足立佳奈「一本芯がある自立した女性」成人迎え新たに見えた音楽のかたち
INTERVIEW

足立佳奈「一本芯がある自立した女性」成人迎え新たに見えた音楽のかたち


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年02月11日

読了時間:約12分

レコーディングに10時間かかった「二子玉川」

足立佳奈

――ということは最後に収録されている「二子玉川」はそういった観察から生まれた曲ですか。

 そうなんです。この曲は友達が二子玉川に住んでいて、そこの映画館によく行くんです。この歌詞を書いた時は『イエスタディ』という映画をレイトショーで観ました。その映画を観てからザ・ビートルズの「レットイットビー」が頭から離れなくて(笑)。改札で友達と別れて電車に乗りました。自分が座った目の前にカップルの方が座っていて、女の子が男の子の肩に寄り掛かって寝ていて、男の子はボーッとしながら携帯をいじったりしていて。それを見て「これはいいんじゃないか」と思いました。

――ネタを見つけてしまったわけですね。

 はい(笑)。その場で歌詞を書き始めて、男の子のボーッと見つめている視線の先には何があるんだろうと思って、自分の後ろを確認したら、そこには窓ガラス越しにある二子玉川の住宅地のオレンジ色の明かりだと思いました。

――歌詞にも<窓の向こうに映る オレンジ色の部屋の 光を見つめながらさ>と登場しますね。

 その明かりの中には家族、赤ちゃんやお父さん、お母さんがいて、きっとみんな幸せに暮らしているんだろうなと思ったんです。ということはその明かりを見ている男の子は彼女さんとの将来のことを想像しているんじゃないかと思いました。それが<未来の僕らを描いてた 君はまだ夢の中>という歌詞で、1番の終わりまで電車の中で一気に書き上げました。

――想像が膨らみましたね。メロディは後からつけたんですか。

 私は歌詞と一緒にメロディが浮かんでくるタイプなんです。なので、電車を降りてすぐにそのメロディを携帯に録音しました。家に帰ってから弾き語りしてみて、スタッフさんに送ったんです。

――レコーディングはいかがでした?

 それが、ギターと歌を同時に一回で録りたいというこだわりがあったので、10時間ぐらい掛かってしまって…。ギターと歌を同時に録るのは初めてだったんですけど、家でやっているのとは全然雰囲気が違って、すごく緊張してしまって。スタッフさんは「佳奈ちゃんの作品だから納得が行くまでやって良いよ」と言ってくださって。「これで私決めます」と宣言して、納得がいった最後のテイクが収録されているものなんです。皆さんに聴いてもらって、今までの私とは違うアコースティックの良さを感じてもらえたら嬉しいです。

――良い感じに力が抜けていて、優しい感じが音から出ていますね。

 ありがとうございます。「Good day」の後にこの曲が来ることによって、ギャップが出来たと思います。家で弾いているような素朴な感じに聴こえるように録りました。それは家で録ったデモの感じが気に入っていて、「こういう音にしたい」とスタッフさんにも伝えてマイクや距離感にもこだわりました。

――さて、曲順が前後してしまったのですが、「music」はバンドメンバーと一緒に作ったとお話ししていましたが、アーバンな感じの曲は珍しいですね。

 こういったオシャレな感じの曲をやりたいと思いました。今までの自分にはなかったリズムの曲です。ずっと私の曲をライブで演奏してくれている松本ジュンさんが、私になかった曲をテーマに作って下さいました。

 初めてこの曲を聴いた時に、雨の中、車の後部座席に乗って何気なく音楽を聴いて、その音楽に感情を揺さぶられるものがイメージ出来ました。すぐにそれを絵に描いてみてイメージを掴んで、松本さんに音楽の事を歌った曲にしたいと相談しました。サビはライブで盛り上がれると良いなと思って、<clap your hands>と入れてみんなで楽しめる楽曲にしました。

――歌詞でお気に入りの言葉はありますか。

 中学3年生の卒業式の時に、音楽の先生が壇上で話してくれた言葉を入れました。それは「いつだってあなたたちのそばに音楽はあります」というものでした。その言葉を聞いたときに確かに音楽はそばにいてくれるなと、すごく心に響いて、いつかこの言葉を歌にしたいと5年間温めてました。それをサビの頭で入れさせていただきました。念願だったのですごく嬉しいです。

――ずっと温めていた言葉なんですね。最後にツアー『足立佳奈 Live Tour 2020 " You & I "』が3月から始まります。どんなツアーにしたいですか。

 今回のアルバムのどの曲もライブを意識して制作しました。切ない曲やラブソングももちろん歌いますが、「music」から感じ取れるような楽しいライブにしたいなと思っています。 ツアータイトルが" You & I "ということで、みんな自然と手が挙がってクラップして踊れる、お互いに一体となれるような空間を全国10カ所で作っていきたいと思っているので、いつも何か不安やモヤモヤしたものを感じている方は、ライブで発散してくれたら嬉しいです。

(おわり)

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