宮野真守にとってライブとは、役者から始まった彼だからこそ見出せた世界観
INTERVIEW

宮野真守にとってライブとは、役者から始まった彼だからこそ見出せた世界観


記者:木村武雄

撮影:宮野真守

掲載:19年11月20日

読了時間:約11分

役者からスタートした宮野だからこそできるライブ

 音楽にはグルーヴというのがある。楽譜通りに弾いたとしても多少のズレがうねりとなり心地よいリズムになる。宮野はライブのこだわりとして「全公演同じセットリストで最高のステージングを見せること」と語っていた。決められたセットリストだがイレギュラーなことも当然おこる。それが良い化学反応を起こすことがある。宮野はそれを芝居に例えて説明した。

 「ライブは生ものなので毎回がイレギュラーです。お芝居に例えると、ブロッキング(俳優の正確な動きやポジショニング)やミザンス(舞台上の役者の立ち位置)と言いますが、お芝居には決められた動きや流れがあります。だけど、相手のお芝居によって引き出される感情もあります。ライブのお客さんが相手役だとしたら、お客さんからもらえる感情から感じたものを出したり、お客さんの反応を見て『ここはもっと押し出していこう』『引いてみよう』というのがあります。それは全体の流れを崩すという意味でのイレギュラーではなく、常にライブというものがうねっている。それが会場ごとに違いますし、今回は海外公演もありましたから海外のお客さんへの伝え方も違っていました。毎回がイレギュラーでかけがえのない体験でした」

 宮野らが繰り出す100%以上のパフォーマンスに大歓声を上げる観客。その大歓声に触発されて更に上回るパフォーマンスを見せる宮野ら。決められたセットリストだが感情のうねりがそこにはある。まさに相乗効果が更なる相乗効果を生む。それはライブの醍醐味でもある。

 「ツアーは面白いもので公演を重なるごとに成長していきます。お客さんの反応によってアドリブに近いものが自然と出てくることがあります。それが定番になっていくことがある。例えば『ULTRA FLY』は、声を担当したウルトラマンゼロのセリフをいつの頃からか言うようになった。それはやっぱり高まってきたものがあったり、もともと思い描いていた演出プランに近づけようと引き算していたものでしたが、会場の熱気を感じて『もう一度ここでやってみよう』と思ってやったり。そうしたうねりがツアーにあるので楽しいです」

 『ULTRA FLY』では、ウルトラマンゼロの映像がスクリーンに流れ、それをバックに宮野は跪き「俺はまだ飛べる」と力強く叫んだ。ゼロのセリフだった。宮野がゼロに見えた瞬間でもあった。ゼロのようにキャラクターと一心同体になった姿はこの日何度かあった。そうかと思えばエモーショナルに歌う姿も見せる。芝居と音楽が融合しているかのようだった。それは声優出身の宮野が築いた唯一無二の世界観だった。

 「それはアーティスト活動を始めた時に持った僕のそもそものテーマです。僕は役者が先にあって、歌い手はその後。素敵な出逢いがあって歌でもどう表現できるのかというチャレンジをする機会を頂きました。そのなかで、役者として声優としてやってきた僕がどう表現していくかはすごく考えましたし、うそにはしたくなかった。ただやっているだけではなくて、ちゃんとポリシーを持って音楽に臨みたかった。最近は曲を書かせて頂くこともありますが、シンガーソングライターではない僕が作品を作るときにどう注いでいけばいいか、と考えたときに行き着いたのはパフォーマンスでした。それはライブを作るうえである意味演出家としてどう見せていくかを常に考えています。最初のうちは足りていなかったところもありましたが、それでも真ん中に立ってちゃんと指示を出して打ち出していく。音楽は役者の仕事と違い自分を打ち出していく活動。宮野真守という冠でやっていく。ですので、パフォーマスに自分の血肉を注ぐことをずっと意識してやってきて、その結果、飽きさせないライブ、エンターテイメント性に富んだライブなど、お芝居の展開のように起承転結を設けることをずっとテーマにしてやっています」

宮野真守

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