岐阜県海津市出身のシンガーソングライターの足立佳奈が8月30日、デジタルシングル「Film」をリリースした。2014年に開催された「LINE×SONY MUSICオーディション」で、応募数12万5094人の中からグランプリを獲得してデビューのきっかけを掴んみ、その後、15秒ソング動画「キムチ~笑顔の作り方~」がTwitterで2500万回以上のインプレッションを記録。2017年8月30日にシングル「笑顔の作り方~キムチ~/ココロハレテ」でメジャーデビュー。デビュー4周年当日にリリースされた新曲「Film」は、現在同居している友人をテーマに制作した思い出が詰まった1曲。初めて囁くように歌ったという足立の新たな表現も堪能できる曲に仕上がった。インタビューではシングル曲の制作背景から、最近自身が衝撃を受けた音楽や、興味があることについて話を聞いた。【取材=村上順一】
雰囲気作りが大切
――YouTubeで配信されている「#あだちの絵日記便」も回数重ねて来ましたが、しゃべりながら絵を描くことも慣れてきました?
はい。楽しく普段の私らしくこの絵日記便で過ごせているんじゃないかなと思います。
――絵も東京タワーとかどんどん難しいものに挑戦しているなと感じましたが、足立さんはいかがですか。
絵も難しいんですけど、その中でも面白さを問われる難しさを感じたのは、4コマ漫画でした。落ちやネタがなかなかうまく探せなくて。ちゃんと面白くなっているのかなと、自分でも求めてしまっていて(笑)。
――ストイックですね(笑)。ここからどんな気持ちで配信していきたいと思っていますか。
配信を続けることで絵日記便を毎回楽しみにしてくださる方や「この子誰だろう?」と思ってくださる、私を知ってもらえるひとつのツールになればいいなと思っています。
――さて、本作「Film」は同居されているお友達が出ていかれてしまうことがきっかけで出来た曲なんですか。
はい。まだもうちょっと一緒にいられるんですけど。私はいま大学4年生でほかの友達とも今まで通りに会えなくなってしまう、そんなタイムリミットが近づいてきていると感じていて、最初はそんな友達に向けて書いてみようと思っていました。でも、それぞれの友達と向き合って書いていくと、1曲では収まりきれないなと思って。それだったら一番身近な友達の方がより鮮明にみなさんにイメージしてもらえる歌詞になるんじゃないかと思い、今回は一緒に住んでいる友達をテーマに書いてみようと思いました。
――凄くリアルな感じが反映されているのが伝わってきました。
この楽曲を作るにあたって、プロデュースしてくださったEIGOさん、編曲をしてくださったSHU INUIさん、サトウカツシロ(BREIMEN)さん、みなさんのひとつひとつのアドバイスが色んな人に刺さる楽曲になったんじゃないかなって。
――特にどんなことが勉強になりました?
雰囲気作りです。EIGOさんのチームのみなさんはとにかく明るくて。楽曲を作る時の打ち合わせも、ご飯を食べるときも、みんなポジティブでお仕事なんですけど遊んでいるような気持ちになるくらい楽しくて。友達と過ごしているような感じだったので、楽曲制作はリラックスして進めることができたなと思います。もちろん的確なアドバイスも楽曲に活かされているんですけど、何よりも雰囲気が大事だなと思いました。
――歌詞でキーになったワンフレーズは?
<どこにいたって誰といたって構わない>というサビの部分です。ここの歌詞は、友達ではなく恋人にも置き換えられると思うんですけど、自分のそばにずっといた人だからこそ独占欲がちょっと強くなっていることが表れたところで。私はけっこう独占しがちなところがあって、その面がちょっと出てる言葉で、その子のことが大好きだから何をしていても構わないよという、私らしい歌詞になったんじゃないかなと思います。
――<あの日のカレーはちょっぴり辛くて甘いの>が面白いなと思いました。この歌詞にはどのような思い出があるのでしょうか。
友達とカレーを食べて一日を過ごしていたなかで「ちょっとピリッとするけど不思議に甘いよね?」というやりとりがあったんです。そこから時間が経って今そのことを思い出すと、その辛さというのは寂しさだったり、でも2人で楽しく過ごした時間や、カレーも美味しかったことを甘さに感じて。あのカレーが「辛くて甘い」というのは自分の気持ちとすごく合っているなと思って歌詞にしてみました。
――2人の思い出が鮮明に蘇る一節でもありますね。歌唱面での新たな挑戦はありましたか。
EIGOさんのアドバイスでレコーディングの時に「こんなに声小さくていいんだ」というくらい囁くように歌いました。いつも私はハキハキと歌って言葉を伝えようとしていた感じがあったんです。でも、今回はそんなに力まず自然にリラックスした状態で囁くように歌ったので、そこは新しい挑戦でした。
――イントロには雑踏のようなSEが入っていますね。
渋谷を歩いている時に私がスマホで音を録りました。私たち2人が過ごしている日常が表現できたらいいなと思いました。
――足立さんのフィールドレコーディングだったんですね。ところでジャケット写真はお友達が撮影したものを使用されているみたいですね。
はい。タイトルが「Film」なんですけど、それは彼女がいつもフィルムカメラを持っていて、お互いにフィルムカメラで撮り合うという日常がありました。そこから、彼女に対する曲だったら彼女に撮ってもらう写真が一番自分のなかで納得できるものになるし、より思い入れが深い曲になるかなと思ったんです。この歌詞は彼女がいなかったら出来なかったですし、ジャケットも含めて彼女がいなかったら作れないものにしたいなと思ってお願いしました。
――表情が自然で凄くいい写真ですよね。足立さんもフィルムカメラで撮影するんですね。
ずっとインスタントカメラで撮っていたんですけど、2カ月くらい前に購入しました。そのカメラを持って日々2人で写真を撮っています。少し懐かしさが出て、より深みが出る一枚になるのでフィルムのカメラが好きなんです。
――デジタルと違って現像するまでどんな写真になっているかわからないのも楽しみですよね。
本当に楽しみです。早く写真を見たいなと思いつつも、楽しみはとっておきたいと思って大切に一枚一枚撮っています。フィルムカメラはそのワクワクを買っているのかなと思っているくらいなんです。
――ちなみに撮影は2人だけで行ったのでしょうか。
はい。ジャケット写真に使えたらいいな、という軽い感じで伝えていて、2人でカフェに行ったりバドミントンをしたり、遊びながら撮りました。是非、ジャケット写真にも注目していただけたら嬉しいです。
私を照らしてくれる存在
――カップリングの「すばらしい日」も友達のことを歌わていますが、「Film」との繋がりも?
「Film」に登場する友達は、高校生の頃からの仲で、その子とも仲良しなもう一人高校時代からの友達がいるんですけど、「すばらしい日」はそのもう一人の友達を思って作った曲です。その子は東京にはいないんですけど、久々に東京に彼女が会いに来てくれた時のことを思い出しながら書いた作品になりました。メ~テレ「ドデスカ!」のタイアップのお話を頂いて、どういう曲にしようかと考えた時に、地元の名古屋、岐阜県で放送される情報番組だったので、その友達に向けて書くのが一番いいなと思って。
――歌詞で気に入っている部分は?
<変わらない私の太陽>です。彼女は本当に私にとって太陽みたいな存在で、私がギターを始めたのも、もっと明るい人になりたいなと思えたのも、全部彼女がきっかけなんです。「笑顔の作り方~キムチ~」という曲があるんですけど、彼女と出会っていなかったら出来なかったなって。私にとっていつでもどこにいても太陽で、電話で話をしているだけでも私を照らしてくれる存在なんです。
――「すばらしい日」というタイトルになったのは?
彼女といたらどんな日もすばらしい日になるんです。本当につらい日がないというくらいで。彼女がいれば笑えるし泣けるし、私にとっての“スーパーピープル”なんです(笑)。
――歌詞から感じることの一つに、何年経っても変わらない思いというのがあると思いますが、歳を重ねることに関してはどう考えていますか。
歳をとりたくないという気持ちが前まではありました。でも今は歳を重ねていく中で色んな人と出会いたいですし、色んな人ともう一回再会して昔の話をしたりしたいです。女性だったら歳を重ねて再会すると子供がいたり、新しい命とも出会うことができるのかなと思うと凄く楽しみなんです。
――同窓会とかも楽しみですよね。さて、もう1曲「SUNNY」はどんな気持ちで書いた曲でしょうか。アップテンポな曲でライブでも盛り上がりそうですよね。
コロナ禍になって、当たり前だった毎日が変わってしまったというところから歌詞は始まります。前が見えなくなると言いますか、例えば受験を迎えた子たちは「受験をしても大学生活がうまく始まるのかな」という不安、就職活動をしている同級生の子たちだったら、「就活、このままちゃんと内定もらえるのかな?」とか、不安を抱えていると思うんです。そして、自分の場合はライブができないことに「伝えることや楽しむことが今まで以上にできなくなっていくかもしれない」と考えた時に凄く不安になって。
そんな不安を抱える自分や周りの人を鼓舞するような楽曲を作りたいなと思いました。完成して改めて思うのは今だからこそ書けた曲なのかなと思います。それで未来が晴れていたらいいなと思って「SUNNY」というタイトルにしました。
――足立さんは就職をどう捉えていますか。
一度は就職を経験してみたいと思ったりすることもあるんですけど…占いで「あなたは同じことをしても続きませんよ」というようなことや、就活は向いていない、努力が続かないみたいなことを言われて。そう言われてからちょっと怖くなって、「もし自分が就職したら」ということは考えないようになりました(笑)。
――でも、音楽は続いているのでその占いは外れましたね(笑)。さて、この曲のレコーディングはいかがでした?
最初はこんなにアップテンポな曲になる予定ではなかったんですけど、色々と相談していく中でこの曲はアップテンポの方がいいなとなりました。テンポが上がったのでどこでブレスをしようかというのを悩みました。なので、しっかりブレスのタイミングの打ち合わせをしてからレコーディングに臨みました。
――編曲のrionosさんとは初めて?
初めてです。rionosさんは曲を作る良いタイミングで出会って、rionosさんに編曲をお願いしようとなりました。一緒にお茶をしに行きましたし、リモートでもやりとりをさせて頂きました。歌詞のテーマだったり、私はこういう曲調が好きなど、自分の好みをrionosさんに聞いていただいてできあがったアレンジなんです。
――すごくいいアレンジですよね。ところで、最近衝撃を受けた音楽はありますか。
古舘佑太郎さんのライブを生で観させて頂いたんですけど、その時に熱い思い、言葉が全部私の心に刺さってきて、とても表現者として恰好いいなと思いました。古舘さんの姿を観て、私はシンガーソングライターとしてできることって何だろう、というのをちゃんと考えながら過ごして行きたいなと改めてそのライブを観て思いました。すごく衝撃的でした。
――今興味があること、やってみたいことは?
ギターをもっと弾けるようになれたらいいなと思っています。時々オカモトコウキ(OKAMOTO'S)さんにギターを教えて頂いているんですけど、それは自分がもっと表現者として自信を持ってステージに立ちたいというところからなんです。
あと、挽き肉のキーマカレーを作ることにもハマっています。それは「Film」の歌詞を書いていてカレーを思い出してからずっと食べたくて(笑)。今一緒に住んでいる友達と数日前から昨日も今朝もカレーを2人で食べていました。
――カレーは美味しく出来ました?
けっこう評価は高いです! スパイスを色々混ぜて作るんですけどピリ辛で美味しいです!!
(おわり)
作品情報
「Film」配信はこちら
https://adachikana.lnk.to/Film