4人組バンドのflumpoolが10月3日と4日、東京・NHKホールで『flumpool 9th tour「Command Shift Z」』の追加公演をおこなった。2017年12月に山村隆太(Vo)の歌唱時機能性発声障害のため、無期限の活動休止を発表した彼らの完全復活を告げる全国ツアーで、5月4日の広島上野学園ホールを皮切りに9月28日の神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールまで22公演をおこなうというもので、新たに東京2公演を追加した計24公演。「HELP」や「どんな未来にも愛はある」などアンコール含め全19曲を披露した、NHKホール初日となった3日の公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

今のflumpoolが一番楽しい

山村隆太(撮影=ヤオタケシ)

 5月におこなわれたツアー5公演目の東京国際フォーラムのライブから約4カ月、全国をロードし再び東京に戻ってきた4人が、どのようなステージを見せてくれるのか、期待感は開演時刻が近づくに連れ、単独公演としてはflumpool初のNHKホールでのライブということもあり、どんどん高まっていく。

 開演時刻になるとステージに掛けられた紗幕に映像が投影され、ツアータイトル「Command Shift Z」の文字が高揚感を煽る。オープニングを飾ったのは「FREE YOUR MIND」だ。紗幕が落ち4人が現れると「会いたかったぜ渋谷!」と山村隆太(Vo.Gt)。

 山村は「ただいま、会いたかったぜ」など、言葉をオーディエンスに投げかける。その元気な張りのある声を聞いていると、もう声は大丈夫と言っているかのようにも聞こえた。ツアーを22本まわり、疲労すらも感じさせない山村のエナジーみなぎる歌声に、感情を揺さぶられる。バンドの放つ熱いサウンドに、オーディエンスもクラップや声で応えていく。

 バイオリンの軽快なフレーズが鳴り響き、デビュー曲「花になれ」を歌唱。「みんな待っていてくれてありがとう!」と感謝の言葉。この言葉からこのステージで歌えているのは当たり前ではない、ということを感じさせてくれた。これまで何度も歌ってきた「花になれ」。聴くたびに違う感情を与えてくれる。山村の歌声は大地にしっかりと根付く花のような力強さを感じさせた。

阪井一生(撮影=ヤオタケシ)

 この日初めてのMCで山村は、「みんなと出会えて11年、この11年を誇りに思っています。今のflumpoolが一番楽しい、4人で音を鳴らすのが一番嬉しい」と、偽りのない想いを語る。

 会場のある渋谷という街にピッタリなシティポップサウンドの「DILEMMA」、ビートの効いた「Sprechchor」、アコースティックギターのサウンドが印象的な「産声」、ミディアムバラードの「空の旅路」と、彼らの幅広い音楽性、バラエティの豊かさを感じさせる流れ。この振り幅もflumpoolの大きな魅力であり、武器の一つ。確かな音楽力、演奏力があることの証明となっていた。
 
 2回目のMCでは阪井一生(Gt)がNHKホールということで、9年前の『第61回NHK紅白歌合戦』出演時の「尼川事件」エピソードや、小倉誠司(Dr)がツアーが終わってしまうことで、趣味の“全国猫カフェ巡り”もしばらくお預けになってしまう寂しさを語るなど、会場を和ませた。

 山村は「Command Shift Z」に込められたメッセージを丁寧に説明。「届けられなかった想いを届けていきたい――」と語り、強さを感じさせてくれた「HOPE」へ。一度折れた骨は、回復すると前よりも強くなる、そんなことを感じさせてくれたパフォーマンス。ライブができること、サポートメンバーも含めた6人で演奏し続けていけることの喜びが、ステージから溢れているようだった。オーディエンスも壮大なサウンドにその場に立ち尽くし、音を浴びるように聴き入っていた。

自分の弱さを伝えられることが、自分の強さ

尼川元気(撮影=ヤオタケシ)

 「HELP」の前に届けられたMCで山村は「声が出なくなって良かったと今は思います。僕は昔から強がりなところがあって、声が出ないライブもメンバーが心配してくれたときも、『大丈夫、1人で何とかするから…』と、まわりを寄せ付けなかった。2年前、本当にどうしようもないくらい、声が出なくなってしまった時に、初めて『助けて』と声にしたんです。そのおかげで沢山の人が心配してくれたり、メンバーもまた明日に+1にしていけば良いと寄り添ってくれて、どうにかここまで来れました」。

 さらに続けて山村は「今思うのは自分の弱さを伝えられることが、自分の強さだと思います。『助けて』という言葉は世界の誰かに必ず届くと思っています」という言葉から5月22日にリリースされた「HELP」を届けた。人としてさらなる飛躍を感じさせた。弱さを認めたことで、もっと強くなれる。経験したからこそわかることもある。それが歌の表現力を超えた、説得力を生みだしていた。

 「ここから一緒に行こうぜ!」と「reboot ~あきらめない詩~」でライブは後半戦へ突入。そして、湧き上がる想いや高ぶる感情を、声や掲げる拳に込めた「Blue Apple & Red Banana」で山村は「そんなもんか渋谷!」とオーディエンスを煽る。

小倉誠司(撮影=ヤオタケシ)

 「生まれ変わるのはいつだ? 今日だろ! 今日の一番が誰かを証明しようぜ!!」と「World beats」を投下。会場がビートに合わせくるくると回転するタオルで埋め尽くされる圧巻の光景から「星に願いを」でボルテージは最高潮。今のflumpoolが演奏することで、当時とはまた違った景色、感覚を与えてくれる。彼らと一緒に成長してきたことを感じさせた。

「音楽をやっていて良かったと何度も思った。この11年でみつけた宝物はみんなの存在です。自分を更新したいと思ってこのツアーを回っていたんですけど、僕たちの歌や演奏で笑ってくれる人がいたらそれでいい――」と本編ラストは「どんな未来にも愛はある」を歌唱。flumpoolの未来を垣間見せてくれるかのような、凛としたパフォーマンスでステージを後にした。

 アンコールでは、会えなかった時間を曲に込めた「つながり」を届けた。尼川元気(Ba)はシンセサイザーも演奏し、阪井もエレキとスタンドにセットしたアコギを巧みに使い分け、楽曲に彩りを加えていく。ラストは「Touch」。この光景が当たり前ではない日々を感じながら、会場とステージがひとつになっていくのを感じさせた。flumpoolの惹き寄せる力、魅力が凝縮されたパフォーマンスに、オーディエンスの掲げた手のひらが、花のように咲き乱れるなか、ライブの幕は閉じた。

 このライブを観て感じたことは、flumpool4人の人間力だった。4人が奏でる音楽に、絶対的な信頼を寄せているファンの姿。誰も諦めなかったという事実がこのツアーの結果だった思う。待っていてくれる人がいるから頑張れる、頑張っている人がいるから応援したいと、人×人のシナジーが生みだしたステージ。確実に未来への一歩を踏み出し、flumpool・新章の幕開けを感じさせた。

セットリスト

『flumpool 9th tour「Command Shift Z」』
10月3日@東京・NHKホール

01.FREE YOUR MIND
02.しおり
03.花になれ
04.DILEMMA
05.Sprechchor
06.産声
07.空の旅路
08.解放区
09.HOPE
10.MW 〜Dear Mr.&Ms.ピカレスク〜
11.Over the rain 〜ひかりの橋〜
12.HELP
13. reboot ~あきらめない詩~
14.Blue Apple & Red Banana
15.World beats
16.星に願いを
17.どんな未来にも愛はある

ENCORE

EN1.つながり
EN2.Touch

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