾーンに入れるようになった
――昨年5周年を迎えて、最後のアイテムとなるベスト盤がリリースされますが、47都道府県ツアーを回られて掴んだものはありましたか。
2〜30公演あたりで声が出なくなって。ポリープになっちゃったので、しょうがないんですけど、出ないはずなのに、なぜか出たんです!
――ちなみになぜ47都道府県という過酷なツアーを組んだんですか。
やってみないとわからないステージの領域を体感してみたくて。いつかはやらなければいけないと思って、実際にやってみたらその領域は本当にありました。言葉にするのは難しいんですけど、何かを超えた感覚があったんです。
最後まで(ライブに)入り込めないというのは私はあまりなくて、なんとか無理やり入り込むんですけど、今はステージに触れるだけでそのモードに入れると、ステージに出ればゾーンに入れるようになって。そうしたらポリープのはずなのに、自然と声が出て。
――すごいことが起きていたんですね。
最初に声が出なくなった時はパニックになりましたけど。ステージに上がる30分前ぐらいは「今日はもうダメだ」みたいな感じなんですけど、いざ出てみると良いライブだったなと思えるパフォーマンスだったり。結果的に悔いが残るステージはなかったんです。
――今回、バンドで回られてましたけど、ぶつかったり雰囲気が悪くなったりしませんでした? 47都道府県を回ると険悪になる人もいるみたいですけど...。
全然なかったです。そもそもメンバーを選ぶ時に私に優しい人、というのを基準にしているので(笑)。普通のバンドみたいにしたいと思ってやっているけど、音楽というものに対しては私がやりたいことがまずあって、どういうアプローチで届けるか、というのをみんなが考えてくれるので。
――過去にはTHEピンクトカレフというバンドと一緒にやられてましたが、あれはなぜ解散してしまったのでしょうか。
メジャーデビューして、アレンジをしてもらうようになってから単純に演奏する事が難しくなったんです。私は音数が多いアレンジが好きだったので、そういう方にお願いしていました。ただ演奏する、例えば速弾きが出来るということだけでは、それはライブではないんです。それを踏まえた上でライブで表現するにはどうしよう、というのを建設的に出来る人じゃないとダメで。
――メンバーの方にはどのような注文を出しているのでしょうか。
もう、自由です。演奏してみて違ったら「何か違う」と話して。細かくイメージを話すことも出来るんですけど、それはそれぞれが掴まなくてはいけないんです。各々が正解を見つけて、音数の生合成が取れれば解消されるので。それぞれが考えて欲しいので、ざっくりと「違う」ということしか伝えないんです。
――それぞれが考えるというのがポイントですね。
出してきた答えが私の考えていたものと違ったとしても、出てきたものが良ければそれでオッケーなんです。それがバンドの面白いところで。