flumpool「過去の自分たちと戦っていく」挑戦の先に見据えたビジョン
INTERVIEW

flumpool

「過去の自分たちと戦っていく」挑戦の先に見据えたビジョン


記者:村上順一

撮影:冨田味我

掲載:21年05月28日

読了時間:約11分

 4人組バンドのflumpoolが26日、ニューシングル「ディスタンス」をリリース。「自らのイメージを壊す」と話す表題曲「ディスタンス」は、バンドサウンドではなく全て打ち込みで作られたという、彼らの挑戦が詰まった1曲。カップリングにはテレビアニメ『セブンナイツ レボリューション-英雄の継承者-』のオープニング主題歌としてO.A中の「フリーズ」と、山村隆太がDJを務めるラジオ番組FM802「Radio Fields」のリスナーとともに作り上げた「大丈夫」とflumpoolの異なる一面を見せた3曲が収録。インタビューでは、「ディスタンス」の制作背景に迫るとともに、現在行われている全国ツアー『flumpool 10th Tour「Real」』で感じたこと、バンドのスタンスなど4人に話しを聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

flumpoolだと思われたくなかった

――山村さんは朝の情報番組『めざまし8』にコメンテーターとしてレギュラー出演されていますが、やってみていかがですか。

山村隆太  ミュージシャンとして世の中に対して思っていることを届けられたらいいなと思いやらせていただきました。最初にそのお話をいただいた時は意外だったんですけど、以前から縁のある信頼しているプロデューサーさんからのお誘いだったのでこれは是非やりたいなと思いました。 自分はそういった立場ではないんですけど、その姿勢だけでも見てもらえたらなと思いました。

山村隆太

――阪井さんは初回放送の時にSNSで反応されていましたよね。

阪井一生 たまたま朝6時から仕事だったんですよ。これはいじってあげた方がいいかなと思いまして(笑)。

――愛ですね(笑)。さて、今回シングルがリリースされますが、完成してみてどんな一枚に仕上がったと思いますか。

小倉誠司 曲の個性がそれぞれある1枚になったなと思っています。「ディスタンス」は強い特徴を持っていますし、「フリーズ」だったらflumpoolらしさがあふれていて、「大丈夫」は安心を感じられるような楽曲になったと思っています。 良い意味でまとまっていなくて、でもちゃんとバランスが取れているシングルになったんじゃないかなと思います。

山村隆太 このコロナ禍で感じたことがこの3曲に詰まっています。100年に一度の疫病だと思うんですけど、その中から変化していくことへの不安を取りさるような安心感だったり、古い体制から新しい体制に行かなければいけないという変化への願望、そういったメッセージが入っている曲もあったり。その中で一貫していることは、人と人との関係性に対してのメッセージがギュッと詰まった1枚になったなと思います。

――その変化の仕方はすごく大胆ですよね。最初聞いたときflumpoolだと思わなかったんです。

尼川元気 僕も思いました(笑)。この「ディスタンス」は僕らにとって凄い攻めの1曲になっていて、それもあって最初はこの曲を否定してしまったんです。この攻めの感じにちょっと臆してしまうところもあって...。でも、その後にテレビでの歌収録があってこの曲を演奏したんですけど、「あれこれちょっといけるかも」っと思い直しました(笑)。

尼川元気

――「ディスタンス」はBTSや久保田利伸さんなどに楽曲提供されているUTAさんとの共作ですね。

阪井一生 僕の中で既に楽曲のイメージはあったので、UTAさんとコライトしたら面白いものが出来上がるんじゃないかなと思いお願いしました。その攻めたという部分のお話をすると、flumpoolだと思われたくなかったんです。自分たちで自らのイメージを壊すと言いますか、今までに無い新しいチャレンジをしたい、一番バンドからかけ離れているサウンドにしたいと思いました。最初カップリングの「フリーズ」がシングル表題曲候補で、「フリーズ」はすごくflumpoolらしさがある曲になっていると思うんです。でもこの曲を表題曲としてリリースするのはちょっと違うんじゃないかなと思って、今このタイミングは攻めたい、変化を見せたいと思ってしまったんです。ギターとか入っているんですけど、実はギターも弾いていないんです。

――軽快なギターカッティングは?

阪井一生 あれは、サンプル音源のカッティングなんです。トラックはほとんど宅録で完結していて、生でレコーディングしたのはボーカルだけなんです。

阪井一生

――バンドとしてこのサウンドを聴いてどう思いました?

小倉誠司 シンプルにいい曲だなと思いました。昔の僕だったら凝り固まった考え方があったので「打ち込みは嫌だ」とか言ったかもしれないんですけど、時を経て打ち込みには打ち込みの良さがあるなと思えるようになってきました。自分もそういう曲を聴く機会が近年すごく増えてきたので、否定的な意見は全くなかったです。その中で考えたことはライブではどう表現しようかなと。シンセドラムのような打ち込みの機材でやることもできますし、色々考え中なんですけど。

小倉誠司

尼川元気 僕もライブはどうしようか考えていて、シンセベースを弾くのもアリかもと思っています。

――ちょっと気になっていることがあるんですけど、みなさんが踊ったりする可能性も?

阪井一生 そういう曲調ではあるので、ダンスもいけますけどね。

山村隆太 踊らないですよ。やるなら1年間ぐらいレッスンしなきゃダメですから(笑)。

――(笑)。このサウンドの中で山村さんはどのように表現しようと思いましたか。

山村隆太 バンドサウンドとは違う無機質な感じがこの曲にはあるんですけど、これまでの自分の声に聞こえないような感じを意識した部分もあります。近くで歌っているような、囁くようなイメージで歌いました。近くの人に問いかけるという、いま難しいことを歌で表現したいなと思ったんです。それもあって今までで一番レコーディングに時間が掛かったんじゃないかなと思います。人と繋がりたい、温もりを感じたいという歌詞が、こういった無機質なサウンドに乗っているというのも、今の世の中とリンクするところがあると思うんです。温もりが感じづらい中で愛を叫んでいる、それでも繋がりを求めている、というのが今っぽいなと思いました。ライブではまた違った感じになると思うので、それも楽しみにしていて下さい。

――ライブバージョン楽しみですね。

尼川元気 隆太が1人で歌う可能性もありますから。

山村隆太 カラオケで歌うの(笑)。それはない!

――それは相当意表をつかれますね(笑)。その中で歌詞はどんなところにこだわって書かれたのでしょうか。

山村隆太 このコロナ禍でディスタンスという言葉はよく聞かれるようになったと思うんですけど、その中で特に皆さん人と人との距離をすごく考えた1年だったと思います。その距離は物理的なものもありますけど、そうではない心の距離というのもあると思うんです。その心の距離は会えなくても近づいた人はいたと思いますし、逆に会ったけれど遠ざかってしまったという人もいたと思うんです。心の距離というものに関して、すごく得たものはあったと思っています。

 今回アップテンポの曲にこういった歌詞を乗せたのは、僕らがいまツアー中ということも関係しています。声が出せない中で感動を届けなければいけない、そういうライブを経てきたというのがひとつありました。そこで得たものはコロナ禍をネガティブに捉えずにポジティブに捉えることが出来たというのも、「ライブはやっぱり素晴らしい」ということに僕らも改めて気づいたからで、ファンの方との心の距離はすごく近づいたと思っていますし、今はライブに来れない人とも心の距離が近づけていると感じているので、またいつも通りにライブができる日を楽しみにしながら、お互いもう少し乗り越えていこう、というメッセージを込めました。

ミュージシャンはいまこそ音楽を届けるべき

――ツアーができているというのもすごく大きかったんですね。

山村隆太 いろんなバンドがライブを延期や中止をしている中で、ツアーができているというのもすごいことだと思えていますし、逆にミュージシャンはいまこそライブで音楽を届けるべきだ、という判断を僕らはさせていただきました。でもやっぱり声を出せないというのは寂しい、一緒に歌うというのもライブの醍醐味だと思うので。声が出せないならどうすればいいかと考えて、とある楽曲では今回ペンライトアプリというものを使うことにしました。それは振れば振るほど明るくなるペンライトなんです。後は椅子に座ってゆっくり音楽を聴けるセクションを作ったり、声を出していたところを振り付けに変えたりしたりと、これまであった僕らの定番を崩したり色々工夫をしています。

――阪井さんはこのツアーで変化していったことはありますか。

阪井一生 MCでのメンタルはすごく鍛えられました。本当にMCが難しくてめちゃくちゃ滑るんですよ...。

尼川元気 これがまた本当に面白くないんですよ(笑)。

阪井一生 メンバーがフォローしてくれてるのがすごい伝わってくるんです。それもめちゃくちゃ切ないんですけど、もう滑っても大丈夫なくらい精神が強くなっているので、ここからは平気だと思いますけど。

尼川元気 ちょっとラジオで1人しゃべりしてる時のような雰囲気に似ていると思います。メンバーでどうやって助け合っていくか見たいな。

――尼川さんはいかがですか。

尼川元気 やっぱり今までのライブと比べてしまうと、声が出せないというだけでも、正直だいぶ物足りなさを感じてしまいます。自分がライブの好きなところは、自分のテンションが上がるところだというのを再確認できたところもあるんです。ツアーが始まる前までは熱狂を求めていたんですけど、実際始まってみてキャパ半分、声を出せないという現状は思っていた以上で...。でも、その雰囲気にもだいぶ慣れてきましたし、音楽を聴かせる方へ気持ちを持っていけています。逆にこの状態に慣れてしまうと普通のライブに戻れた時、自分はどうなってしまうのかな、という不安もあって(笑)。

――小倉さんはツアーをここまで回ってみてどのように感じていますか。

小倉誠司 このコロナ禍のなかでツアーを回ってみて個人的に良かったなと思うところもありました。声を出せないというのは皆さんにとってはすごく辛いことだと思うんです。でも逆に声がないというのもいいなと思うところがあって。それはオープニングでメンバーがステージに登場する時は、通常のライブだったら歓声が上がるじゃないですか。僕らも歓声を受けて気分が高揚してテンションも上がるんですけど、同時に変な緊張感も生まれていたと感じました。歓声がないことで、逆に冷静になれるところもあったんです。あと今回ツアーをやっていく中でセットリストも変化していったんですけど、馴染むまでに時間がかかって大変なところもありましたが、ライブが出来るだけで純粋にすごく楽しいなと思えています。

敵は過去の自分たち

flumpool

――さて、「フリーズ」は『セブンナイツ レボリューション-英雄の継承者-』OP主題歌ですが、どのようなリクエストがあったのでしょうか。

阪井一生 アニメサイドとの打ち合わせで、ストリングスを入れて欲しいというワードも出ていて、その中でflumpoolらしいサウンドを求められている気がしたので、自分たちの武器を全面に押し出した1曲になりました。なので、自分たちらしいサウンドを最大限に発揮できるといえば百田(留衣)さんかなと思い、アレンジをお願いさせていただきました。

――歌詞はどのような想いを込めて書かれたのでしょうか。

山村隆太 アニメは主人公の成長物語なんですけど、自分自身が考えていることと作品の主人公と重ね合わせて、盛り上がるような曲にしたいなと思いました。大切な人を守るために変化していく、自分自身を変えていくことテーマとしてあるんです。その中で社会の中で自然と変わっていってしまうことと、自分が能動的に変わっていくというのは違うものだと思っています。今回描いたのは後者で自分が目を閉じた時に浮かべている理想や大切な人との関係というのは、自分の手で変えていかなければ行けない、その姿を見失っては行けないなと感じて歌詞を書きました。

――レコーディングでこだわったところは?

小倉誠司 こだわりというわけではないんですけど、感情を入れないで叩いています。それは、完成したものに対して変な感情を入れてしまうとダメだと思っていて。flumpoolらしさというのは一生と隆太の2人である程度完成させてくれているので、深く考えずに叩くのがらしさにも繋がると思うんです。そこに変な気持ちを入れてしまうと変な重さが出てしまうかなと。ライブではまた違うんですけど、レコーディングはそういう気持ちで演奏しています。

――尼川さんは?

尼川元気 もう、楽曲が馴染みのある感じだったので、迷いはなかったです。なので、すごくレコーディングもスムーズでした。今のツアーで演奏していてもすごくしっくり来てます。

――最後にバンドとしての理想像といいますか、どんな展望がありますか。

山村隆太 いい意味で展望はないんです。それは僕たちの骨格というものが出来ていると感じているからで。自分たちの色を定着させるまでに12年掛かっていて、山で例えると中腹ぐらいまで来て、さらにここから上に登るのはより険しい道になってくると思うんです。でも、それがどんな道なのかはわからないですし、それを楽しみにしている自分もいて。

――その中で変化を望んでいる部分も?

山村隆太 それはあります。敵は過去の自分たちと言いますか、そういう立ち位置まで来たんじゃないかなと思っていて。デビューしたバンドが大きな会場でライブをやる事を目指して進んでいくというのは、ある程度達成出来てきたと思いますし、ここから先は過去の自分たちと戦っていく、というのも大きな意味があるのかなと思っています。

(おわり)

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