INTERVIEW

宮野真守

「どれだけ深く追求していけるか」声優としてのこだわりとは:『シャザム!~神々の怒り~』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年03月29日

読了時間:約6分

 声優、俳優、歌手とマルチに活動する宮野真守が、3月17日より公開中の映画『シャザム!~神々の怒り~』に日本版吹替声優として参加。見た目はオトナ、中身はコドモの半人前ヒーローであるシャザム(演・ザッカリー・リーヴァイ)の声を担当する。DCコミックス原作のアクションエンタテインメント『シャザム!』のシリーズ第2弾となる本作では、魔法の杖をめぐり3人の神がシャザムを抹殺しようと地球に降臨。巨大モンスターなど、迫力のアクションシーンはさらに進化し、キャストたちの成長した姿も見どころとなっている。インタビューでは、アフレコ裏話から宮野が追求していることを聞いた。

音の気微を意識していた

村上順一

宮野真守

――1作目と比べると、どのようにパワーアップしてると感じていますか。

 彼らは周りからそれほどヒーローとして称えられてないところがありながらも、彼らなりにヒーローとしてまっすぐ向かっていきます。しかし中身は子供なので、未熟なところがコミカルに描かれていたりして、そこがポイントになっています。本作ではとても強大な敵がやってくるんですけど、その脅威に子供なりに立ち向かっていく。格好いいぶつかり合いというよりも、「どうしよう」みたいに戸惑いながら戦っていく様が魅力になっていると思います。

――吹替、すごく練習されたというコメントを拝見したのですが、どんな練習をされたのでしょうか。

 練習といいますか、僕らのお仕事は事前に台本をいただいて、映像としっかり合わせていくんです。「シャザム」はザッカリーさんのお芝居が非常に面白くて、早口でまくし立てたり、急に驚いたり落ち込んだり、そこを丁寧に確認していきました。彼がやろうとしていたところを、日本語にした時に僕がしっかり伝えられるように。

――アニメなどのアフレコと違うと思うのですが、宮野さんが思う吹替の魅力は?

 僕、声優のデビューは吹替なんです。その時は右も左もわからなかったので、音響監督さんに教えられるがままだったりしました。そこからだんだん自分なりに表現したいこと、自分はこういうことができるとか色々発見していきましたね。今は、自分も実写の作品に出演することが増えてきたからこそわかることもあります。

――気持ちの変化も?

 自分が吹替をやらせていただく時は、しっかりシンクロしたいと思う気持ちも強くなってきています。自分なりにアフレコでこんなことができると、挑んでいた時もありましたが、今はそれだけじゃない不思議な気持ちにどんどんなってきていると言いますか。それが僕としてはすごく楽しくて。この人はなぜこういう表現をしたんだろうとか、この人は体の形から役作りしてるのかなとか。演技の勉強にもなりますし、今の心境だからこそできるアプローチがあるなと思いながら、参加させていただいています。

――吹替と実写のお芝居がいい影響を与え合っていて。

 僕の今の感覚では、良い影響として作用しています。

――ザッカリーさんとお会いして、お話しができたら楽しそうですね。

 きっとザッカリーさんもたくさんこだわっていると思うんです。シャザムのように中身だけ子供、というのはなかなか簡単にできることじゃないと思います。

――もしザッカリーさんに一つだけ質問できるとしたら、どんなことを聞いてみたいですか。

 シャザムになった時の表現で1番大事にしていたことはなんだったのかを聞いてみたいです。シャザムになった時の方が急に大きな声で怒ったり、ビリーの時よりも子供っぽかったりするんです。どうザッカリーさん自身は思って演じていたのか知りたいです。僕は後から声を入れるから、色々俯瞰で見れる部分もあるので、自分なりの解釈を勝手に入れたりします。例えば、子供がスーパーパワーを手に入れて、ヒーローになった時の高揚感が出てしまうのかなとか、勝手に意味合いはつけたりもするんですけど、ザッカリーさんはどういう風にシャザムを感じながら演じていたのか、すごく興味あります。

――アフレコ現場の中で印象的だったことはありましたか。

 ザッカリーさんの表現が面白すぎて、彼が言葉を発していないところの表情や動きなど、マイク前で一緒にトレースしてみたりしました。僕は声だけだからやる必要はないんだけど、やってみると息の詰まり方とか次のセリフに影響してくるんです。毎回彼の表情をトレースしてやってるわけじゃないけども、印象的なところはやってみようと思いました。そうすることで、シンクロするというところに近づける気もします。

表面的なことだけではなく根本を考える

村上順一

宮野真守

――『シャザム!』の見た目が大人で中身が子供というのは、すごい面白い設定だなと思うんですけど、 宮野さんご自身で「自分ってこういうところが子供っぽいかも」と思うことはありますか。

 面白いことを言ってそれが他人にウケたら、何回も言ってしまうところですかね。しつこいぐらい言ってしまうので子供だなと思います(笑)。大人の割合は当然ですが増えてきます。考えることも多くなってきますし、できる幅もどんどん増えてきてます。逆にうまくいかないこともでてくるので、どう対処して自分の糧にしていくか、みたいなこともより考えることが多くなってきました。経験値を積むことが大人になることなので、しっかり大人の階段を登ってこれているのかなと思います。

――大人になることで難しいと感じることは?

 アニメの仕事で今でも子供を演じる時があります。そこで難しいのは、経験値をなくすことです。色々知った上で演じてしまうと大人の考えになってしまいますから。経験値をなくすことは大変ですけど、大人になったが故に、できることとできないことがあって悩んだりするのも面白いなと思っています。

――宮野さんが現在追求していること、もしくは追求していきたいことは?

 根本を深くまで追求することは非常に難しいことなんですけど、 そこを諦めちゃいけないと常に思ってます。役を形成する上では、どれだけ深く追求していけるかということが大事だと感じているんです。表面的なことだけではなく、どうしてその音色になったかを考える。そこは僕のこだわりとして持っているところです。

――その人物の源流を辿る?

 そうです。今作ではビリーの気持ちを大事にしたのですが、その人物が生まれてきてどういう環境で育ってきたのかというのが、人格形成には重要だと思っています。環境で考え方も変わるだろうし、できる時はその歴史も調べてみたりします。ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の時は、1950年代のアメリカはどんな価値観で生活していたんだろうとか。そうすることでポロっと出る一言に自信を持てるようになるんです。ただ怒っている音色で言ってるとか、愛してるという音色で言ってるだけだと、伝わらない気がしますし、自分が納得できないんです。

――本作は普段アメコミ作品を見ない方でも、すごく楽しめると思っているのですが、宮野さんが思うおすすめポイントは?

 とてもハートフルなんです。もちろんコメディであって、大迫力アクションではあるんですけど、 繋がりや絆というものをビリーが1番大事にしているというところが本作では重要だと思います。すれ違いや自分の思いをぶつけてしまったり、うまくいかなかったり。

 僕たちも自分の生活の中で、いろんなコミュニティに属しています。そこで上手くいかないこともたくさんあると思うんですけど、そこに対して、すごく温かくうったえかけてくれるような作品です。自分にとって何が大事かを見つめ直すと言いますか、そういうものも与えてくれるんじゃないかなと思っています。ビリー少年が諦めずにまっすぐ進んでいくからこそ、温かいものが残るんだと思います。

(おわり)

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