メジャーデビュー2周年を迎えた、神戸出身のオルタナティブロックバンド・パノラマパナマタウンが1月19日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『銀河探索TOUR 2019-2020』のファイナル公演をおこなった。昨年11月にリリースしたミニアルバム『GINGAKEI』を携えて、2019年11月15日の愛知・SPADE BOXを皮切りに、全国9公演を行うというもの。岩渕想太(Vo&Gt)のポリープ切除手術のためにこの日のライブを持って、バンドは暫しライブ活動を休止する。休止前ラストライブとなった、熱狂のツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

やり切るライブにしたい

岩渕想太(撮影=上原 俊)

 BGMにはSF映画を彷彿とさせる音楽と、「DIVE TO GALAXY」と書かれたバックドロップが高揚感を煽る。開演時刻になり会場は暗転し、「Dive to Mars」で幕は開けた。極上のグルーヴを叩きつけていく4人。スタートからアクセル全開のパフォーマンスで岩渕は「悔いのないように楽しみ尽くして帰ろうぜ!」と「世界最後になる歌は」へ。エンディングに向かうまでのメリハリと緩急をつけた展開に、加速度を上げていくフロアの盛り上がり。

 そして、「最高の演奏をして帰るぜ」と頼もしい言葉。コール&レスポンスで十分に温めてから「マジカルケミカル」へ突入。浪越康平(Gt)のワイルドで情熱的なギターソロ、シンプルさの中に洗練されたフレーズで身体を弾ませるビートを叩き出す田村夢希(Dr)、ずしっとドライブしたタノ アキヒコ(Ba)のサウンドでLIQUIDROOMを震わせる。

 続いての「ずっとマイペース」はこのツアーを回り、昨年の5月18日、『1st full album "情熱とユーモア" release tour「HUMAN PARTY」』のツアーファイナルで演奏した時よりも、完成度がさらに磨かれ、楽曲が育っていることを感じさせた。そして、「パノラマパナマタウンのテーマ」から、この時期にピッタリのアグレッシブなナンバー「寝正月」。タノは声にもならない低音を叫び、岩渕も感情のまま激しく歌い上げる姿が印象的だった。

浪越康平(撮影=nishinaga "saicho” isao)

 岩渕がギターを手に取り、“パノパナらしさ”あふれる1曲「目立ちたくないMIND」。そして、「バンド組んだ時みたいな気持ちでライブがしたい」と話し届けたのは「SHINKAICHI」。初心に帰らせてくれる1曲で多くのオーディエンスの心を揺さぶりかける。

 岩渕はライブ活動休止前のステージということで「悔いを残したくない。ライブを当分したくない、歌いたくないなと思えるくらいライブをやりきって帰りたい。お互い気持ちの深いところが出し合えるようなライブにしたい」と意気込みを伝え、ポリープが発覚して、「歌えなくなるかもと知ってから、歌えることの楽しさとか気づけているがいっぱいあります。凄くプラスに捉えていて、歌が楽しい、演奏が楽しい状態なので心配しないで楽しんで帰りたい」と今の心情を語った。

 ミニアルバム『GINGAKEI』から、アバンギャルドなフレーズが不思議な感覚を与え、彼らのオリジナリティを痛感させた「Chopstick Bad!!!」、そして、タノのシンセが唸るニューウェーブな1曲「月の裏側」で大暴れしたかと思えば、ミディアムチューン「真夜中の虹」や「パン屋の帰り」と、オーディエンスを煽情させるメリハリのある展開で聴かせた。

強くなって帰ってきます

タノアキヒコ(撮影=nishinaga "saicho” isao)

 岩渕の子どもの頃の情景を綴った「エイリアン」を終え、MCで岩渕は「声が出ない日もあった、色んなことに悩んだ日もあった、自分たちがみせたいものとは何かを考えたツアーでした。どの会場も待ってくれている人がいて、それに救われたツアーでした」。

 「自分の言いたいことも言えないし、ステージに上がっていないと俺は弱い人間だと思いました。自分はこれだと言える人間になりたいとずっと思っているけど、なれない自分が不甲斐ないし、そう思いながら暮らしています。でも、ライブでは何も考えずに発散することが出来るから、自分はやっぱりライブが好きで、バンドが一番だなと思えました。ちょっとの間休むけど、ここが俺の居場所だと思っているので、色んな事に向き合って強くなって帰ってきます」と、オーディエンスを安心させる言葉を告げた。

 <マイク一本握ったら無敵、やっぱここしかねえな♪>と、ラップで今の感情を綴ったインタルード的なトラックを挟み「リバティーリバティー」へ。フロアから掲げられた腕が美しい光景を作り出し、「めちゃめちゃ生きてる」へと突入。畳み掛けるリリックから、メロディアスなサビへの流れに会場の熱量は高まっていく。

 インディーズ時代の2ndミニアルバム『PROPOSE』に収録されている「MOMO」から盛り上がり必至の「フカンショウ」への流れでフロアはオーバーヒート寸前の盛り上がり。岩渕もステージ最前、オーディエンスとコミュニケーションをとりながらパフォーマンス。「ちっぽけな悩み事色々あるけど、ここが俺の居場所」と叫び、本編ラストは「GINGAKEI」。無限に広がる宇宙から無限の未来、可能性を示唆してくれる演奏にボルテージは最高潮まで高まった。

田村夢希(撮影=nishinaga "saicho” isao)

 アンコールに応え、再びステージにメンバーが登場。岩渕は「いつまでもやりたいですね」と、ライブが終わってしまうことへの名残惜しさ言葉にし、パノラマパナマタウンとして初めて作った原点の一曲「ロールプレイング」を投下。初期衝動の塊のようなエネルギッシュな演奏は、今バンドの意義を再認識し始めている彼らの心情を表しているよう。続いて「俺ism」、ラストに「いい趣味してるね」を届けた。無我夢中、ガムシャラなパフォーマンスは多くの人の心に響き渡った。「また連絡するぜ!」と言葉を残し、4人はステージを後にした。

 オーディエンスからの“PPTコール”に岩渕が1人ステージに。「『マジかよ、このバンド』と思ってもらえるくらいカッコいいバンドになって帰ってくるから――」と残ったオーディエンスにメッセージを残し、ツアーの幕は閉じた。

パノラマパナマタウン(撮影=nishinaga "saicho” isao)

 随所にバンドへの矜持が感じられたパフォーマンス。そして、心の底から演奏を、ライブを楽しんでいることが伝わってきた。活動休止という充電期間を経てバンドはどのような姿で帰ってくるのか、期待感を煽った一夜だった。

セットリスト

『銀河探索TOUR 2019-2020』

1月19日@東京・恵比寿LIQUIDROOM

01.Dive to Mars
02.世界最後になる歌は
03.マジカルケミカル
04.ずっとマイペース
05.パノラマパナマタウンのテーマ
06.寝正月
07.目立ちたくないMIND
08.SHINKAICHI
09.Chopstick Bad!!!
10.月の裏側
11.真夜中の虹
12.パン屋の帰り
13.エイリアン
14.リバティーリバティー
15.めちゃめちゃ生きてる
16.MOMO
17.フカンショウ
18.GINGAKEI

ENCORE

EN1.ロールプレイング
EN2.俺ism
EN3.いい趣味してるね

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