足立佳奈「歌を通して探求している」ニューアルバム『Seeker』に込めた想いとは
INTERVIEW

足立佳奈

「歌を通して探求している」ニューアルバム『Seeker』に込めた想いとは


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:23年02月18日

読了時間:約11分

 Twitter・Instagram・TikTok・LINE など SNS のフォロワーが計130万を超え、リリースした楽曲のストリーミング総再生数は1億4500万再生を突破した足立佳奈が2月15日、 約1年3カ月ぶりとなる4枚目のオリジナルアルバム 『Seeker』をリリース。デビュー5周年を迎えるにあたり 2022年4月から毎月連続配信リリースを行っていた足立佳奈。ニューアルバム『Seeker』は、Tani Yuukiとコラボした「ゆらりふたり」や、アレンジャーにShin Sakiuraを迎えた「Me」「WALK」など、オリジナルアルバムにはこれまでの連続リリースを全てコンパイルし、表題曲「Seeker」、「今が一番ここちいい」、「カンパイ」新曲3曲を収録。インタビューでは、アルバムのテーマとなったSeeker=探求者になった経緯から、いま足立佳奈が楽しいと思っていること、未来についてどのように考えているのかなど、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

変わっていくこともすごく良いこと

村上順一

足立佳奈

――連続リリースの集大成となるアルバムがリリースされますが、ズバリどんなアルバムになったと感じていますか。

 タイトル通り「Seeker」だと思います。私は音楽を通して、愛や自由、自分自身を探し求めたり、歌を通して探求しているんだなと思ったことがきっかけで、このタイトルになりました。連続リリースを通して、自分が探求者であることを実感しました。

――自分を追い求めていく中で、どんなことがわかりました?

 変わらないことが一番いいというわけのではなくて、変わっていくこともすごく良いことなんだ、ということに気づきました。変わってしまうことにネガティブに考えていたときがあったのですが、自分の意思としてやりたいと思っているのなら、それでいいんだって。

――特にどんなところが変わらない方がいいと思っていたんですか。

 楽曲のジャンルや方向性は変わらない方がいいのでは、と思っていました。デビューして少し経った頃は、ラブソングをずっと歌い続けた方がいいのかな?と思ったりもしていたんですけど、今は応援ソングも歌いたい、自分の気持ちと葛藤している曲も歌いたいと思いました。

――今回のアルバムを聴くと、音楽性の幅がすごく広がってますよね。ジャケ写も足立さんがお好きな緑色を基調としたものになってますが、どんなコンセプトが?

 ジャケ写と今回封入されるヒストリーブックをどういうコンセプトで撮っていくかというのは、自分の中にイメージがあって、撮っていただくカメラマンさんも私がリクエストさせていただきました。過去に他のプロジェクトで撮っていただいたことがあり、アルバムで撮りたいイメージに合っていたので今回お願いさせていただきました。そして、緑色にもすごくこだわりがあって、プライベートでは緑を追求していて、そんなパーソナルな部分もこのジャケットで表現していくことができたら、もっと私らしく輝けるかなと思って、緑を基調としたジャケットになりました。

――場所はどこで撮影されたのですか。

 千葉県の九十九里にあるスタジオです。スタジオの外でも撮りました。

――ちなみにヒストリーブックはどんな内容に?

 ヒストリーブックと銘打っているので、年表が入っていたり、プライベートのこと、いつも私が作っているご飯のレシピが入っていたり、恋愛観についてのQ&Aなど、盛りだくさんの内容になっています。そして、この5年間の活動の中で訪れたところを日本地図で表現して、そのエピソードも書いたりしています。このヒストリーブックを見ていただけたら、私のこれまでの活動がわかっていただけると思います。ファンのみなさんにも手にしていただきたいのですが、私を新しく知ってくださったみなさんに見ていただけたら、この5年間一緒に過ごしたような感覚になってもらえると思います。

――生産限定盤は1枚1枚、異なるメッセージカードもついているんですよね。

 そうなんです。楽曲の解説から、たわいもないことまで書きました(笑)。あと、スタッフさんがスタンプを1枚1枚押してくれています。チームのみんなで作ったメッセージカードになっているので、楽しみにしていてください。

足立佳奈がいま一番楽しいと感じていること

――さて、1曲目はアルバムタイトルと同じ「Seeker」ですが、ロック調の曲でこれまでの足立さんにはなかったタイプの曲ですね。

 一つの挑戦になった曲で、「Seeker」を作ってくださった中村泰輔さんは、「ココロハレテ」というデビュー曲からお世話になっている方なんです。この5年間を一緒に歩んできてくださった中村さんだからこそ、「Seeker」のような曲調をやりたいですとお願いできたと思います。デモを聴いて、新しい自分と過去の自分もしっかり入っているなと感じて、この曲を歌うことが楽しかったです。

――歌詞は共作となっていますが、どのように仕上げていったのでしょうか。

 ベースとなるものは中村さんが作ってくださったのですが、そこからガラッと変わりました。アルバムタイトルと単曲の「Seeker」は意味合いが違っていて、曲の方では私の憧れの人を“Seeker”と呼ばせてもらっています。あなたみたいになりたいという気持ちを、もがきながら階段を登っていくというテーマで歌詞を書きました。

――憧れの人とは?

 私の友人なんですけど、正にこの歌詞に書いてあるような人なんです。とてもキラキラしていて、誰といても、どんな時も楽しむことを一番にできる人です。

――そんな足立さんがいま一番楽しいと感じていることは?

 楽曲制作も楽しいのですがライブです。自分1人のものだと思っていた音楽が、誰かと一緒に時間を共有して、ステージで歌うことによって、みんなのものになっていっているなと実感できるからです。加えて勇気ももらえるし、自分を肯定してもらえる気がして、すごく笑顔になれる場所になっています。プライベートだったら、緑色のアイテムを身につけているときが楽しいです!

――「Seeker」は歌い方、表現もこれまでとは違ったニュアンスがありますが、これは足立さんの中で生み出したものですか。もしくは、アドバイスやリクエストを受けて出来上がったもの?

 アドバイスも頂きましたが、自分の中でこうやったらそのアドバイスを忠実に表現できるんじゃないか、というのがありました。なので、レコーディングでは何度かブースの外にでて、ニュアンスを確認しながら録っていきました。基本、力強く歌うということなのですが、そのバリエーションが自分の引き出しにはあまりなかったんです。カラオケで歌うときは力強い歌い方をすることはあったのですが、足立佳奈としての表現としてはなかったので、今回それを自分の表現として、楽曲に落とし込むことができてうれしかったです。

――歌詞にある<正義 対 正義の世 答えは無数にあるのよ>というのは、正にその通りだなと思いました。

 合う、合わないというのは常にあることだと思います。そういったことがあったとき、悪意を持って発言したり、行動しているわけではないと感じる瞬間がありました。私は私自身の、その人はその人自身の正義をもって最善を尽くしていていると気づき、この言葉を思いつきました。

――曲順は2曲目から10曲目まではリリースされた順に並んでいますけど、これは最初から決めていたこと?

 はい。アルバムを作るときに、新曲は3曲、残りは連続リリースした曲で構成することになっていました。「Seeker」はリード曲として自信を持って発信していきたい曲だったので、迷いなく1曲目にしたいと思いました。ファンのみなさんは連続リリースを楽しみにしてくれていたと思うので、その思いと私も1曲1曲しっかり振り返っていきたいなと思い、4月にリリースしたものから順番に並べたいなと思いました。

――2022年を振り返るような曲順なんですね。連続リリースの中で、特に新しい自分を見せることができたと感じている曲は?

 新しい自分というところだと2曲あるのですが「Me」です。デモは自分で作っていたのですが、それがShin Sakiuraさんのアレンジで生まれ変わったと感じた曲で、リズムや乗り方も自分にはないものがあったので、これは新しい挑戦だなと思いました。

 もう1曲は「4321」という楽曲で、1コーラス目はこれまでの延長線上にある感じなのですが、2コーラス目の頭でラップに挑戦した曲になっています。ラップはふだんやったことがなかったので、披露するのはちょっと照れ臭かったんですけど、5周年のタイミングでチャレンジしたいと思いました。韻の踏み方とか楽しくて、友達と遊びで韻の踏み合いをしたりしていたので、そのニュアンスもでていると思います。

――連続リリースのラストを飾った「Life Goes On」はどんな気持ちで書いた曲ですか。

 連続リリースの締めくくりとして、応援歌を作りたいと思いました。でも、サビの3行目くらいで作業が止まってしまって。どうしよう...と考えたときに友達が私の家に遊びにきました。そのときに友達がジェンガを見て「これって人生と似てるよね」とぽつりと言ったんです。

――ジェンガですか?

 私もそれを聞いて「えっ、ジェンガと人生?」と思いました。そこから考えていくうちに自分でも、その言葉に納得するところがでてきて、<運命なんだよ 僕は穴の空いた少年>というのはその友人の言葉が着想になりました。穴の空いたちょっと隙だらけの自分だけど、心がぐらついても食いしばって立ち続けているよ、というのが、ジェンガと私の人生も似ているなと思い、曲を書き切ることができました。誰かの背中を押せる1曲になってくれたらいいなと思っています。

誰が聴いても何を伝えたいのか一発で理解できる

村上順一

足立佳奈

――新曲の「今が一番ここちいい」は作詞作曲以外に編曲も携わっていますね。どんな経緯からこの曲は生まれたのでしょうか。

 幸せな瞬間をちゃんと言葉にして残しておけたらいいなと思って作った曲でした。恋愛をされている人が2人の関係性の中で、長くお付き合いしていると、良いところよりも悪いところをたくさん見てしまう瞬間が多くなってくると思います。なので、この曲を聴いてあなたにとって大切な人の良いところをたくさん思い出してほしいという思いを込めて作りました。“今が一番ここちいい”と言い聞かせなければいけない瞬間もあると思いますが、心からそう思える瞬間もあると思います。この曲を聴くタイミングによって、自分の気持ちの変化を楽しんでもらえたらうれしいです。

――ピアノメインでシンプルなアレンジですね。

 音数も多く入れずにシンプルなアレンジなのですが、深みのあるものにしたいと思いました。イヤホンなどで聴いたときに、私が隣で歌っているかのような空間を作りたいと思ったんです。

――確かにすごく距離が近い音像で、言葉もすごく伝わってきました。そんな足立さんが歌詞を構築していく中で一番大切にされていることは?

 誰が聴いても何を伝えたいのか一発で理解できるというところを、私は一番こだわっているかもしれません。そうすれば、どの世代にも届く歌詞になるのかなと思っています。

――アルバムのラストを締めくくるのは「カンパイ」ですが、この楽曲は多幸感にあふれていますね。

 昨年の10月、出身地である岐阜に凱旋ライブをしたとき、地元の友達と食事会をしました。そのときに思ったこと、私の友人たちに対する思いを歌詞にしました。曲は青春を感じられるようなバンドサウンドになったのですが、凱旋ライブのときの出来事を書いた曲なので、バンドメンバーとレコーディングしたのも、この曲のポイントになっています。

――ギター、激アツでしたね。

 歌詞に<いつだって君といれば青春>と歌っているので、アグレッシブにギターを弾いていただきました。

――歌詞の中で特にお気に入りのフレーズは?

 <僕らの未来に今日もカンパイ>とあるのですが、友達とは定期的に集まって食事をしたりするんですけど、未来を思って乾杯をしたら、もっと楽しくなるし、今も楽しくなるなと思いました。自分でも良いフレーズができたなと思っていて、すごく気に入っています。

――未来というところで、足立さんはどのくらい先の未来を見据えて活動されていますか。

 歌手・足立佳奈としては未来について真剣に考えて歌っているのですが、逆にふだんの自分は未来のことはあまり考えないようにしています。今を生きると言いますか、とにかく今を楽しもう、頑張ろうって。それが結果的に未来へとつながると思っています。10代の頃の自分から見て20代は、こうなっているだろうというのはあったと思うのですが、思い描いていたものと違うものになったり、違う姿になっていることが当たり前だなと最近思い始めています。でも、1カ月後の自分はしっかり考えるようにしていて、私のペースで進んでいけたらいいなと思っています。

――地元といえば、2024年度新たに開校する、海津小学校の校歌を書き下ろすことが決まっていますよね。お話を聞いたとき、どのような心境でしたか。

 すごく光栄なことで驚きました。校歌と聞くと私は全校集会などで歌うとき、誰よりも大きな声で歌っていた記憶があります。そんな思い出のある校歌を今度は私が作る側になって、みなさんの心に残る音楽にするというのは挑戦だなと思います。とにかく生徒のみんなに愛してもらえるような楽曲を作りたいと思います。

――校歌を研究されたりも?

 研究というよりは、地元の小学生のみんなに、どんな言葉を校歌に入れてほしいか聞きに行きました。その子たちなりに思うことがあって、小学1年生と6年生では考えていることが全然違うんですよね。みんなの気持ちを聞くことができたので、歌詞でみなさんの思いをつなげられたらなと思っています。

――子どもたちに話を聞いていく中で、どんなことを感じました?

 大人が思うようなこと、1秒1秒を大切にしたいということも話してくれて、小学生だけどもう大人だなと思いました。

――ちなみに足立さんはどんな小学生でした?

 体育と音楽、そして給食の時間が大好きな子どもでした。

――そういえば、足立さん50メートル6秒台で走れるくらい体育会系ですよね。

 野球をやっていたので、早く走れるようになったと思います。当時はタイヤを引っ張る練習とかしていたので、そのおかげで脚力がつきました。

――最後に、3月からツアー『ADACHI KANA LIVE TOUR 2023 -Seeker-』が始まりますが、どんなツアーにしたいと考えていますか。

 まずはアルバム『Seeker』をたくさん聴いてきてほしいなと思っているのですが、アルバムに入っている曲を違うアレンジで1曲1曲を楽しんでもらえる、ライブとCDの変化を感じてもらえるようなライブにしたいです。ぜひ、みなさん遊びに来てください!

(おわり)

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村上順一
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