パノラマパナマタウン「楽しさを共有したい」未知へ飛び込むバンドの姿勢
INTERVIEW

パノラマパナマタウン「楽しさを共有したい」未知へ飛び込むバンドの姿勢


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年11月20日

読了時間:約12分

「ずっとマイペース」で軸が出来た

浪越康平

――言葉、歌詞というのはどうしたいというのはありましたか。

岩渕想太 今までは言葉を置きにいく、言葉を一つひとつ伝えていくことを考えて作詞していたんですけど、このくらいのテンポ感に言葉を乗せていくのがすごく合うなと気づきもありました。もちろん両方良さはあって、早いテンポに詰め込んでいく、いろんな情報がガーっと入ってきて、結局何だったんだろう? というのも一つの魅力としてあるんですけど、今作は回り道をせずに端的に伝えたいというのがありました。それはワンセンテンスで意味が通じる言葉、どこを切り取っても、曲の意図が伝わるものというところを意識しました。

――どこから聴いてもオッケーで。

岩渕想太 そうなんです。「エイリアン」は打ち込みではなく、バンドサウンドのみで構築している曲なんですけど、それもあってこの曲は、ストーリーテリングした歌詞になっています。1番と2番で時間が流れていくものにしました。

――この「エイリアン」は宇宙人と出会った話しですけど、実際会ったというわけではないですよね(笑)。

岩渕想太 会ってないです(笑)。この歌詞は当たり前の日常がすごく素晴らしいなと思って書きました。渋谷の街もすごく変わっていっているじゃないですか? 色んなものが新しくなっていってる中で、自分も流されていってしまう、スピード感に飲み込まれていると言いますか...。その中でありきたりな日常、普通に朝食を食べて、時間が経って夕日が差し込んで来る、というのが素晴らしいことなんだと思えて。子どもの頃は公園で遊んでいるだけで楽しかったし、その時のマインドを忘れたくなくて。

――歌詞にある<美しく生きる>という言葉がすごく刺ささりました。

岩渕想太 この<美しく生きる>というのはフワッとした言葉だと思うんです。効率よく生きていくことは出来ると思うんですけど、美しく生きる、色んなものを感じながら、触れながら生きていくというのは簡単なようで難しいと思うんです。でも、そうやって生きていきたい、という希望を込めて歌っています。

――3人から見て歌詞の変化はどう感じていますか。

タノ アキヒコ 単純に以前よりも期待感はすごく増しています。例えば、自分が書いた曲にどういった歌詞が乗ってくるんだろうとか、前よりもワクワク感があります。

――特に今作で「おおっ!」と思った曲は?

タノ アキヒコ 「ずっとマイペース」です。これは絶対自分では思いつかない歌詞だなと思いました。岩渕は仮歌から歌詞が変わることがけっこう多いんですけど、<ずっとマイペース>と<野菜>のワードはずっと変わらず残っていて、それは印象的でした。

岩渕想太 結果的に直感で出てきた言葉は残りました。「GINGAKEI」という言葉もそうなんですけど、直感を大事にしたいなと思ったんです。でも、直感で出てきたからなのか、その言葉に迷いはあって...。本当に野菜でいいのかなって(笑)。なので<やめて>とか他の言葉に変えてみたりもしたんですけど、メンバーからはやっぱり<野菜>でしょって。

タノ アキヒコ どんな言葉もファーストインパクトには勝てなかったんです。僕も曲を作るにあたって直感で作っていたところがありました。

――ということは特別ひねり出した、苦労したという曲はない?

タノ アキヒコ 今回あまり苦労した曲というのはないです。敢えて上げるなら「GINGAKEI」かな。最初はここまでダンスミュージックっぽくはなかったんです。でも、前からこんな曲を作ってみたいと思っていて、岩渕がこの“GINGAKEI”という言葉を持ってきてくれたので、サウンドもこういうイメージかなと思って作りました。楽曲個々というよりも、パノラマパナマタウンというものに自分の軸を合わせる作業が大変でした。「ずっとマイペース」で自分が作るパノラマパナマタウンの曲、というのを明確な軸が出来たなと思っています。

――岩渕さん宇宙への興味はけっこうありそうですよね? 前作『情熱とユーモア』でも「月の裏側」とか宇宙に関連する曲もあるので。

岩渕想太 SFは好きです。自分は何かと例え話に宇宙が出てくることが多いなと最近気づきました。無限の可能性を表す時や自分や人の中を表すのに宇宙を使っていたし、宇宙には知らないことやわからないことがたくさんあるので、それを表現するのにピッタリなんです。

――だからこそ魅力的だったり。さて、夢希さんは今作で印象的な曲は?

田村夢希

田村夢希 出来た時のインパクトでいうと、「HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~」です。シンプルに歌いやすい曲だなと思ったんです。今までの曲は岩渕にしか歌えないなと思っていて、でも、この曲が出来た時、「歌える!」と思いました。

岩渕想太 今回、歌いやすいメロディというのも考えたところではありました。今までは自分の限界のキー、ギリギリまで使っていたこともあったんですけど、もっと気を張らずに歌えるものが今の自分には合っているなと思ったので、低く落ち着けるところを意識しました。あと、何周もしてわかる言葉も好きなんですけど、一発で理解出来る言葉というのも心掛けていたので、そこに繋がっているのかもしれないです。

――浪越さんの印象的な曲は?

浪越康平 僕も「HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~」です。僕らの曲って岩渕か僕が考えてきたギターリフが中心にあって、僕がギターリストだからというのもあるんですけど、それがこのバンドのカッコいいところだと思っています。それがない曲、ギターがそんなに全面で鳴っていない「ずっとマイペース」が最初に出来て、ここからそういう曲をどんどん作って行こうとなった時に、自分の中でちょっと違う感じがしていて...。でもその中でどうやって自分がカッコいいと思う曲にしたらいいんだろうと考えて、出来たのが「HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~」なんです。

――浪越さんの中で良い塩梅の楽曲にしあがったんですね。あと、ギターカッティングは以前から切れ味は鋭かったですが、さらにワンランク上がった気がしました。

浪越康平 ありがとうございます。新曲を合わせているうちにリズムに対する理解が深まってきたところはあります。それはもしかしたら、リズムメインの曲になってきているから、自然とそういう感覚になってきているのかも知れないです。あとは、リズムメインというところでファンクやソウル、R&Bもよく聴くようになったのも大きいですし、「世界最後になる歌は」をライブでずっと弾き続けて来た効果が出てきているのかもしれないです(笑)。それらをコピーしてパソコンに録っては、ギターの練習をしたりもしていたんです。

――水面下で色々やっていたんですね。全体的にグルーヴが気持ち良かったです。

浪越康平 欲を言えばもっとグルーヴを出せたらとは思っています。ライブでは夢希の生のグルーヴに変わるので、音源とはまた違った新しいグルーヴを作り出したいんです。それもあってリハでもすごく細かいところまでリズムを詰めています。

――夢希さんから見て、過去曲でもグルーヴはすごく変わってきているなと感じてますか。

田村夢希 それはすごく感じています。特にギターの変化は僕も感じています。それによってやれることもすごく広がったなと。ライブがすごく楽しみなんです。

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